第二十八話 しがなくない訪問者⑧
「九条類だ。よろしく」
「うん。知ってるよ、誰よりもね」
「?」
マリアは白髪、というよりは銀髪の髪を手ですきながら微笑んだ。柊さんからもらった画像とは少し印象が違うのはなぜだろう。
「まさかこの私がこうも簡単に負けるなんてね」
「俺も勝てるとは思ってなかったさ」
「流石と言わざるえない。やっぱり君は私が思い描いていた人プレイヤーだ」
「そいつはどうも」
何処かで聞いたことのあるような話だが、いまいち思い出せない。
「さてと、まずは何が聞きたい?」
「どういう意味だよ」
「言葉通りの意味さ、例えばそうだな・・・・・・幽霊の話なんてどう?」
「!!・・・・・・それは」
かつてログインする度にみていたマリアとそっくりなアバターらしきもの、ゲームのデーターかバクかと適当に忘れていたけど先日の一見で思いだし、柊さんにそのことを尋ねたが何も教えられないと突き放されていた一件だ。
「君の予想通りさ、あれ私だよ」
「やっぱりそうなのか」
「私も細かいことは知らないけれど、柊ちゃんに聞いたら君のアカウントと私のアカウント、登録IDがたった一桁を除いて全部同じなんだ。もしかしてそれでデーターが混同してあんな風に出たのかもね」
ひ、柊ちゃん・・・・・・よくそんな口聞けるなぁ・・・・・・
「その言い方だと、お前の方にもまさか」
「うん、出たよ君のアバター。というか君自身が」
「へ?」
「現実と姿が同じなのは正直驚いたけどね、初期の頃の私が言えたことじゃないけれど君も含めて式夜さんと千尋さん、今後のことも考えてキャラメイクぐらいはしといた方がいいよ」
「今後のこと? それって」
「ルイくん! 無事かぁぁ!?」
質問し終わる前にテストルームの扉が乱暴に開かれた。そこには着物が所々はだけて汗ばんだ式夜がいた。
「お前、なんでここに」
「なんでって・・・・・・そこの彼女に呼び出されたからさ」
式夜が指差す方にはマリアがいた。
「そう、呼び出したのは私。やっと来てくれたね」
「あんなメッセージをもらったら行かないわけにはな」
メッセージ? 一体どんなものなのか、
「おい式夜、お前どんな風に呼び出され・・・・・・」
「る、ルイくんだけには絶対に言えない」
式夜は頑なに口を閉ざしてしまった。
傍らでマリアがクスクス笑っている。
「式夜さんを呼び出したのは他でもないよ、折角だから挨拶がしたくてさ」
「まさか殺し合いとかじゃないよな?」
「ゲームのやり過ぎなんじゃない君?」
うぐっ・・・・・・だってさっきの流れだとどうなるか予想出来ちゃうじゃん?
「挨拶は挨拶だよ、しっかりとしたね」
マリアは一つ小さな咳払いをした?
「改めまして、プロゲーマーのお二方。私はマリア・メシア、此度の失礼とご無礼を心からお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした」
「「・・・・・・は?」」
急に変わったマリアの口調に俺も式夜も間抜けに驚くことしか出来なかった。




