第13話 マコの変容
だがオレたちが互いにいる時間が少なくなっていったのは部活が始まってからだ。
オレはサッカー部。テツは剣道部。
マコはサッカー部のマネージャー。
しかしマコのマネージャーはわずかな時間だった。
マコは空手の中学生の強化選手として選ばれたのだ。
形と組手両方。
自宅が道場だということもあるが、マコには才能があった。
オレはとても名誉なことだからマコにそれをするように薦めた。
「すげーじゃねーか! やっぱマコはすっげ!」
「うん……。でも断ろうと思う」
「なんでだよ」
「だってマネージャーもあるしなァ……」
「バカ。オメーは頭が良いようでバカなんだな。マネージャーなんてやってる場合じゃねーよ」
「……でもなぁ……。時間もとられるし……」
「いいじゃねーか。オレ、応援するよ」
「……うーん」
「やれって」
「……まぁ、お父さんもそうしろって言ってるしなぁ」
「よーし。決まりだ。頑張れよ!」
「うん……」
「うぇーい! 目指せ世界大会優勝だな」
「そーだな」
オレにとっても嬉しい話だった。
マコにはぜひ頑張ってもらいたいと昔から思っていたのだ。
マコはオレや昔の仲間たちの前では昔の話し方だった。
その方が楽だとも言っていたが、やはり6つの小学校の集まりだ。
知らない連中も多い。
社交的なマコはどんどんと友人を増やしていった。
オレも部活の連中やクラスでも席が近いものと話すようになった。
マコは楽しそうに女子達と話している。
その言葉は仲間内の言葉ではなかったのだ。
「おはよー。ニッちゃん。昨日の宿題出来た?」
「マコちゃんおはよー。難しかったよねー」
「近内さん、学級日誌なんだけど」
「あ、長谷川くん。今日ウチの番だっけ?」
マコの話し方が違うとついそちらを見てしまう。
そんな状態を新しい友人たちはからかってきた。
「おいリュージ。どうした? また近内さんばっかり見てるな?」
「バカ。見てねぇ。時計見てたんだ。時計」
「ふーん……」
別にマコは親友だからそう言われて、肯定しちまえばよかったんだが、女のことを気にしてるって思われるのが照れくさかったんだ。