第19話 彼氏いる
それから暫くして、学校の廊下を一人で歩いている時に呼び止められた。
「おい、白井。オマエ、近内さんと同じ小学校だったんだろ?」
「あ? 誰? オマエ……」
突然知らないヤツに声をかけられた。オレはいつもの調子で返した。
「うわ。こえー。後輩のクセに」
先輩だった。そりゃ顔を知らねぇはずだ。
2年の先輩。男子バスケット部らしかった。
「ああ、先輩っすか。スイマセン」
「いや、いいけどよ。どうなの? 近内さんとの仲は」
なんだその質問はと思った。
だが『仲は』と聞かれれば答えは一つしかない。
「仲はいいっすよ」
オレの回答に先輩はニヤリと笑った。
「へー。彼女、彼氏いる?」
正直『何言ってんだ。コイツ』だった。
だったら本人に直接聞けばいいじゃねーか。
だが、ほとんどいつも一緒にいるし、アイツが男に興味があるか?
バカバカしい質問だと思った。
「まさか。いねーすよ」
そう言うと嬉しそうな顔して、手を振って去って行った。
意味が分からなかったし、その先輩に興味もなかったのでそんな出来事は忘れていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから数日後。
またも廊下でその先輩にがっしりと腕を掴まれた。
忘れていたので思い出すまでに時間がかかった。
「オイ、オメーウソ付いたな? 近内さん、彼氏いるっつってたぞ!?」
と、ものすごい形相で言われた。
オレはケンカ上等だったが、その先輩の
『彼氏いる』
で完全にフリーズした。
「お、おい……」
その後、先輩に胸を軽く小突かれたらしいがそのまま固まっていた。
長い間固まって、気付くと先輩はいなくなっていた。
家に帰ってボーッとした。
放心状態ってやつだ。何にも身が入らん。
電話して彼氏のことを聞こうと何度も電話の受話器までとったが、どうしてもかけることが出来なかった。
それから何日もテンションが少しだけ低かった。
マコとコンビニに行く気にもなれなかった。