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第十話 しがない宿泊①

時刻は夜中の十二時を過ぎた頃俺は何故か山中の旅館にいた。式夜とのデートから、あの熱烈な告白から数時間。

あの後式夜はバスの時間があると言って意外にもそそくさと帰ってしまった。

取り残された俺は俺で顔を真っ赤にさせたまま自宅へ戻った。千尋に何を言われるかわかったものではないと怯えながら家の中に入ると藻抜けの空だった。

リビングには母さんか千尋のどちらかが作ったであろう夕食。そして一枚のメモ。

そこには一言、「旅にでます」とだけ記されていた。どういうことなのかわざわざ電話して問うのもあれなのでメモに追記で「行ってらっしゃい」とふざけ半分で書いておいた。

夕食を済まし、自室に戻った時丁度柊さんから電話が届く。

なんでもオーダーテスターの修理が終わったから取りに来てほしいとのこと。

郵送してもらうという手もあったがそんなことしていたら式夜と更に差がついてしまうと俺はわざわざ電車とバスを乗り継いで山道登ってメシア日本支部に訪れていた。

柊さんからオーダーテスターを受け取った俺は帰ろうにもバスが無いことに気付き柊さんに相談したところ、

「それなら近くの宿泊施設に案内しますから今日はもうそこでお休みになられてはどうでしょうか?」

そして俺は柊さんの紹介にあった場所へ徒歩で向かっていたらこんな時間になってしまった。

「(おぉ、あれか・・・・・・)」

前にメシアへ行く際に見えた武家屋敷のよつな建築物、ここがどうやら宿泊施設だったようだ。

「ようこそ、九条様ですね。柊様から話は聞いておりますのでどうぞこちらへ」

そして、今に至る。

「学校どうしよう・・・・・・」

女将に案内された旅館の一室で俺は明日のことを考えていた。やっぱり郵送してもらえば善かったかも・・・・・・このままでは明日の、正しくは今日の学校に余裕で遅刻することになる。

「失礼します、九条様。今お時間宜しいでしょうか・・・・・・え?」

「あぁ、はい。なんです・・・・・・か?」

出迎えてもらったときより随分と若くてかわいい声だなと思ったら、

「ル、ルイくん! なぜ君がここに!?」

つい数時間ぶり。初めて会ったときと同じような着物を着た式夜がそこにはいた。

「お前こそ、なんでこんなところに?」

「なんでもなにも、ここが私の家だからだ」

「マジでか・・・・・・」

なるほど、旅館の娘だから着物着てたのか。というかメシアの日本支部の前に住んでるとかそれこそすごい偶然じゃないのだろうか

「その、ルイくん・・・・・・なんだ・・・・・・」

「お、おう」

お互いがお互い、つい数時間前あんなことがあったから目が合わせずらかった。

というか最終的に「攻略してみせる!」なんて自信漫々に言っていたわりには、

「・・・・・・・・・・・・」

なんか恥ずかしがってるよな。気持ちはわからなくもない、俺も今けっこう恥ずかしい。

「あのー、式夜?」

「ひ、ひゃい!」

たった一言の返事すら噛むほど式夜は慌てている。

「大丈夫か」

「大丈夫だ、問題ない」

それ大丈夫じゃないときに使う代名詞なんだが。まだここで死ぬわけでもないだろうに。

「まあ、そのなんださっきまでのことはそんな深く気にしなくても・・・・・・なんだっけ、確か攻略がどうのこうの・・・・・・」

「ルイくん! そ、そんなことより」

更に慌てふためいた式夜は俺の言葉を遮り、

「ゲームしよう! うん。それがいい!」

また何処からか小型のゲーム機を取り出した。

「別にいいけど、俺に用事があってここに来たんじゃ?」

「はっ! そうだった。ル、ルイくん・・・・・・」

式夜は何かを言いかけて口を摘むんでしまった。

「なんか、いいずらいことなのか?」

「お、」

「お?」

「お風呂の、準備が、出来ておりますので、ご利用なさいますか?」

言いきったとばかり顔を伏せてしまう。

そんなにも言うのが恥ずかしいことなのだろうか。

「当旅館では、お背中を流すサービスがありまして・・・・・・」

「へ?」

それはあれか、まさか一緒にお風呂に入れると、そういうことでございますでしょうか?

「どう、なさいますか?」

上目でこちらを見てくる式夜、そんな彼女に対する俺の返事は、

「もちろんよろしくお願いします!」

親指をグッと立ててOKするに決まっていた。

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