第3話【小さな魔法使い】Bパート
その村には、
見覚えがあった…。
藁や木で
作られた、多くの家に…
村を囲む、
森と呼ばれるたくさんの木…
―――――――――――
その光景を見て
コボルトであるはずの
ポチの両目に
涙があふれていた…。
ポチ
「不思議なものだな…
父さんと夢を
語った、
この場所が…
今のオレにとっての
夢になるなんて…」
―――――――――――
その村の大地に
膝を
抱えて
座り込み
過ぎさった
思い出にひたっていると
そこに…
???
「素敵な村・・・
ここがポチの
夢の場所なんだね…。」
肩までかかるくらいの
薄い桜色がほのかに
混ざった白髪の
少女が…
いつの間にか
ポチの前に立っていた…
―――――――――――
そして・・・
「でも…」…と、
水色の羽衣
を着た、その少女は…
さらに…
―――――――――――
少女
「でもポチには、
フワリと一緒に
未来に夢をみてほしい…
だから…だからね、ポチ
フワリと一緒に
ポチの村を・・・
新しい番犬族の村を
作っていこう・・・ね?
フワリがんばるから!」
―――――――――――
頭のうしろに青い大きな
リボンをつけた、
その小さな少女は、
そう言って…
ポチに左手を差し伸ばす
―――――――――――
その少女が誰なのか…
ポチは、知らない・・・
ポチ
(知らないはずなのに・・何だ?
押しつぶされそうに
なるほど、胸が・・・
痛い・・・)
切なくて、悲しい…
誰かの面影が…
一瞬、その少女と
重なり
ポチ
(そうだ…昔、誰かに
こんなふうに手を
差し伸べられて、
オレは・・・)
そこで、差し伸ばされた
手を取ろうと
右手を伸ばした時・・・
そこで…ポチの夢が、
途切れてしまった…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
目が覚めて、
外は、夜・・・
電気の光が照らす
真っ白な部屋の中で…
ベッドの上に寝ていた
自分の上に、
かけてあった布団を
起きる身体の上半身と
一緒に上げると・・・
ポチは、なぜかそこで
何者かの気配を感じた…
ポチ
(間違いない・・・
誰かがオレを
狙っている…)
そして、次の瞬間!!
何者かが!?
「ポチー!
めがさ*****」
ポチの身体を狙って、
飛び込んできた!!
ポチ
(フライングボディプレスだと!)
そのプロレス技に
対抗するために…
飛びかかってくる、
その何者かに向けて…
右拳を
放ち!!
その小さな影は、
「きゃん!」…と、いう
叫び声と共に
後方へ
吹き飛ばされた!!
―――――――――――
しかし・・・ポチは、
自分の右拳にぶつかった
何者かの
感触が
(むにゅん、としていた)
ものだから…
「まさか!」
ポチを
襲った者が、
吹き飛ばされた方向へ
目を向けると・・・
そこには…小さな少女が
横になって、
倒れていた・・・。
ポチ
「子供・・・という事は、つまり・・・」
ポチの頭に幼児虐待という
言葉がよぎる・・・。
ポチ
「いかん!早く
救急車を呼ばないと・・・」
…と、ポチがベッドから
離れようとした時・・・
―――――――――――
少女
「いきなり、ぱんちは、
ひどいよ。ポチ・・・」
黄緑色の服と同じ色の
スカートをはいた少女が
何事もなかったかの
ように起き上がり・・・
―――――――――――
それを見たポチが、まだ
ベッドの上に
座ったままで…
ポチ
「いや…ゴメンゴメン。
てっきり
フライングボディプレスで…
飛びかかってきたものだと思ったから・・・
本当にゴメンね…」
…と、
両手をついて、
謝ると…
少女は・・・
「じゃあ、許したげる」
そう言って、
―――――――――――
それを聞いて…
「はや!」・・・と、
思わず口に出すポチに…
―――――――――――
少女は、
「だって、いつまでも
怒ったって、
しょうがないし・・・
それで、その、
ふらいんぐ・ぼでー
ぴゅれす…って、
なーに?」
・・・つまり、
フライングボディプレス
についての説明を
求めてきたので・・・
ポチ
「身体を使って、
相手に飛び込む
プロレス技の事さ…
つまり、
ボディアタックの
事だな・・・」
…と、
ポチが説明すると…
―――――――――――
少女が
「ぼ…ぼでーあたっく!
そそそんな、
だいたんな事フワリは、
しないよ!」
…と、
頬を
薄紅色
に染めて・・・
そんな顔の前を
広げた両手で、
ブンブン
横に振りながら
驚いた声を
あげるので
ポチは・・・
「???どうして、
そんなに驚いた声を
あげてるんだ?」…と、
尋ねると…
少女は、
両手の人差し指の
指先同士を
くっつけながら
「だって、
少女マンガとかで
見てるけど・・・
しゅ…しゅごいんだもん
アレ・・・」
そのあとは、
ゴニョゴニョとしか
言わないので
ベッドの上で、ポチは、
(最近の少女マンガって
プロレス技が
出てくるのか?)
それは、確かにすごいと
感心するのだった・・。
―――――――――――
そして、一時間後・・・
ポチが、布団を出て、
その女の子の部屋の
テーブルの前に
正座
していると…
―――――――――――
一度、部屋を出て…
他の場所に行っていた、
女の子が、
少し温めた
ミルクを入れた
マグカップと、お皿を
乗せたお盆を
両手に持って、
部屋の中に入ってきて…
―――――――――――
ミルクを入れたお皿は、
ポチの前に…
―――――――――――
マグカップは、
自分のところに
それぞれ置いて・・・
ポチの向かいに正座した
―――――――――――
そこで、ポチは、
正座したその少女が
コボルトである自分が
飲みやすいように・・・
わざわざミルクを、
お皿に入れてくれた事に
気がつき
ポチ
「そういえば、なんで
君は、
オレの名前とかの事を
いろいろ
知ってるんだ?」
その事について尋ねると
薄い桜色がほんのり
混ざった白髪が、
肩まで
とどくくらい長い
その少女は、
「それは、フワリが
魔法使いだからだよ。」
そう言うので、ポチは、
(やれやれ・・・
やっぱり、あれは、
ただの夢だったか…。)
ハァッ…と、
ため息を吐くと・・・
頭のうしろに青く大きい
リボンをつけた
そのフワリという少女は
「むううっ・・・
信じてないなポチ…」
…と、
頬を
膨らませるので
白いジャージを着た
ポチは、
「あっ・・いや・・・
信じてるさ・・・」
そう言いながら、
頭の中では…
(最近、魔法のおもちゃも進化してきて、
見た目からは・・・
本当に魔法を使ってるようにも、思えるからな…)
そんな事を
思っていたせいか
少女に
「むむむっ、
やっぱり信じてない」
…と、
見やぶられてしまい・・
それから、少女は、
「よおし!
じゃあ、信じさせたげ…
・・・あり?」
そこまで言って、
黙ってしまったので
―――――――――――
それを、
テーブルの向かいから
見ていたポチが
「どうした?」
…と、
同じように正座していた
少女に聞くと…
少女は・・・
「フワリ、まだ説明とか
ヘタで、上手く
言えないから・・・
そうだ!
いっしょに公園に行こう
ポチ!」
思いつきなのか・・
突然そんな事を
行ってきたので
ポチが・・・
「本当、いきなりだな」
そう言うと、
黄緑色の服と同じ色の
スカートをはいた
その小さな少女は、
様子を
うかがうように
ポチを見てから…
「ごめんなさい・・・
でも、フワリのお友達に
そういう説明が
得意な子がいて、
ついでにポチに
その子を紹介できて、
いっせきにちょ〜だし…
だから公園なら、
その子とポチを
合わせるのに、
ちょうどいいと
思ったの…」
そう言うので、
ポチは、テーブルの前で
正座しながら…
「公園に行くのは、
いいが・・・
その子の予定とかは、
大丈夫なのか?」
…と、
少女に話すと、
その少女は・・・
「うん。だいじょーぶ、
だいじょーぶ。」
…と、言ったあと・・・
立ちあがって、
少女
「行こ。ポチ。」
そう言いながら、ポチに
左手を差し伸ばすので…
ポチは、右手で
その少女の
左手を取りながら
立ち上がり、頭の中で、
(ひょっとして、もう
連絡をとって
いるのか?)
そんな事を思いながら、
紅い目をした、
その少女のあとに
続いて・・・
少女の部屋を
出るのだった→
それから・・・
出会った少女の
部屋を出たポチは、
少女の家の一階へ降りて
玄関の
ドアから外へ出ると、
その女の子と一緒に
―――――――――――
少女が言う
公園みたいなところに
向かって歩いていた→
それから、ポチは、少女に…
「フワリはね・・・
雪音=フワリって、
いう名前なんだよ。」
…と、
少女の名前を
教えてもらい…
ポチ
「ふわり・・って、
どう書くんだ?」
…と、
ポチが、その少女の
名前について
尋ねると…
少女から
「カタカナでフワリって
書くんだよ。」
…と、
説明をうけたので、
歩きながら…ポチは、
「ジパング人なのに
漢字の
名前じゃないのか?
けしからんな、
それは!」
カタカナの
名前だった事に
怒ってみると…
ポチの右隣を
白い靴で
歩いていた…
フワリという、
その少女が
「フワリの名づけ親を
悪く言っちゃダメだよ。
ポチ」
そう言って、チラリと
ポチの方を見上げるので
白いスニーカーで
歩いていたポチは、
一瞬、フワリの方を見て
「あっ、いや…ゴメン」
フワリに謝って、
再び前に視線を戻すと、
モミアゲと呼ばれる
耳の前の髪が
肩までとどくぐらい長い
フワリが、
「じゃあ、許したげる」
そう言うので…
ポチは、
そんなフワリに
「なあ、フワリの家には
親がいないのか?」
悪いとは、思いながらも
気になっていた事を
聞くと…
フワリは、前を見ながら
「うん。フワリは、なぜか
お父さんやお母さんが
いないらしくて…
おじいさんと、
おばあさんに育てて
もらったの…。
けど、おばあさんは、
フワリが三歳のころに
死んじゃって…
おじいさんも一年前に」
―――――――――――
少しだけ、暗い影を
落とした表情をする
フワリに…ポチは、
「そうか…すまないな。
デリカシーとかなくて」
…と、
歩きながら…謝ると、
その隣を歩くフワリは、
「ううん」…と、
ブンブン首を横にふり
そのあと、歩きながらも
ポチの方を見上げて
「だからね・・・
フワリは、
ポチに会うのを
とっても、とおっても、
楽しみにしてたんだよ」
―――――――――――
「とおっても、」と、
言うところにだけ
一瞬
両手を広げて…
そのあと、
うしろに両手を組んで
歩きながら、
ポチを見上げる・・・。
その紅いクリクリした
両目に見つめらながらも
ポチは、
そういえば…と、今、
自分が置かれた立場を
冷静になって、考え…
ポチ
「なあ、それでオレは、
どうすれば
良いんだろう?」
そんな事を歩きながら、
言うので、フワリは、
不思議そうな顔で
「えっ?
このままフワリと
暮らせば…」…と
言うと、
白いジャージを着た
ポチは、
「捕まるだろ
普通・・・」
ポチ
(何も知らない人から
見れば・・・
赤頭巾の
家に
狼が
住んでいるように
思われても、
しかたないもんな…)
このままいけば、
警察の
逮捕の
対象に
なる事を告げて、
さらに・・・
ポチ
「それに…このまま、
うまく二人で生活
できたとしても…
お金は・・・ん?」
そこでポチは、
(そうだ!?この子・・
生活費は
どうしてたんだ・・・)
その事に気がついて・・
歩きながら、フワリに
「なあ、フワリは、
今までどんな生活を
していたんだ?」
…と、
聞いてみると、フワリは
「今、言っても
いいんだけど・・・ほら
公園が見えてきたから、
あの子にまかせるよ。」
両手をうしろに
組んだまま…
エヘヘッと、ポチを
見上げながら
笑いかけてくるので…
ポチは、そんなフワリと
一緒に歩きながら
(また、あの子か・・・
どんな子なんだろう…)
そんな事を考えつつ…
公園らしきところの中へ
足を踏みいれるのだった
・→・→・→・→・→
月の青い光が、
夜空を照らす中…
公園にいた
ポチとフワリは、
その光が一番強い場所で
立っていた・・・。
―――――――――――
ポチは、まわりを
キョロキョロと
見渡したあと
「それで、フワリが
言っていた子って、
一体どこにいるんだ?」
…と、
自分の前にいるフワリに
聞いてみると、
フワリは・・・
「ちょっと待っててね。
今、呼び出すから…」
そう言って、目を閉じる
それを見て、ポチが
「おい・・・」…と、
声をかけようとした時、
―――――――――――
ポチの3メートルくらい
前に立って、
目を閉じたフワリが、
「鈴鹿ちゃん」…と、
誰かの名前を呼ぶ。
すると、どうだろう・・
ヒュウウウゥー…と、
フワリの前に風が吹き…
風に吹かれてゆれる
白い髪が毛先から
徐々《じょじょ》に
青く輝く
黒髪へと変化していく…
そして、紅い色から
紫色へ
変化した両目が
閉じていたところから、
ゆっくりと
開かれた時…
そのフワリであって、
フワリではない誰かが、
「応じたぞ。」
…と、
前に呼びかけたフワリに
答えて、
そのあと、ポチを見る。
それを見たポチが
「え?・・・」・・と、
かける言葉を
失っていると
その紫色の目をした
少女は、
「始めまして・・かの?
鈴鹿と申す。」
ほがらかな
フワリの声とは、
あきらかに違う…
透き通った声で
よろしくの・・・と、
ポチに言うのだった…。
【4話へ続く・・・】
―――次回予告――――
フワリの身体を
器にして突然
現れた
鈴鹿という
少女。
かつてジパングに
存在したといわれる、
天女が
語る
ムニモシュネーと
呼ばれる者の
宿命、とは…。
次回、第4話
【舞姫】
前世・・それは、
かつての人格と存在を
呼び戻す
秘密の
鍵音・・・