第25話 あそこにタッチ(手袋あり)
冬休みになった。
ある朝起きると、結構な雪が降っていた。
オレはテンションが上がり、マコに彼氏がいるとかそういうのは吹っ飛んでいた。
ただマコと遊びたい。昔と同じように雪合戦しようと思い、マコの家に急ぎ遊びに誘った。
マコは普段着な感じだった。
「ホイ。これ。リュージに」
そう言って手渡して来たのは手編みの手袋だった。
さっそくはめてみるとピッタリ。
毛糸がとても温か。最高の作りだった。
「へー。いいじゃん。つーか、こんなこと出来ンだ。女みてーだな」
言った瞬間また鉄拳。のけ反るオレを想像してみてくれ。
「女だっつーの。バカにすんな。オメーより強えーぞ? 勝負すっか?」
いつもだったらビビるそんな言葉にオレはニヤリと笑った。
「おーし。じゃぁ、雪合戦で勝負だ!」
「受けて立とう!」
ウチとマコの家の回りは人通りが少ない。
車もなかなかこない道路で新雪を丸めて雪玉を投げ合った。
なぜか、アイツの玉はオレの頭を的確に命中させる。
やっぱ、強化選手は違う。
今貰ったばかりの毛糸の手袋はもはやパンチグローブ。
玉をパンチで撃ち落としながらマコに近づいた。
白兵戦だ。至近距離なら負けんというヤツだ。
しかしオレが近づくにつれマコの玉の速度も速くなる。
だんだんパンチで撃ち落とせなくなった。
最終的には雪玉がバコッと音を立ててオレの顔に当たって、オレは路肩の雪に倒れ込んだ。
「やった! ウィナー!!」
マコは嬉しそうに叫んでピョンピョンと飛び上がっていた。
だが、オレは倒れたままだ。大地にバンザイの形のままピクとも動かないでいた。
それを見てマコは
「ノックダウン?」
と言って近づいて来る。
オレには作戦があった。あまりにもやられすぎた。
腹いせにマコの上着の中に手を突っ込んで雪玉を地肌に押し当てて霜焼けでも作ってやろうと考えたのだ。
こっそり右手に雪を握り込む。
「自分で勝負挑んで来て、寝っ転がってりゃ世話ないでしょ。武士の情け。手を貸してやろう。ホイ」
マコは手を伸ばして来た。
今だ!
一、オレは手を掴んでマコを地べたに転ばせた。
二、後ろに回り込んで、雪玉を握った手を上着の中に突っ込む!
三、その雪玉を地肌に……
みゅにゅ
「……あ……!」
胸だ。マコに胸がある。
そう思った刹那、マコは無言でオレの髪を掴んで引きずり回し、腹に2発の膝蹴りを入れた。
「うぐぉ……!」
膝をついてまた地面に倒れ込むオレ。マコはその背中を踏みつけた。
「フン! このドスケベ! テメーマジで貰ってもらうからな!」
そう凄みながら言い、さらに地べたに伏すオレに蹴りを入れ家に帰って行った。
怒らせてしまった……。当たり前か。
だがこれには流石のオレもマコに女を感じざるを得なかった。