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第2話【現実と理想のはざまで】Bパート

…20年後・・・・・・

ここは、どこの洞窟どうくつだろうか?

その薄暗い場所の中で、幼い少女が一人立っていた…。

その足下には、小さな泉がみどり色の光を放っている…。

水色の羽衣を着た白い髪の少女は、岩で出来た地面にひざまづき…両手を使って目の前の泉の水をすくいとると…

その水に映る景色を紅い両目で見る…

そして両手ですくい上げた泉の水の中に映るもののは…1人のコボルトの顔だった…

???

「もうすぐ…もうすぐ迎えに行くよポチ…」

―――ジパング―――

ポチがいた国からはるか東にある国で弓のような形をしている小さな国で…陰陽術など独自の伝統魔術が多い国である…。

またこの国は弓の形になっている事で分かる通り…

私達が知る日本と違い…北海道や沖縄にあたるところもすべて陸続きとなっており…隣の国ともつながっていた…。

そのジパングの中にKYOTOと呼ばれる場所がある。

その中のマキノという街の裏通りにある特殊人対応刑務所の囚人しゅうじんの部屋の中にポチはいた

―――囚人部屋―――

中央に囲炉裏いろりのある昔話に出てきそうなサッパリとした部屋で…ポチは、正座をしながら何かを待っていた…

そう…あれからポチには、色んな事があった…。

ジパングに渡ってからのポチに待ち受けていたのは、過酷かこくな現実だった…

この国では、多くの人が外国人を受け入れているが…内心では、外国人がいる事を受け入れられない者もいる…

ましてコボルトの姿をしたポチが相手では…それが態度に出る事は、明らかだった…。

そのためにポチが生活をするために必要な仕事をさがそうと就職相談所に通っても…受け入れてくれる所がなかなか無く…

例え見つかったとしても…その日暮らしで精一杯せいいっぱいの低賃金《少ないお金の事》の仕事ばかりだった…

ポチ

(時にはホームレスとして生活していく事もあったなぁ…)

身長180センチに近い大人のコボルトとなったポチの頭に…思い出したくもない苦い思い出が浮かんでくる…

そんな白いジャージを着たポチの囚人部屋の扉が開き…

百七十センチくらいの髪の短い…この刑務所の看守が部屋の中に入って来たので…ポチは立ち上がって

ポチ

「古川さん」

その看守の名字を呼ぶと…その古川と呼ばれた男は

「まあ、座れや」

そう言ってポチをその場所に座らせて…

自分も囲炉裏をはさんだポチの向かいのところにあぐらをかくと…

ポチ

「・・・・・・」

古川

「・・・・・・」

それからポチと古川は…少しのあいだ沈黙していたが…古川が、

「なあポチ…

なぜ?詐欺犯さぎはんの一人にみついた…。

騙されたのはお前の知り合いであって、お前じゃないだろう…」

そう話しかけると…ポチは、

「騙された人の気持ちが分かるからですよ…。

夢や希望を逆手さかてにとられて騙されてしまったあの人の気持ち…俺には良くわかるから…」

古川

「お前…」

だから詐欺犯に連絡れんらくをとり…ポチの知り合いから手を退くようにせまったのだろう…

古川

(だがそれを聞いた詐欺犯は、逆ギレしてポチをおどそうとした…

だからポチは、そいつの右腕に噛みついた…と言う訳か…)

真実を知れば知るほど古川は、ポチに同情したくなったが…

「だがな…ポチ

この国は、どんなに腐った奴でも人権という厄介やっかいなものに守られているから…外国人の…

ましてや亜人種のお前が悪者にされてしまうのは、仕方の無い事なんだよ」

そう古川が言うと…ポチは、

「わかってますよ。」

…と、この二十年で覚えたジパングの言葉で寂しそうに話し…

それから囲炉裏をはさんで、自分と向かい合っている古川に

「それで何か他に用があるんですか?」

正座しながら他の事を聞いてみると…古川は

「ああ!そうそう…」

…と、この部屋に来た本来の理由を思い出して

「お前…今日からこの刑務所を出られるようになったぞ…」

そうポチに話すと…それを聞いたポチは、

「は?

な…なんでですか?」

いきなりこの囚人部屋を出ていいと言われたので…

どうしていいかわからずに戸惑とまどっていると…古川が

「ずいぶん前から…お前をここから出してほしいと頼んでいた人がいたらしくてな…

お前のために保釈金まで払ってくれたそうなんだ」

そのほかにも弁護士に頼んだり…いろいろとここからポチを出すために努力をしてくれたらしい…と言うことを話すと…ポチは、不思議そうに

「一体どんな人なんですか?」

古川に聞いてくるので…古川は

「オレもくわしくは知らんが…

担当者の話では、いつも子供に使いを頼んでいるらしい…」

「子供に?何故そんなまわりくどい事を…」

ポチがそう聞いても古川は…

「さあ、知らんよ。

まあすぐに出られるんだし…自分の目で確かめてくればいいだろ」

そう答えるばかりで…例えポチが

「看守が囚人にそんなにフランクで良いんですか」

そう話したとしても…古川は、

「かまわんさ…。

お前が真面目な性格なのは、良く分かってるしな」

そうかわして…立ち上がりながら

「さてと、そろそろここをでるぞ…。

いろいろ手続きが必要だから…お前は、あとから来いよ…」

そう言って、それに対して…ポチが、

「はい!

ありがとうございました!」

立ち上がってから頭を下げると、古川は

「あとで住所を渡すから…刑務所を出たらちゃんと保釈金を払った人のところに行って、お礼を言うんだぞ。」

ひたいの前に人差し指と中指を立てた右手をシュタッとかざして

「じゃあな…ポチ」

そう言って囚人部屋から去るのだった…

それから五時間後…

ポチは、刑務所を出る時にもらった住所を頼りに

ポチを刑務所から出してくれた人物の家へ向かっていた…

そして…とある場所の路地裏に差しかると…そこでポチは、ふと立ち止まって…右手で取った紙切れを見る…

「え〜と…ここを南に行ったところで…っと」

そう言ってから…また歩きはじめたポチの前に突然

「よう」

黒いスーツを着た170センチくらいの身長の男が立ちふさがる。

そして…髪を金髪に染めたその男にポチは見覚えがあった

「お前は…確か詐欺さぎグループの…」

ポチがそう言うとその男は、ニヤッと邪悪な笑みを浮かべて

「そうさ…テメエのせいで所属していた組織がつぶされ…そのあげくに右腕をまれたせいで、しばらく右腕が使えなくなった詐欺犯だよ。」

…と憎しみがこもった口調で話す。

それを聞いたポチは、あきれたように

「何を言うかと思えば…

右腕をケガしたのは、お前がおどそうとしたからだし…

詐欺グループなんてつぶれた方が世の中のためだろ。」

むしろその事をいつまでも根にもっているお前の考えがおかしいと…その男に話すと…

黒い靴をいたその元詐欺犯は

「うるせー!この偽善者ぎぜんしゃ!!」

…と、いきなり怒りだしてきたのでポチは

「やれやれ…まさか善行をかさねていないお前ごときが人…じゃないか…他の生き物を偽善者呼ばわりできるとはな…」

人を偽善者と呼べるのは、それ以上の善人だけだぞ

…と話すと…

ポチの3メートルくらい前にいる…その元詐欺犯は、「いちいちうるせーぞテメエ!!

殺すぞ!コノヤロー!」

…と叫ぶので、ポチはさらにあきれてしまい

「路地裏とはいえ…人が通る道のまん中で叫び声をあげるなんて…

ホントお前は自分の事しか考えていないおろか者だよな…

今度は、足にでも噛みついてやろうか?」

そう言ったあとコボルトである自分の口を開くと…

襟首えりくびにかかるくらい少し長い髪を金髪に染めた元詐欺犯は

「おう!やってみろやコラッ!!」

…とおどすような口調で言ってきたので、ポチは少し感心して

「へぇ〜

卑怯者ひきょうものの集団だと思っていた詐欺グループの一員に、まさか一対一の戦いを挑まれるとはね…

けどオレは白いジャージを着て動きやすいのに対して、君はスーツを着ていて動きにくいだろう…

一対一の勝負ならいつでも承けるから、ここは出直して来たら?」

先ほどとは違い…おだやかな口調でそう話す。

しかし元詐欺犯は、そこで…

「いや…その必要は、ないさ…」

ニヤッと、再び邪悪な笑みを見せると…

その様子を見てポチが、

「まさか!」

…と気づいた時には、すでにおそく…

後頭部に、ゴン!と金属製のバットらしきもので殴られたような衝撃が伝わるが…

それでもポチは、ほんの数秒だけふんばって

「ひ…ひきょう…も…の…」

…とそう言ったあとで…ドオッと前に倒れると…

うしろからバットでポチを倒した元詐欺犯の仲間が

「ふん。

卑怯者じゃない詐欺犯なんて存在する訳ねえだろう。」

バットを右手にもったままそうつぶやくと…元詐欺犯に

「やれ!甘次アマジ

オレがやられたみたいにそいつの右手も使いものにならなくしてやれ!」

そう言われて、アマジと呼ばれた長身の男は再び両手に持った金属バットを頭上に振り上げ

「だとよ!悪く思うなよコボルト」

そう言って、路地裏にうつせに倒れるポチの右腕に向かって振り下ろす。

…だがその途中で…

ガキイィィーン!!

「なにいぃー!!」

アマジが振り下ろしたはずのバットが突然何かによって止められていた

それは…

「バ…馬鹿な…孫の手だとぉ!」

小さな少女ポチの右腕をまたいで…自分の頭の上で

左手に持った孫の手でアマジのバットを受け止めた光景だった…

90センチくらいの小さなその少女は、頭にかぶったむぎワラ帽子ぼうしのツバの部分を

右手の人差し指の指先で、顔の前でクイッと上げて

「へっへーん♪正義の味方とおじょー」

麦ワラ帽子によって隠れていた紅い両目で、自分の倍以上の身長があるアマジを見上げていた

肩までとどくくらいの薄い桜色がかかった白い髪に…黄緑色の服と同色のスカートをはいたこの麦ワラ帽子の少女は、何者なのだろうか?

《つづく…》



――――次回予告―――


突如とつじょ

ポチを救いに現れた

おさない少女…

ポチを

日溜ひだまりの

ような

明るい場所へ導く

その少女は何者なのか?

―――――――――――

〜次回、第3話、

小さな魔法使い〜


物語は、

一気いっき

メルヘンに・・・


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