第1話 オレたちの出会い
押忍。オレは白井竜司。
今から少しばかり過去の話をさせてくれ。
オレは自分の勘違いで大好きな女を傷つけちまった。
さらには転校まで……。
今でも深く心に残っているこの思い出を懺悔のために吐き出させて欲しい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オレには親友がいた。
オレも自信があるが、同じくらいキマってカッコいいヤツ。
その名も幼なじみの近内実。
オレはこいつを「マコ」って呼んでた。
硬派なオレたちは女なんてクソくらえ!
……だと思ってた。マコもオレと同じ気持ちだと。
でも、そいつをいつの間にかみんなは「美少女」と呼びだした。
そう。マコはいつの間にか女になっていやがったんだ。
いや……。
実際は昔から女だったらしい。
オレ一人が勘違いしていただけで……。
まず、コイツの家は空手道場だった。
歴史のある家らしく、日本庭園の中に最近リフォームした近代的な作りの母屋と庭にそこそこ広い武道場。
近所ということもあり親はオレに空手を習わせることにした。
その時は三歳くらいだった。
初めてマコと出会ったのは三歳だったんだ。
親に連れられて行ったそこには、虎の金刺繍がされた黒い道着。
胸には白く「近内」の文字。
端整な顔立ちに短髪。
見た目もビッとしていい男ぶりだった。
もうそこでやられた。格好良過ぎだ。
オレと親は畳の上に正座をして見学したが、道場に入るのはマコがいたからというのが大きかった。
親に相当せがんで入門させてもらったらしい。
そこから年齢が近いので、マコと組んで練習をずっとしていた。
オレの空手の腕前がメキメキと上達したのは親友でライバルだったマコがいたからに他ならない。
当然、開かれた大会ではオレたちが二つの優勝を勝ち取った。
それが当たり前だと思っていた。
今思えば、その二つの優勝ってところで気がつきゃ良かったんだよな。