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第10話 親友の約束

オレたちの仲間に大山哲兵おおやまてっぺいという男がいた。

これもマコと並んで親友だ。

オレはテツって呼んでた。

マコの家の空手道場にも小5の頃から習いに来てて、小6ですでに茶帯になった才能あるやつだ。

まぁ、オレもマコも黒帯だったが。


ある時、三人で遊んでいたんだ。

たしか、別の地域にある自動販売機に焼き芋味のジュースがあるから飲みに行くとかそんなくだらない話から自転車に股がってオレたちは一つ先の町にサイクリングに行ったんだ。


中学に上がる少し前の二月あたりだったと思う。

途中にあった駄菓子屋でマコが店に入ってミルクチョコレートを三枚買って来て、オレたちに一枚ずつ渡したんだ。


「ホレ。オメーらにやるよ。どーせ誰からももらえねーだろ」


オレは意味が分からなかったが「まーな」と答えて代わりにアイツに麩菓子を買ってやった。

マコは笑いながら


「今返すのかよ。まぁリュージらしいわ」


と言っていた。三人でしばらくそれを食って、さて目的の自動販売機に行こうというところでマコが駄菓子屋でトイレを借りに行った。


オレはテツに他愛もない話をしていたが、テツが真面目腐った顔をして聞いて来た。


「リュージ。……聞いてもいいか?」

「は? 何でも聞けよ」


「お前、マコのことどう思ってる?」


どう思ってる?

どんな質問か意味が分からなかった。

頭がいいとか、スポーツができるとがそんなことかなぁ?

でも短髪の方が似合うよな。とかそう言う話か? と応えに迷っているとテツの方から切り出してきた。


「率直に言う。オレはマコが好きだ!」

「は?」


突然何を言い出すんだろうと思ったらそんなことだった。

好きじゃなきゃ遊ばねーだろ?

何を今さらそんなことを言い出すのか訳が分からないヤツだと思った。


「お前はどうなんだ。お前の気持ちを聞かせて欲しい」

「ああ。オレも好きだよ」


「やっぱ……そうか」

「将来も一緒にいたいって指切りしたんだ」


「は? む、無理矢理か?」

「はぁ? なわけねーだろ。マコの方から楽しそうにしてきたぞ?」


「ぐ。そ、そうか……。じゃ、マコも……」

「だな。親にも言ってあるし」


「は、はぁ? 親にも!」

「そーなんだよ。親にも知られちまってなぁ。まーいいけど」


「…………」


テツはそのまま自転車のハンドルに顔をうずめて黙ってしまった。

オレは何か悪いことを言ったかなぁと思いつつ、お前も一緒にどうだと誘おうと思ったところにマコが戻って来た。


「あれー? テッちゃん、どうかしたかー?」


テツは顔を上げたがオレたちとは逆に向けていた。

そして、腕で自分の目を大きく拭い払った。

まるで涙を拭くように。


「な、なんでもねーし。オレ、帰るわー」


テツはオレたちに背を向けた。食い掛けのチョコをジャンパーのポケットをしまい込むと、全力で自転車をこぎ出した。


体の具合が悪いのかも知れない。

家に帰る途中、もっと悪くなっては大変だと思い、オレはその後を追いかけた。

その後ろをマコも付いてきた。


「テツー! 大丈夫かー!」

「だ、大丈夫だわー! 追いかけてくんなー!」


「具合悪ぃのかよー! 仲間じゃねーかー!」

「大丈夫だー! 用事あったの思い出しただけだー!」


テツはスピードを緩めようとはしなかったが、オレとマコは少しずつテツとの距離を詰めて行った。

テツも諦めたようでスピードを緩め、車の来ない田舎道をオレたちはいつものスピードで走り出した。


「ホントにオメーらってヤツはよ」


テツはいつもの口調で言う。

それにオレたちも合わせて笑った。

テツはマコに真剣な眼差しを送った。


「マコはリュージを好きなのかよ」


それにマコはためらいながらも力強く答えた。


「ああ。好きだよ」


それを聞くとテツは少しばかり空を見上げて、声を震わせながら言った。


「応援するよオレ。マコとリュージを。困ったことがあったら相談してくれよ。なぁ、仲間じゃねーかよ」


熱い言葉にオレもついホロリと来た。


「ああ。頼むぞ」

「テッちゃん。ありがとう」


この時、俺一人だけバカだったんだなぁと今でも思う。

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