第十二話 しがない宿泊③
メインルームにログインが完了し、特に意味もなく回りを見渡す。
メインルームはクエスト開始前の個人部屋であり、部屋事態自分好みにカスタマイズもできるのだがテストプレイヤーである俺にはそんなことをする必要ない。そもそもフルダイブをすること自体まだたったの二回目でこの世界がどういうものなのかを理解しきっていないのに自分の部屋を飾り付けること余裕がないのだ。
「そういえば、今回は大丈夫だったな・・・・・・」
初めてログインした際に見えた白い少女のようなもの、あのときは式夜のオーダーテスターを使っていたからかどうかは分からないがまあそれでも怖いものは怖い。プレイする度に幽霊が写るゲームとか本当に冗談じゃない。
「ふぅ・・・・・・堪能した・・・・・・」
着替えてくるからと遅れて式夜がログインしてきた。
「お、来た。意外と遅かったな」
「あぁ、少し時間がかかってしまったが。さてルイくん、まずはどうしようか」
「とりあえずクエストかなんか受けて・・・・・・ってちょいまて式夜」
「? どうした」
全く疑問に感じなかったがよくよく考えたらこの状況おかしくないか。
「何でお前個室になっているはずのメインルームに平然といるわけ?」
「そんなことか。フレンドの交換が済んでいるプレイヤー同士なら自身のメインルームに招待ができる。その逆もしかりでな」
「でも俺お前とフレンド交換とかまだしてない気が・・・・・・」
「君、私のオーダーテスターを使ってテストプレイしたのを忘れたのか?」
「あー、納得した」
一回目のテストプレイの時点で俺のオーダーテスターは致命的な故障があったらしく、それが原因で俺は式夜からオーダーテスターを借りるはめになった。
その際アカウントも式夜のオーダーテスターに作ったのだが、そのアカウントはもう俺のオーダーテスターに移行されている。
元々式夜の所にあったアカウントだ。移行されるまでの間のこの一日半でフレンド交換済ませる時間は十分ある。
「まあ、そんなことはいい。オフラインモードのクエストで戦闘訓練というものがある。今はそれをやろうそれがいい」
「別に構わないけどさ・・・・・・クエストってそもそもどこで受けるんだよ」
最初のテストプレイの時はいきなり戦闘フィールドに転送されたから特にそういうことは教えてもらっていない。
「それなら簡単だ、メインルームにはターミナルというものがあってそこでクエストの受注ができる。ちなみに入手したアイテムの整理もターミナルで可能だ。序盤の内はターミナルの使い方をしっかり理解することが重要だぞ」
「さすがにそれくらいは知ってるよ。それにしてもお前の装備・・・・・・」
式夜の装備品は俺の村人の服に簡単なアーマー、という如何にも初期装備な見た目とはちがいそれなりに冒険者らしい装備になっていた。
「それは当然さ、一昨日は家に帰ってからずっとログインしてレベル上げと装備品の獲得をしていたからな」
「ですよねー・・・・・・」
やっぱり早くも差が生まれている。このゲームに対する馴れ、流石はアルティメットゲーマーと納得せざるおえない。
「さて、クエストの受注は済んだ、あと一分もしないうちに転送が始まる。準備はいいかルイくん」
「いつでもOK。ちなみにクエストの内容は?」
「対人戦闘になれる、というものだ。君は私を倒したがっていたからな、丁度いいだろ」
「へぇ・・・・・・そりゃ気遣いご苦労様。でもいいのか? いくらアルティメットゲーマーのお前だからといってリアルは女子。現実での能力が反映されるこの世界で男の俺に勝てるか?」
「そういうと思ったからレベル上げをしてあるんだ。むしろ丁度いいハンデさ」
「言ってくれるじゃねぇか・・・・・・!」
数分前の甘ったらしい空気はどこへいったのか。今俺と式夜の間に流れている空気は針積めていて、それこそ今から殺し合いが始まるのではないかというくらいだった。