第15話 通じる気持ち
マコの父ちゃんの車がある。今日は別の道場で練習はないのだろう。マコは家にいる。
呼び鈴を押すとマコが出て来て、息の荒いオレたちを笑っていた。
「ハァハァ。マコ」
「なんだ。リュージとテッちゃんか。二人で遊んでたのか? ずりいなぁ」
「来週大会だろ?」
「そうだけど?」
「オレとテツとで隣町の戦勝の神様のところまで行ってきたんだ」
「え? 今か?」
「そう。そして、お守り買ってきたんだ」
そう言って、オレたち二人はマコにお守りを渡した。
オレたちは照れながらマコに説明した。
「実は金が足りなくて、戦勝のお守りは買えなかったんだ。でもこっちなら金が足りてなぁ……。オマエの父ちゃんよく言ってただろ?『安ずるより産むが易し』って。このお守りにもその文字が書いてあったからさ。応援してるから頑張れよ!」
「そうだ。マコならきっとうまくいくよ!」
オレとテツは、マコにそれを手渡して帰って行った。そして午後から部活に行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
マコはお守りを受け取ると、嬉しそうに自分の試合用バッグにそのお守りをつけていた。
それを母親が咎める。
「マコちゃん。そのお守り」
「ああ。リュージとテッちゃんがさっき戦勝神社に行って買ってきてくれたんだって」
「でも、それ……」
「案ずるより産むが易しだって。字が違うの気付かないなんて二人らしくない?」
「安産守じゃない」
「そーだよ。でも、二人の思いがつまってるもん」
「恥ずかしくないの? 誤解されそうだし……」
「いいの。二人の気持ちだもん。それに人のお守りの字まであまり見ないでしょ」
「ま、それもそうね」
「ふふふ」
マコも最初お守りを受け取った時、気付いて吹き出しそうになったが、真剣な二人の思いが込められているので喜んで受け取ったのだった。