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第四十三話 しがない決戦前夜

 時刻は朝の七時で、一徹目。

 眠たさが一周降りきって、むしろ目が冴え渡るこの状況、すなわち、プロゲーマー九条類にとってのベストコンディション。

 「・・・・・・よしっ!」

 俺は軽く背伸びをして、片手に財布とスマホ、そんでもってオーダーテスターが入っている鞄をもって家を後にした。

 電車とバスを乗り継いで、メシア日本支部へと到着する。

 受付前のベンチに今回応援をする為に来ていた美咲がいた。

 「お、ルイ。おはよう」

 「おはよう。美咲お前ずいぶんと早いな、テストプレイ開始まであと二時間はあるぞ?」

 「そうだけどさ。だって今日でラストなんでしょ? テストプレイ、どうせ最後ならルイたちが普段どんなふうにしてるか気になってさ、早く来ちゃった」

 「そういうことか、なんか悪いな」

 「いいよいいよ。その代わり、マリアさんによろしくね」

 「現金なやつだなぁまったく・・・・・・」

 そう、今日でテストプレイはラスト。今までの結果で、日本でのオーダーテスター運用はほぼほぼ問題がないと証明できつつある。

 俺たちに残されたのは、メインサーバーアメリカのギルドであるNObloodの討伐。

 このテストプレイにおける最終目標。

 「あれ、そういえばルイ。千尋ちゃんは?」

 「あぁ、千尋はなんか寄るとこがあるって言って俺より先に家を出たはずなんだけど、もしかしてまだ来てないのか?」

 「大丈夫です今来ました」

 声のした方を振り向くとそこには何故かギリースーツを着た千尋がいた。

 「な!? お前なんだよその格好は」

 「今回の為に、ちょっと色々やってきたので・・・・・・」

 千尋は体をモゾモゾさせながらギリースーツを脱ぎ始めた。下にはどうやらサバゲーのBDUを着ているようだ。

 「それじゃあ、式夜は?」

 「式夜さんならもうログインしていると、先ほどメールが来ていましたよ?」

 「え、マジで」

 スマホのロックを解除すると確かに一件のメールが届いていた。

 「なら俺たちも・・・・・・」

 「早いですけど、行きましょうか」

 「頑張ってね、二人とも」

 「任せろよ」

 「任せてください」

 美咲に軽く挨拶を済ませ、俺と美咲は上層に行くためのエレベーターに乗った。

 「なんていうか、あっという間でしたね」

 「何が?」

 わかっていることだけど、あえて聞き返した。

 「ほら、テストプレイのことですよ。だって、半年も立ってないじゃないですか」

 「まあな、なんか初めてプレイしたのが昨日のことみたいに思えてくるよ」

 「兄さん、その言い方はなんか爺臭いですよ?」

 「そうか?」

 何てことのない会話の間に、エレベーターは上層へ辿り着いていた。

 「勝ちましょうね、兄さん」

 「わかってるよ、そんなこと」

 もはや日常風景になってしまったテストルームを見回し、いつものようにオーダーテスターを被った。

 本当にあっという間だった。

 このテストプレイの結果が発表されるころにはオーダーテスターが全国的に発売されていると思うと、なんか変な感じだ。

 今更ではあるけれど、俺はこのゲームを通じて、変われたのだと、心からそう思える。

 「絶対に、勝つ・・・・・・!」

 それが当然であるかのように、俺の意識はいつものベットの上で仮想世界へと吸い込まれていった。

 

 

 


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