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雨の日の喫茶店で  作者: 遅々 nakako
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プロローグ

 俺 山形 天馬は大きくなっても何も変わらないまま成長していくと思っていた。

 しかし、現実はそんなことはなかった。変化しないものなんてない。そう気づいたのは中学3年の頃、俺はそれを認識することが周りより遅かった。

完全に気づいた……いや気づかされたのは3年のころだったが違和感を感じたのは中学1年の頃だった。

 小学校の時は、一緒に遊んでいた友達が俺から離れていくのを感じた。趣味も違うクラスも違えども仲良くしていたやつらが俺の前から1人1人と去っていた。理由は至ってシンプルなものだ。彼らにも付き合わなければならない者たちが出来たのだ。彼らも中学に入ればクラブに入る。そこでそれ相応の付き合いが必要になってきたのだろう。

俺はそれに気づかずに、自分が避けられていると勘違いして俺も彼らを避けることにした。

その時は軽い仕返しのようなものだったのだが。今考えてみれば愚行だった。勝手に勘違いをして勝手に行動を起こしていたのだから。

 俺のそんな態度を読み取ったのか、彼らも俺を避けるようになった。

そして、俺の周りから友人はいなくなった。俺はそのことに中学1年~2年の2年間に気付くことはなかった。俺は……3年の時に自分の周りに友人が完全にいなくなったことに気が付いた。気づいた時には遅かったが……。

 まだ、その時は楽観的に考えることが出来ていた。

高校生になれば同級生のいない高校に進学して友達関係なんてものは修復出来ると思っていたが俺の学力は高くはなく。地元の同級生が大量に通う高校に進学することになった。

そんなところでは、俺が人を避けるという噂は瞬く間に蔓延するわけで友達関係を修復…いや作り変えることは不可能だった。

友人もいない俺が打ち込んだのはバイトだった。幸いにも俺が通学していた学校は生徒の自主性を尊重するという理由でバイトをすることを許可していた。


 しかし……バイトにありつくまで大変だったことも事実だ。

このご時世大体の高校がバイトを禁止しているため。それに合わせてか高校生のバイトを起用している企業は少なかった。

大手企業のほとんどは高校生を募集しておらず……僅かながらに募集している大手企業もあったが、流石大手と言うべきか時給も1000円とそこそこ良く、競争率は高かった。

俺も応募してみたが落とされてしまった。

面接の時に緊張が高まってろれつが回らず自分でも何をいっているかちんぷんかんぷんだった。

面接官は失望の色を顔にうかがわせて俺の面接は終了した。

友人がいないことの寂しさを紛らわせるために俺はなんとしてでもバイトがしたかった。

町の中を駆けずり回って高校生募集の張り紙を探した。ネットで検索しまくって地元のバイト募集を探した。結果的にネットで見つかることはなった。

しかし、町の中を駆けずり回った成果は得ることが出来た。

俺は、ある喫茶店でバイト出来ることになった。ネットで見つからなかったのは当然だった。個人経営の小さな喫茶店でネットとは無縁そうな30代の男性が経営していた。

俺はめでたくバイト出来ることになった。

 こうやって俺の周りの状況はめまぐるしく変わっていく。

それは、他人が行動して変化したこと。

俺自らが行動して変化したりと経緯は様々だが。変わらないものはない……。

これがこの世界の常識だ。


 ただ……ほんの少しだけだが変わらないものもある。それは状況や環境ではない。

好みだ。俺の中で変わっていないものといえば季節や天気についてだろう。昔から、雨と梅雨は大好きだ。他人はそんな俺の話を聞くと天気も悪くてじめじめしていて何が嬉しいの? と頭の中に大量のクエスチョンマークを浮かべる。

 しかし、それは個人の感性の違いだと俺は考える。晴れの日をいい天気だと感じる人もいれば雨の日をいい天気だと感じる人もいるだろう。晴れの日が良い天気だと思う人間が圧倒的に多いのは固定概念だろう。

昔から晴れは良い天気そう周りから聞かされていたからそう感じてしまうのだ。

 俺は周りからは天気の好み以外は何もかもが変わってしまっていったように感じる。

両親だって俺が年齢を重ねるたびに歳をとっていき雰囲気もどことなく変わってしまった。

つまるところ、誰だって多くのことを変化させて成長していっているのだろう。

 

 「くん…… くん…… 山形くん!」

誰かの俺を呼ぶ声で一気に現実へと意識が帰還する。

「あ、店長。何か用ですか?」俺の名前を呼んでいたのは高校初期から今もお世話になっている喫茶店のぶしょうひげを生やした店長だった。ちなみに店長の本名は、瑞穂 たけし(みずほ)だ

「用ってわけじゃないんだけどね そろそろお昼時だから忙しくなるから気を引き締めてねって言いたかっただけだから」

「了解です」店長の言葉を素直に受け取っておく。

喫茶店の壁にかかっている時計を見ると時刻は11時半。

店長の言う通りお昼時に近づいていっている。

俺は気合いを入れるために体を伸ばしておく。

 ゴキッ、背中の辺りから嫌な音が鳴る。直後のチクリと少しの痛みが襲ってくる。体が硬いのに無理に伸ばしたのが原因だろうか?痛みに悶えている俺を横目に店長は客にコーヒーを出しながら口をひらく。「学生じゃないんだから無理したらダメだよ」

「学生じゃないですけど、まだ24ですからね。」俺は大学卒業とともにこの喫茶店に正規雇用してもらった。就職活動がうまくいってなかった俺に店長から救いの手が差し伸べられた。

店長曰く、高校初期から働いているので店の勝手が分かっていて即戦力になるから、だそうだ。

給料もそこそこ貰えてるし特に現状に不満はない。


 「あらまあ、雨が降ってきたわね」店内の客の一人の中年の女性が頬に手をあてて困ったような表情を浮かべる。その女性が言った通り、ポツリポツリと雨が空から降り注いできた。

お店を開店した7時ごろは、快晴だったのだが。「やだねえ 傘持ってきてないのよ」

俺はその言葉をきっかけに店の奥に入っていく。傘立てから1本のビニール傘を取ってカウンターに戻る。

「ああ、そういうことね」店長も納得してくれたようだ。俺はカウンターから出て傘を持ってきていないと言っていた客に近づいていく。「どうぞ、傘です。持っていないようでしたので」少し女性は呆けた表情をしていたが、素直に傘を受け取ってくれた。「返さなくてもいいんでそれ」そういって俺はカウンターに戻っていく。

こうやってリピーターを獲得していくのだ。彼女は俺に返さなくていいと言われたものの何か申し訳なくなり傘を返却しに来るはずだ。しかし、彼女は返却するだけは……と気を遣いこの店でコーヒーを頼む!はずだ。

 まあ、俺の勝手な妄想なのだが。ただ、それで何人か常連になってくれたお客さんはいる。


 傘を渡したお客さんが会計を済ませて帰っていてから数分。

時刻は12時ごろいつもはほぼ全席埋まっている席も半分も埋まっていない。

要因はお昼前から降り始めた雨だろう。時間が経つにつれて雨足はどんどん強まっていく。

横にいつ店長は雨が嫌いなのか、テンションが低くなっていっている気がする。しかし、それに対して俺のテンションは上がっていく一方である。

カラカラと店の扉につけられた鈴が音をあげる。お客さんが来店した合図だ。

「いらっしゃいませ~」挨拶をしながら、来店者の顔を確認する。

常連であればあまり緊張せずに対応できるのだが……


 俺は来客してきた客の顔を見て心の中で嘆息をつく。


 喫茶店にきたのに何も飲み食いせずに帰っていく変な客だ。

次回も出来るだけ早めに投稿したいです。

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