第27話 一念発起
それからマコは大会で優勝を重ね、その実力が世に知れ渡るようになった。
『美少女すぎる新星の女拳士』
それがマコの新聞の紹介見出しだった。
昔のオレだったらそれを鼻で笑ってからかったろう。
だが今は違う。
完全にマコにやられた。
女としてのマコに。
誰も知らないだろう。
彼氏だって知らないんじゃないか?
あの胸の感触。そして小さいながらも丸いあの形の良い胸。
なにもそれだけじゃねぇ。
それだけじゃオレがただのスケベなだけだからな。
長年付き合って来た絆。
そしてもう女にしか見えねぇ顔。
どれをとっても好きになっちまった。
だが今のオレはクソだ。
ただ先輩が引退したからと言ってもらったサッカー部レギュラーのユニフォーム。
こんなんじゃ、マコと釣り合いが取れるわけがねぇ。
オレだって男だ。
最近はサボり気味だが空手は一応の黒帯。
オレはマコの父ちゃんに土下座した。
「なんだ、なんだ。リュージ。やめてくれ」
「いえ、おじさん! いや師匠! オレをもう一度鍛えて下さい!」
「ほー。オマエの男にも火がつく頃だろうと思ってた」
「え?」
「マコの成績を見てそう思ったんだろう?」
「押忍! 思いました!」
「分かった。だが今から形も組み手も教えるなら大会にはどちらも間に合わんだろう。一点にしぼろう。どちらがいい」
答えなんて決まりきっていた。
「組み手です!」
この前、マコと雪合戦した時、マコに組み付かれたが全く歯が立たなかった。
その時はやっぱマコはすげぇと思ったし今までもそう思ってた。
だがマコを守る男になるならマコより強くありたい。
男の組み手は女子のそれよりもかなりハードだ。
けが人だってでる。
スピードもパワーもまるで違う。
今まで本気でやって来た選手たちがほとんどだ。そこに挑戦したい。