第二十九話 しがない真実①
「な、なんだよ急に改まって」
「これが本来の私です。九条類さん、巫式夜さん」
うって変わって丁寧に喋るマリア、なんとも馴染みづらいというか気色悪いというか。
「此度の数々の無礼、誠に申し訳ありません」
「いやいや別に無礼でもなんでもないって、俺たちはただゲームをしてただけだろ?」
所々イラッと来ることはあったけど。
「そう思っていただけるのであれば幸いです・・・・・・父さん、見ているのでしょう? 出てきてください」
「・・・・・・バレていたか」
「うぉっ!? びっくりしたぁ!」
ジョニーさんが観葉植物から顔をだした。そんなところに隠れていたとは・・・・・・
「父さんから説明を、それと謝罪を」
「わかっているさ。九条くん、巫くん、本当にすまなかった」
マリアのことをお願いされた時と同じようにジョニーさんは深々の頭を下げた。
「ち、ちょっとまってください? 話が掴めないんですけど・・・・・・」
「ルイくんの言う通りだ。私もよくわからない」
「どこから話したらいいのだろう・・・・・・」
_数分後・・・・・・
「ぜ、全部ウソぉ!?」
ジョニーさんのとんでもないカミングアウトで開いた口が塞がらなくなった。
「あぁ、本当にすまなかった。君たち日本のプレイヤーを試すような真似をしてしまって」
「解せない、実に解せない。なぜだ、なぜ我々を騙した?」
「今も説明した通りだ。君たち日本のプレイヤーを試したのだ」
「なんの意図があって?」
どことなく、式夜の目には怒りが感じ取れた。
まあ、そりゃ怒るのも頷ける。式夜はこのマリアの一件に関しては自らの責任感に賭けて解決する気でいたというのに今回の一件全てざ仕組まれたことだと分かった以上自身の感情を露見せずにはいられないだろう。
「君たちが我が祖国、アメリカのサーバーで十分に戦えるかどうか、確かめたかった。その為にマリアの一件を依頼した」
「一応聞いておくが、どこまでが本当で、どこまでがウソなんだ?」
「マリアにVR世界でのゲーム友達が出来た、というとこまでは本当だ」
「つまりは、マリアがバーチャルワールドから出てこなくなったっていうことは・・・・・・」
「嘘です。顔がやつれているのは特殊メイクを施しているからです」
「事情はわかりはしました。けれども・・・・・・」
「納得はしない、我らを騙した罪は重いぞ?」
「・・・・・・そう、罪です」
「は?」
急にどうしたというのか、マリアの声色に暗雲が立ち込めた。
「このオーダーテスターの、リレイズフォースオンラインの設定の一つで、戦闘フィールドの名前に全て七つの大罪の名前が入っているのはご存知ですよね」
「まあ、一応」
怠惰なる荒原
色欲の繁華街
強欲の洞窟
憤怒の廃村
傲慢なる地下洞窟
嫉妬の墓場
暴食の海域
これら全てにリレイズフォースオンライの秘密が隠されている(という設定)
テストプレイの関係上、まだ何ヵ所か行っていないところがある。そもそもこれらのフィールドが今回の一件に関係性があるとは思えない。
「これら全てにはそれぞれの大罪にちなんだエリアボスがいます」
「それがどうした? 何も関係ないじゃないか」
「関係があるから話しているのです。エリアボスたちは既にメインサーバーであるアメリカでは何体か討伐されています。たった一つのチームによって」
「たった一つの?」
「はい、チーム名は「NOblood」リレイズフォースオンラインのサービスが始まったころからの古参ユーザーでありチーム人数は四人。全員がレベルをカンストさせているだけでなく、エリアボスを倒したことによって得られる隠しスキルまで体得しています」
「やはり話が繋がらないな、簡潔に説明してほしい」
「わかりました・・・・・・九条類さん、式夜さん、どうかお願いです。どうか、どうか「NOblood」を討伐してほしいのです」
「・・・・・・討伐?」
まだ理解しきれていない。どういうことだ?
「・・・・・・少し話をしましょう」
そう言うマリアは暗い声色のまま話を進め始めた。




