第十八話 しがない兄妹喧嘩①
「なんで、千尋お前。だって、ええ!?」
慌てふためくことしかできず、口もろくに回らない。予想の斜め上とかそういうレベルじゃなかった。
「別に、類さんには関係がないでしょう」
「なにぃ!?」
でたよ! 関係ない関係ないって! はいはいそうですかと納得出来るほど俺は優しくないぞ!
「千尋お前いい加減に・・・・・・!」
「まあ、いいじゃないかルイくん」
激昂しそうになった俺を宥めたのは誰でもない式夜だった。
「なんだよ式夜、俺にだって兄としての言い分が」
「私たちは、プロゲーマーだよな?」
「へ?」
なに言い出すんだ急に。そりゃもちろんプロゲーマーですけどそれとこれとは今なにも関係ないだろ。
「ならば、語り合うのは口じゃない。腕前でしっかりと示しを着けるといい」
「それはいいですね」
柊さんも賛同した。とても嫌な予感。
「プロの類さんと一般の千尋さん、しかもお二人はご兄妹と桜坂さんから聞いています。でしたらこの際オーダーテスターで兄妹喧嘩に蹴りを着けるというのはどうでしょうか。いいテスト結果にも繋がりますし」
それを言われてしまうとテストプレイさせてもらってるこちらからすればナニもいいかえせない。けれど・・・・・・
「俺千尋と勝負する気なんてないし、だいたい千尋はまだオーダーテスターをまともにプレイしたことだってないだろうからそれだと勝負はなりたたな・・・・・・」
「事前の操作法は大会に優勝したその日と次の日にみっちり習ってきましたのでご安心を」
ですよね! そんなことだろうと思ったよ!
「そうと決まれば準備が必要ですね、類さんはとりあえずご自身のテストルームへ。千尋さんは今から案内します。式夜さんは・・・・・・どうしますか?」
「私はこの際外から観戦するとしよう。頑張れよルイくん」
式夜に見送られテストルームへ戻る。
オーダーテスターを頭に装着する前に千尋へメールを一通送る。
『なんで教えてくれなかった? 兄さんはすごく心配したんだぞ』
メールの返事は予想外より早く返ってきた。
『何度も言いますが必要がないと判断したからです』
予想していた回答。こんな状況だからこそ俺はまた千尋にメールを送る。
『それでも俺はお前の兄さんだ。心配するなと言われようが邪険に扱われようが俺はお前が大切なんだよ』
どこかギザたらしくなってしまったが、これが今の俺の素直な気持ちなんだ。大切な妹を心配するななんて俺は兄として出来るわけがないんだ。
『大切な、なんなんですか?』
また直ぐにメールが返ってきた。
これに対する返事は決まっていた。
『世界で一番大切な妹だ』
これだけ伝えたらあの千尋だって多少なりとも・・・・・・
『そうですか』
うわぁ、凄い無関心。
『教えなかった理由は簡単です』
メールの最後には一言、
『ゲームも、兄さんも、私は邪魔だと思ってますしなによりも世界で一番大嫌いです』
結構心に来る内容。ここまで来ると千尋の兄嫌いも相当なようだ。
なら、俺に出来ることは一つだけだ。
メールの画面から電話の画面に切り替え千尋へ電話をする。
「・・・・・・なんですか」
「千尋、俺と勝負するならなんか賭けようぜ?」
「どういう意味ですか」
「例えば俺が勝ったらさ、また俺のこと・・・・・・」
「俺のこと、なんです?」
「兄さん、って呼んでくれよ」
「・・・・・・!」
数秒の静寂。
「わかり、ました。なら私が勝ったら・・・・・・」
「勝ったら?」
「プロゲーマーをやめてもらいます」
「へ?」
この瞬間から、俺が兄でいるためとプロゲーマーで居続けるための戦いが始まったのだ。




