第26話 見えちゃった
マコのことを考えるとモヤモヤする。
下半身も熱くなる。
邪念が多すぎるんだ。そんなんじゃいけない。
オレは部屋の壁に向かって逆立ちをした。
頭に血を送るためだ。
下半身に血を送りたくない。
手が疲れると頭のみの逆立ち。
トータルするとけっこう長い時間逆立ちをしていた。
目がくらくらし始めた時に玄関に人が来たようだった。
「ああ。マコちゃん。上がって上がって」
母ちゃんの声。
つかマコかよ!
オレは逆立ちのまま慌てた。
慌て過ぎてマコがオレの部屋のドアを開けるころ、壁から崩れ落ち無様な姿をさらした。
それを見てマコは爆笑。
なんだっつーの。
「なんだよ。女子が男の部屋にくんなっつーの」
「なんでよ。リュージの部屋だもんいいじゃん。何してたの?」
「何って、逆立ちだよ。逆立ち」
「へぇ。なんで?」
「なんでってオマエ……」
まさか下半身に集まる血を頭に集めるためなんて言えねぇ。
「腕を鍛えるためだろうが」
「ふーん。ウチもやってみようかな?」
「はぁ?」
「足押さえてよ」
「ああ。いいぜ」
いつものマコだ。
ジャンパーを脱ぎ手をついて、キレイに足で床を蹴る。
壁に見事な着地。いや着壁か。
オレはそれを手で押さえてやった。
「何秒くらいやる?」
「限界まで」
「お〜。マコは頼もしいなぁ〜」
と言っていたマコだったが、なぜかすぐにもがき始め、足をバタつかせた。
オレはそれを抑えられるもんなら抑えてみろという冗談だと思い、必死で抑えたが違った。
「リュージ! 放して! ダメダメ!」
「なんだよ。まだ始まったばかりだぞ?」
「ああン! ダメぇ〜! 放してぇ〜! 出ちゃうぅ〜!」
「出るって何が?」
「いやー! リュージィ! 見ないで! 見ちゃダメぇーッ!」
「見るって何を?」
途端に、ウチの茶の間が慌ただしくなって、両親の足音が聞こえた。
その時、マコの上着がストーンと重力に引かれて落ち、オレンジ色のスポーツブラが丸見え。
というか、丸みが丸見え。
服の上からだと分からなかったが、小さいがぷっくと丸く膨らんでいた。
驚いて何も言えず足を掴んで固まってしまったがしっかり見た。
マコが余りにも大きくもがいたものだから、オレたちは床に倒れ込んだ。
マコが下。オレが上に乗り、もがいた拍子にマコの上着をなぜか掴んでおり、スポーツブラも出ている形のところに父ちゃんと母ちゃんが踏み込んで来た。
オレはそのまま父ちゃんに胸ぐらを掴まれて殴りつけられた。
母ちゃんには蹴られた。
マコは必死に誤解だと言ってくれたが、今後一緒に部屋にいることを禁止された。