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第二十七話 しがなくない訪問者⑦

秘策というか必殺技というか、確かにマリーの言う通り俺は隠し事をしている。けれど正直これが役に立つかどうかといわれたら・・・・・・ものすごく微妙な所だ。多分これバグだしなぁ・・・・・・

「ほらほら~カモンカモン~」

マリーは楽しそうに前後にステップを踏む。その動作はあたかも準備運動でもしているかのような。

「・・・・・・」

どうしたものか、こっちから仕掛けたら仕掛けたで一瞬にしてボコられそうだし、さっきみたいにあの強力な一線を避けれるかカウンターできるか、どちらも自信がない。

「こないの? それならこっちか・・・・・・らっ!!」

「っ!?」

今までとは比べ物にならない程の速度の一撃が放たれた。辛うじて体をずらすことは出来たが結果として左腕を一本持っていかれた。

「・・・・・・っがぁぁぁぁぁぁ!」

声にならない叫びと共に地面を蹴り、間合いを詰める。だが、

「甘いし遅い!」

剣が届く以前に蹴りでカウンターを決められ俺は派手に吹き飛んだ。

「・・・・・・マジか、よ」

最初程ではないにしろ今現在もコテンパにされてしまった。

勝てる気なんて毛頭浮かんでこず、俺は倒れ付した。

「えぇ~? まだ終わりじゃないでしょ、ほらはやく見せてよ秘策をさ」

「見せた所でお前が相手なら通じる気しねぇ・・・・・・」

「それならさ、ほら」

マリーは手に持っていた槍を乱雑に投げ捨てた。

「どういうつもりだよ」

「これで私はノーガード、ほら早く見せてよほらほらほら!」

随分となめられたものである。

「上、等だ・・・・・・コノヤロォォォォォ!!」

再び声にならない叫びを上げる。だがさっきとはその行動に明確な差があった。

力の限り、短剣をマリーに向けて投げつける。この状況で俺がとった行動は暴投に近い投擲スキルの発動だった。

「そんなもの、避ける意味すらないよ」

短剣はマリーの頭上を通りすぎていった。

「・・・・・・やっぱりこれバグだよな」

同時に俺の体はマリーの目の前から姿を消した。そして、

「あ、れ? どこに消え・・・・・・」

「上」

「え?」

マリーが間抜けに上を見上げる頃には勝負がついていた。

マリーの心臓部分に突き刺さった短剣。本来であれば何処か彼方に飛んでいったはずのそれはマリーの体を深々と貫いていた。

「こんなの・・・・・・あり?」

それを最後の言葉に、マリーのアバターは消え失せていた。

「それはこっちの台詞だ・・・・・・」

これでマリーは、もといマリアは約束通りログアウトしたのだろうか。

確認するために俺はログアウトすることにした。







「・・・・・・はぁ・・・・・・」

現実に戻ってくると俺は露骨にため息をついた。我ながら本当によく勝てたな、と。

マリーに使ったスキル・・・・・・らしきもの。

名称〈データー013〉というスキルらしきなにかがスキルウィンドウに表示されていたのを発見したのは千尋との戦いが終わって直ぐだった。

オフラインモードで試しに使ってみるとどうやらこれは投擲スキルによって投げられた武器に瞬間移動が出来るというものらしく、一度これを使えば確定で敵の背後をとることができるだけでなく、逃げるにも使える。けれどこれといったスキル名がついているわけでないし、敵の背後を確定でとることが出来るなんて最早チートに近いのでこのことは誰にも言わずにいたし誰にも使わなかった。

テストプレイヤーの身としては報告しなくてはいけないのに俺は報告しなかった。というよりも忘れていたのだ。その時点でマリアの話が丁度出始めたころで頭の片隅にいれることすら呆けていた。

「ってそうだ、マリア!」

自分のテストルームからあわてて抜け出しマリアのテストルームに向かう

テストルームに入るとベットに横たわっている白髪の少女がいた。ゆっくりと起きあがり、俺達がつかっているオーダーテスターとはまったく違うデザインのオーダーテスターを頭から取り外した。

「始め、まして。リアルで会うのは、初めてだよね」

弱々しい声で話しかけてきた少女。少し痩せ細っていた。

「私がマリア・メシア。よろしく」

それは、件の眠り姫マリアが目覚めた瞬間だった。






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