客人
長い一週間が終わった。
今日は待ちに待った休日である。
―といっても、今日は客人が来るので心から休まることはないだろう。私にとって命の恩人であり、唯一あの人が信頼出来る頼もしい人だ。客人はお世話になっている渡来双子の母方のお姉さんの娘、要するに双子の従姉が遊びに来る。
従姉は生粋のロシア人で、とても美しい容姿を持っており、お近づきになるのを躊躇ってしまうほど。成績も優秀、「歩く辞書」というあだ名がつくほどの博識だが、そんな印象とは裏腹に本人はとてもお茶目で可愛らしい一面がある。雰囲気や性格は芹菜にどことなく似ている。国立国際魔導大学の一年生で、一年生ながら大学内で主席をとっていると芹菜からきいたこともあった。
おっと、例の彼女の名前をまだ紹介をしていなかったね。彼女の名前はSmirnov Arinaという。ロシア人にはよくいる名前なんだそうだ。ロシアは日本と同じ「苗字 名前」らしく、彼女はアリナとかリーちゃんなどと親しまれている。そんな彼女は私の前に座ってぽんやり私を見つめながらポテチを食べ続けている。ポテチを口に運ぶという動作を止めるつもりはサラサラなさそうだ。
「 改めて、どうも。浅葱弥生殿。そなたのことは彼女たちからよく聞いている。とても真面目で心優しい人だと。今日は双子とそなたに会いに来た。これから、沢山ここでの時間を堪能するつもりだ。だが、その前にそなたにどうしても伝えておきたいことがあるんだがいいだろうか。」
「 なんでしょう。」
「 あの事件は、そなたのせいではない。あの小娘が自ら行ったことだ。あの子はどんな人でも、もしその人が何千人もの人を殺めたとしても、殺さなければならない相手以外ならば、相手が命の危機に晒されたら自分の命を投げ捨ててまで助けてしまう良い人。どこまでも善人だからこそ、そういう性格だということを我々全員が知っていたからこそ、そなたが、自らを責めることも、我々がそなたを責めることも一切しないし咎めるつもりもない。だから、そんなに気に病まないで欲しい。恋人である渚殿もどこまでも善人な彼女を好いており、その善行が何時しか大きな災害をもたらすことも知っていたから、そなたを責めないのだ。悲しんではいるが、酷く落ち込んでいるわけでもない。あの子はふらっと帰ってくるだろうから。」
その後もアリナさんの語りは続いた。あの事故発生直後に彼女が仕掛けたもしもの時の保険でかけた魔法の解説と、私が転生してあの人が消えたその瞬間にかけた検索魔法は今でも生きているとの報告だった。居場所がつかめてはないが、大よその検討はついている。というのがアリナさんの現在の意見だ。
「 その予想がついている場所というのは。」
「 それは私でも計り知れない。とりあえず、あの子はこの世にはいないだろう。でも、死んだわけではない。私たちが考えられない異空間にいるのではないかと。まぁ、まだ予測の段階だからこの話を全て鵜呑みにはしないでほしい。」
話の内容的にはとても重く重要な話をしているのに彼女はポテチ食べている。袋が空になったようで、きれいにたたんでゴミ箱に捨てた。―が、彼女はコーヒーとケーキ(ホールサイズ)を持ってきて無言で再び食べ始めた。
「 まだ、食べるんですか。」
「 はへるふぉとは、ひょへもふぁいひ。わひゃひそひふぁふぁはふぁひょふふぁひふほう。(ごくん)。失礼。この国の食べ物はどれも美味しいので、食べるか話すかという器用なことはなかなか出来ない。」
すると横から華さんから小声で「アリナちゃんはロシア人だけど生まれも育ちも日本なんだよ。」とぽそりと教えてくれた。矛盾している。
「 それにしても本当よく食べますね。」
「 栄養は全部魔力に吸い取られるとはいえ、一つもお肉にならないその身体が羨ましすぎて気が狂いそうだよ。」
「 私にとって、食事、間食を取らないという行為は、命取りと同じ。私に食べるなと命令をした者は遠慮なく首を斬らせてもらおう。―と、心に誓うレベルで大事なので、食べるという行為を気にしないで欲しい。」
そう言い終わると、菜々ちゃんお手製の自家製ステーキをアリナさんに提供している。その自家製ステーキは私たちにも提供してくれた。彼女らの父親の実家が牧場らしく、牛やら豚やら羊やらニワトリやらを飼い、食用ものを生産しているらしい。渡来産のお肉は日本一と言われるほど絶品なんだとか。そんなに美味しいなら一口頂こう。
最近覚えたテーブルマナーを守って左手にフォーク、右手にナイフを握り、ステーキを丁寧に切っていく。一口サイズに切ったステーキをフォークで刺し、たれを絡めて口に運ぶ。口に入った瞬間、とろっととろけるような柔らかい肉。噛めば噛むほど滲み出てくるジューシーな肉汁。外は少し硬く、中はとろけるような柔らかいミディアム(焼き加減)は最高に美味しい。
「 渡来家のステーキは日本一ではなく、世界一。芹菜なら世界一の料理人になれる。」
「 本当に美味しい。こんな贅沢なの毎日食べたいくらいだよ。」
「 へっへーん。美味しいだろう。お父さんが愛情込めて育てたお肉ちゃんたちに、私が愛情込めて調理してるからね。美味しいに決まっているんだよ。」
アリナさんは瞬く間に食べ終わり、おかわりをねだっていた。ステーキをおかわりしている人なんて、大食いテレビ番組くらいでしか見たことがない。結局、三〇〇グラムのステーキを五杯おかわりしたアリナさんは、ようやく満足そうな顔をして色んな意味で落ち着いた。どうして、今日彼女が家に来たのか全く分からない。本当は芹菜の作るごはんを食べに来ただけなのではとも思う。
その夜、いつものように花子さんのところへ足を運ぶ。足を運ぶという表現は少し違う気もするが私は気にしない。先日、この世界に名前を付けてから真っ白で何もない世界から和風な部屋があったり庭園があったり洋風な部屋があったりと、鮮やかな世界へと変貌していっていた。
花子さーん来たよーと大きな声で呼びかけてみるが、彼女はなかなか姿を現すことがない。あんまりこの世界で長居出来ないため早く彼女を見つけ出さなければならないのだが、全然見つからない。所詮夢の中だ。仕方ない、今日は諦めて普通に寝るとしようと思って新しく設置された扉から帰ろうとしたとき、花子さんの声が脳に直接語りかけてきた。
「 弥生、ごめん。姿見せられなくて、妨害された。私の存在をこの世界に現存できる能力を封印させられた。」
「 そんなっ。そ、そんなこと誰が出来るんですか。」
「 今日、御庫裏が家に来たでしょ。」
「 御庫裏さんですか。今日はアリナさんしか家に来てないですよ。」
「 バカね。御庫裏ってのはアリナの日本名よ。彼女の日本表記は「御庫裏亜梨那」って言うの。本題は、この世界に私がいることが彼女にバレたの。あの人の検索魔術ならもう到達してもおかしくない時期だけど、私にはまだやることが残ってる。この世界から消滅させられて、元の世界に戻されるのは御免なのよ。…てか、私を今の状態で消滅させたら私元の世界に戻れないことくらいわかってるはずなのに、彼女は何をするつもりなのかしら。」
「 今日アリナさんはモグモグ食べてただけなのに、いつそんなこと。あ、今日なんか言ってた。「食べることはとても大事。私の力は魔力が必要。」って。」
「 多分その時に詮索されてた。気を付けて弥生。今のあの人は何するかわからない。」
とても優しそうでおおらかで信頼してもいい人だって思ったのに。いや、きっと本来は信頼していい人であり信頼しなければならない人なのだろう。敵には回したくない。双子も言っていたけれど、彼女を敵に回したものは逃げられないと。かつて、この町を仕切っていたといっても過言ではないあの人とアリナさんはとても良いコンビネーションだったとこの町の人たちから聞いている。気をつけろなんて言われても、能力のない私には対処することも出来ない。どちらかと言えば花子さんのほうが危険だ。
―花子さんが一番危険ですから、気を付けてくださいね。
なんて言うと彼女は
―私に勝てないものなんてない。人の心配してる場合じゃないわよ。安心しなさい。
…なんて、こんなの言い合ってたら全くもってキリがない。帰らなければならない時間になってしまったので、私はこの世界を後にした。因みに先日名付けたこの世界名「浅葱の花にて会いましょう」は「浅花会」という呼び名で省略された。
目が覚めた。本日の寝起きは非常に悪い。ぼんやりした芹菜にほぼ瓜二つであるアリナさんが花子さんの敵になってしまったなんて。私はベットから起き上がって足を下ろすと何かを蹴った感覚があった。布団からベットに昇進した私は未だベットに馴れない。スリッパか何かと思ってもう一度蹴ってみた。うん、人だねこれは。もしかするともしかするから…なんて理由を付けて何度か蹴ってみた。
「 も、もうハンバーガーは食べられないってぇ。」
やっぱり、菜々さんだ。夢の中でもハンバーガー食べるか。むにゃむにゃ言っている彼女を軽く踏みつけてクローゼットまで歩く。踏みつけた時―
「 うわぁー。おおきなハンバーガーだぁ。ハンバーガーに潰されるぅ。」
…とむにゃむにゃと寝言を言っていたのは気にしない。きっと彼女の夢にはハンバーガーがぷかぷか浮いてて、片っ端から食べてたらラスボスハンバーガーが菜々さんを襲ったのだろう。なんて平和な夢なんだ。そしてどれだけハンバーガを愛しているんだ彼女は。
昨日沢山料理を振舞ってくれた菜々さんに朝ご飯を作らせるわけにはいかないので、先日彼女のご両親から送られたレシピを見ながら、見よう見まねで作ってみようと思う。今日の目標は焼きサケと卵焼きとお味噌汁だ。ごはんは釜炊きなら何度か前世でもやったことがある。幼馴染だったお手伝いの人と一緒に作ったもんだ。早朝四時半からなら釜炊きごはんでも出来上がるだろう。毎朝お弁当を作っていくようになってからは、以前より腕が上がった。そのおかげで、自信もついたのかミスもどんどん減っていっている。
朝六時―。陽が昇ってから三十分が経過し明るくなった朝だが、とても不愉快な朝だった。これからどうなってしまうのか。信じた人が本当は敵なのか。花子さんは決して悪いことをしようとしているわけではないのに。何故狙われてしまったのか。相談するべきは誰なのか一つも分からなくなってしまった。
ぽんやりと朝日を眺めていると双子が部屋から降りてきた。と同時に釜炊きご飯が炊けてぐつぐつと文句をいっている。慌てて火を止めて蓋を開けた。
「 おはよぉ。」
「 おはよう。」
「 あれぇ、これ弥生ちゃん作ったのぉ。」
「 凄いじゃない。この前の日の丸弁当からここまで上達して。」
「 ありがとうございます。昨日、菜々さんが一生懸命料理を振舞ってくれたのと、毎朝朝ご飯を作ってくれているお礼です。たまには恩返しくらいはしないと。」
「 ほらぁ。華ちゃんも弥生ちゃんのこと見習えぇ。」
「 冷める前に頂いてみてください。味が濃かったり薄かったりしたらアドバイスお願いします。」
学校も終わり誰もいない放課後―
私は花子さんのことを誰かに打ち明けようと考えた。考えたといっても、私の周りの人たちはほぼ、花子さんの関係者。案外味方が少ない。絶望的だった。私のクラスの人間は大抵の人は渡来家にお世話になりアリナさんのことも知らない人はいないだろう。だが、だからと言っていきなり花子さんのことを話しても誰も信じてくれはしないだろうし、誰も味方になんてなってくれないだろう。
決して、教室に友達がいない訳ではない。ちゃんといるよ。女の子も男の子も平等に。前の席に座ってる西城雪さんは雪女の生まれ変わりではないかというほどに白くおぞましい空気を持っているが、とても優しくていい人だし、いつも椅子の上で正座をしている仲見目碌吾さんもなかなかいい人だけれども、どうも話せるほど仲が良くない。そんな途方に暮れていた私のところに来たのは、考えてもいない人だった。
「 浅葱さんじゃないですか、こんなところでどうしたんですか?」
「 …あれ、朱雀くんじゃない。ううん、ちょっとね。考え事をしてたの。」
「 僕で良ければ相手になりますよ。」
そうだ、彼は渡来家とも接点があって尚且つ、天音さんとも面識がある味方であり、話をしても信じてもらえそうな唯一無二の存在なんだった。これは、盲点だった。花子さんが与えてくれたチャンスだと信じて、私は彼に花子さんと私だけは会うことが出来るということ、そしてその花子さんの命が本当に崖っぷちの危機に立たされてしまっているということ。どうにか私たちで彼女を救うことは出来ないかを彼に全て話した。
彼は全ての話を聞いた後、考える人の姿勢で十分ほど悩んでいた。
「 …難しかったかな。」
「 いや、浅葱さんの言いたいことは大体わかったよ。要するに、彼女は実は生きていて、そのことを知られたらマズい人たちにバレてしまって、命というか行動を拘束され彼女自身の目的を達せられない…ってことでいいのかな。」
「 多分…だけどね。私もイマイチ状況が掴めてないんだけど、自分の存在が消えることを承知で私のこと助けてくれた命の恩人だもの。手があるなら、助けたい。」
「 うん。わかった。僕も浅葱さんに協力しよう。」
私はなんだかこの言葉だけでも救われた気がした。花子さんと話したのはたった数分の出来事だったし、その数分で花子さんにどれだけの危険が迫っているかなんて、全部理解したわけではない。ただ、渡来家を超え世界魔術協会のトップ4にそびえ立つ、防御・捜査系魔術専門のSmirnov(御庫裏)家の驚異的な存在を事細かくあの双子に説明されていた私だからこそ、その威厳さに怯えてしまいパニックになってしまっていたのだ。誰かに打ち明けることで、こんなにも心が落ち着くのだと再確認出来た気もする。
しかし、彼に打ち明けて心は落ち着いたもののこれからどうしようというのだろう。「何か対策を」と言っても何をどう対策をするんだ。私には能力なんて持ち合わせていないし、かと言って元魔術武士であった朱雀くんの力を借りたとしても、あの御庫裏家に敵うほどの戦力を持っているわけでもない。
「 ねぇ、浅葱さん。東雲家のことです、図書館とかに行けば彼女の家の歴史とか調べられるのではないでしょうか。」
「 なるほど。確かに、それなら彼女に差し迫っている危険についても調べられるかもしれないわ。ありがとう、急いで図書館に行きましょう!」
夕方五時を過ぎていたので双子に心配かけまいと最近覚えたスマートフォンを使って「遅くなります」と一言連絡を入れて、駆け足で図書館へと向かった。
東雲家や天海家、現在の我が家である渡来家がある来栖町の鳳区ではなく、少し離れた来栖町の中心区と言われている鑑区にある来栖町最大図書館に辿り着いた。ここになら、朱雀くんの言うように、東雲家についての歴史が載っていることだろう。
その図書館は思った以上に広かった。(弥生自身の知識は花子と双子から聞いたものに過ぎないため、知識の幅はとても狭いが、)図書館の広さは歌手が行うライブや、夏と冬に開催されるというオタクの人たちが集うお祭りに使用する大ホールに、匹敵するのではないかというほどの大規模な広さだ。…これは探すの大変だぞ守重朱雀。
私たちは、図書員に町内の歴史が記された本の場所を案内してもらったのだが、これまた凄い量だ。気が遠くなりそうな作業だが、花子さんを救うには地道に調べていくしかないと決心をつけて、作業に取り掛かった。
一方その頃、弥生から遅くなるという連絡を受けて、迎えに行くか行かないか悩んでいる二人がいた。どこに行っているのかさえわからないため、防衛魔術を仕掛けて弥生を守ることも出来なくてどうしようか悩んでいる。
「 あー、もう。弥生ちゃんどこに行ったのよぉ。」
「 『可愛い子には旅をさせよ』だよ、華ちゃん。弥生ちゃんはこの世界に来て、半年。やっと独り立ちできる時が来たんだよ。だから、そんなに心配することはないって。」
「 バカね、菜々ちゃん。弥生ちゃんの身体は特別なのよ。あの子の鍵が眠っているかもしれない特別な存在なんだから。」
「 そんなことわかってるさぁ。だけど、私たちに守られてばっかりの世間知らずのお姫様が、私たちの手から離れて何かしようとしているんだ。」
「 …まぁ、菜々ちゃんの言いたいこともわかるわ。ふぅ、仕方ない姉ね。わかった。弥生ちゃんだもの。平気よね。心配だけど、辛抱強く待っていよっか。」
結局、弥生と朱雀は図書館に泊りがけで調べた。分かったことを結論から言おう。
花子さんの家系は古くから呪われているということだ。来栖町は古くから魂霊魔装術式という魂や霊などを操る魔術儀式があり、千五百年ほど前からずっと続いている。その伝統ある儀式で不正を働いたものがいるらしく、醜女という黄泉の世界にいる化け物と長く縁のある家系だということもわかった。
魂や霊を操るため、どうしても黄泉の世界とのつながりは切っても切れない関係らしく、契約の交換条件として悪霊と化した醜女達を浄化することが条件だった。このことから推測するに、花子さんの家系に課せられた醜女たちによる呪いが、魂霊魔装術式の儀式の際に誤爆、呪いの暴走により強制的に黄泉の国に引き込まれたと考えていい。
とりあえず、花子さんがこの町から去ってしまった理由は突き止めることが出来た。しかし、弥生の夢の中に現れることの理由が証明されていない。もっと調べたいところだが、芹菜と芹華が心配しているであろう。今日はここまでにしておくか。―ということで、調べた資料を元に戻して席を立った。
酷い雨が降りしきる中、思いもしない人物が動き出そうとしていた。
「 は?『浅葱弥生』が彼女のことを調べているだと?」
「 うん。これは紛れもない事実。そして、あの子が弥生と接触していることも判明した。」
「 接触…?それはどういうことだ。」
「 私もよくわからない。けど、確実に言えるのは『浅葱弥生とあの子は切っても切れない鎖で繋がっている』ということ。だから、私たちで先手を打って彼女と浅葱弥生の真実を突き止めなければいけない。」
「 協力しろってことだな。わかった。俺だって渚の悲しい顔は見たくねぇ。」
「 契約成立。さぁ、行こう。」
雨も止みどんよりした雲からまぶしい太陽が顔を出し、虹もかかっている。朱雀には家の近くまで送ってもらって彼とは別れた。天海家の角を曲がってさて、あともう少しで家だという時―。端正な顔立ちの少女に出会った。
「 こんにちは。浅葱弥生さんですね。」
「 はい。…もしかして、あなたは―」
「 『東雲朱音』と申します。半年前に行方不明になった彼女の妹です。」
本当はもっと早く、挨拶に行かなければならなかった。詫びなければならなかった。あの事故以降姿をくらましていた東雲家の三女が、わざわざ自分を待ち伏せしてたということは…。何か嫌な予感がして思わず抱えていたバッグを落としようになる弥生だった。
〈 つづく 〉




