第三十話 しがない真実②
「NOblood、日本語でいうと無血を意味するこのチームはその名とは対照的にプレイヤーキルを頻繁に行うチームです」
「別にそれ、普通じゃないのか?」
リレイズフォースオンラインに限った話ではないが、基本的にオープンワールド式のオンラインゲームでは、プレイヤー達の殺し合いであるPVPが起こるのは至って普通のこと、むしろゲームによってはPVPがメインになっているオンラインゲームは少なからず存在するのだ。リレイズフォースオンラインもその要素をもつ。
クエストを自注して攻略する、しかしそこで他のプレイヤーの干渉が入る、結果殺し合い。何度も言うようだがオンラインゲームでは普通のことだ。
「問題は彼らのプレイヤーキルの仕方です。言い表すのであればそうですね・・・・・・彼らは盗賊、無知で無垢な冒険者を狩る砂漠のハンターです。なぜならNObloodがプレイヤーキルの対象にするのは皆全て初心者であるからです」
「つまりは、初心者狩りということだな」
なんだろう、心が痛い。初心者狩りがどうのこうのって最近もあった気がする。
「彼らの場合、その手法が極めて悪質なのです。先程もいいましたがアメリカのサーバーにおけるフィールドボスの何体かはNObloodのメンバーによって討伐されました、その際に得られるレアなスキルやレアな装備を餌につかって初心者プレイヤー達を狩るのです」
「確かにそれはひどいことだけどさ、オンラインゲームならそういう初心者狩りも普通だと思うぜ? 俺も昔はどっかの誰かさんによくボコられてたし」
横目で式夜は見ると式夜は露骨に目をそらした。
「ですが、彼らの場合悪質だと・・・・・・」
「だからさ、オンラインゲームなら普通だろ?」
やり方や種類にもよるが初心者狩りでレートやレベルを上げるのは余り良いことではないが一つのテクニックともいえる。
「マリア、正直に話したらどうだ?」
「お父さん・・・・・・」
いや正直とかどの口が言うんだこら。けど今のでまだこの話には裏があるのはわかった。
「全部話せよ、今さらだろ?」
「わかり、ました。実はあなたたちにNObloodを討伐して欲しいわけは彼らが略奪した装備品のうちの一つ、「星弓」を取り返してほしいからです」
「星弓?」
聞いたことのない名前だった。
「この装備品は元は私がリレイズフォースオンラインを始めたばかりの友達にプレゼントしたもので、一定の条件を揃えるとたった一度きりだけ出現するレア装備なんです」
「ようやく理解した。君が態々嘘までついて試すような真似をしたのは、その弓を取り返せる実力が我々にあるかを見極めるためか」
「はい・・・・・・」
「まさかとは思うが、このテストプレイ事態がそれのためだけに組み込まれていたということはないだろうな?」
「流石に違います。星弓が盗られたのは日本でのテストプレイが丁度始まった頃ですから、その間に事件が起きたのでアメリカのプレイヤーに頼むよりあなた達に頼んだ方がいいかと」
「わかった。いいだろう、協力しよう」
「本当ですか!?」
「おい式夜、またお前そんな安請け合いして」
さっきまでの怒りはどこにいったのやら
「なに、面白そうではないかルイくん。マリアは君が倒してしまったから私はまだこのゲームの本場のプレイヤーとしっかり戦っていないんだ。丁度いいだろ?」
式夜のうっすらと笑みを浮かべていた。
「・・・・・・あ~はいはい、分かりましたよ。いいぜマリア、協力する。といっても役に立てるかは微妙だけどな?」
「類さんなら大丈夫ですよ。この私が保証します」
「そいつはどうも」
「と、なれば君たちのアカウントをアメリカのメインサーバーに移さなくてはいけないな」
「お父さんまだいたんですか」
「ジョニー、君いたのか」
「ジョニーさんいたんですね」
「ひどいな私のあつかい!?」
アメリカのサーバー、つまりな本場のリレイズフォースオンライを体験できるってことか。
ヤバイ超ワクワクしてきた。子供っぽいと分かっていながらもどうしても目新しいことが起きるとテンション上がる。
「詳しくはまた後日お話します。本当に今回の一件に関しては申し訳ありませんでした」
「別にいいよ、これからはチームメイトなんだしさ」
「ありがとうございます、そんな風に思っていただけると幸いです」
こうしてマリアを巡った一連の騒動は一先ずの区切りがついた。それと同時にテストプレイにもだ。
これからは日本のテストサーバーではなくアメリカのメインサーバーでプレイすることになるんだ。それは最早テストプレイの領域を越えている。
ちなみにこの後勝手に物事が済んでいたことが千尋にバレて俺はお説教をくらうことになった。