第23話 女の部屋
前も来たが、女の部屋。
これが曲者だ。
なんだ? この本棚の本。
わけのわからねー文庫本が並んでやがる!
なにがコナンドイルだ? アガサクリスティーってなんだよ?
オメー挿絵なくて意味わかんのかよ。
コロコロはどこいったよ?
ドラえもんはどこいったんだ?
なんだ? この血液型占いの本ってよー!
星占いってなんだ?
バカか? オマエはバカなのか?
お。おあつらえ向きに、この占いんとこに付箋が貼ってやがる!
バカめ。どんな星座を気にしてるんだか見てやらぁ!
そう思いながら本に手を伸ばすと、カチャリとドアが開いた。
当然そちらに目をやると
「なんだ? 座ってねーな。……うぉい! ヤメろ! 本見んな!」
マコは真っ赤な顔をしてオレの手から本をむしり取った。
「なんだよ。見てもいーだろーが!」
「ばっかじゃねーの? 人様の部屋漁んな! そんなんだからダメなんだよ!」
ダメだとぉう!?
「ムカつくなぁ~。オマエ変わったよな~。急に女になるしよー」
これは色気付いて彼氏が出来て……というつもりだったが、マコは思い立ったようにニヤリと笑った。
「そうだ。テッちゃんにも言われたんだった。まぁ座りなよ。お話ししよう」
「お、おう」
小さいキレイなテーブルに向かえ合わせに座ってマコは話し出した。
「あのさー。リュージってさー。マジでウチのこと女じゃないと思ってたの?」
話し方が変わってる。なんだその女みてぇな話し方。
そしてなにを言い出すんだ。答えずれぇ。
「う……ーん」
「あは!」
腹を抱えて笑い出すマコ。
マジムカつく。こっちは悩んでいるというのに。
「それじゃー、一緒にお風呂入ったとか全然なんとも思ってなかったんだ」
「いや、それは、かなり小さくて気にしてると思って言えなかったんだ」
そう言うと笑い過ぎて声が出なくなっていた。
床をゴロリゴロリと転げ回ったと思うと、涙を拭いて起き上がった。
「ホントにクソ鈍感以上だね」
何コイツ。言いたい放題言いやがって。
「まぁ、いいじゃねーか。ゲームでもしようぜ」
「は? ゲーム?」
「プレステは? どこいった?」
「そんなのもうないよ。勉強会でしょ?」
話し方が女。なんで女ゾーンに入っちまったんだ?
「なんだ。マジで勉強すんのか」
「当たり前。リュージ、このまんまじゃ高校も別々になるよ? 一生一緒にいたいんじゃないの?」
「は?」
「『は』じゃねーわ。少しは偏差値上げましょう」
マコのペースに乗せられ、マジで勉強会。
しかもスパルタ。鉄拳が飛んで来る。
バコッとひたいを殴られのけぞった。
「おいおい、血がでてねーか!?」
「出てねーわ! やれ! ちゃんと!」
なんだよコイツ。さっきまで女みてぇだったのに元に戻ってるじゃねーか。
それにちっとばかし頭がいいくれーで調子に乗りやがってよ。
オレは、飽きて後ろに倒れた。
「や~めたっとぉ……」
「なんだそりゃ。もういいわ。寝てろ」
マコの言葉に甘え、横になったままいるとマジでそのまま就寝。
起きると、おばさんが作ったカレーの匂いがした。
「あ。やっと起きた。ホレ」
と、マコはオレの頭を目掛けてティッシュ箱を投げつけた。
当然それがぶち当たる。
「痛!」
「ヨダレ拭け。ヨダレ」
見ると、床に大きくヨダレの跡。
恥ずかしくてすぐに拭いた。
マコはベッドの上で眼鏡をかけて読書をしていた。
ゴクリ……。な、なんなの?
め、眼鏡?
初めて見たわ。
「オマエ、眼鏡なんてかけてたか?」
「ああ。そーだな。家の中とか勉強するときとか」
「そーなんだ。コンビニ行くときはかけてなかったじゃねーか」
「そりゃ、リュージの前ではな」
そう言いながらマコはメガネをとってケースにしまった。
「お母さんが、リュージが起きたらご飯にしようってさ。いこ」
マコはベッドから降りた。オレも立ち上がったが呼び止めた。
「まぁ、マコ」
「なに?」
「オマエ……か、か、か、か」
「なに? カワイイかよォ〜?」
そう先走って顔を押さえた。オレは呆れた。
「ちげーわ! もういい」
彼氏がどんなやつか聞こうと思ったがヤメた。
聞いたら傷ついてしまうし、それにオレを部屋にあげるとか、もうしなくなっちまうと思ったんだ。
今日は12時にもう一話アップします。