第1話【コボルトになった少年】Aパート
はるか宇宙の彼方にアクアマリンという海の星がある…
。
月と同じくらいの大きさのその星は、私達の地球と同じように人々が中心となって生活をしていた…。
その中の南西の国ジャンボ…
私達の世界でのアフリカのガーナに位置する…このジャンボという国の中に番犬族と呼ばれる狩猟民族の村がある…
。
――リカオンの村――
昔ながらの木造建築が並ぶこの家にココホレの家がある。
天井が3メートルくらいしかなく…周囲が10メートル四方しかないこの家に父親と子供が二人で生活していた…
。
父親の名前は、マテ。
百六十センチくらいの身長で…坊主と呼ばれる髪の無い頭をした男だ。
狩猟民族の衣装を着たこの男は、かつて貿易商人の付き人として世界中を旅していた…。
子供の名前はポチ。
父親と同じような坊主頭と衣装を着た身長約1メートルの父親を小さくしたような少年である…
。
そんなマテとポチは家の中で、木で出来たテーブルをはさんで向かい合いながら何やら話をしていた。
…
マテ
「そこで私は羆をあそこに掛けてある槍で倒し彼の危機を救ったんだ…」
。
自慢気に話す父に…ポチは両目を輝かせながら
…
「それで父さんとその人は友達になったんだね…」
。
そう話すとマテは、
「そうだ…」
…と遠くを見つめるような目で、過去の日々《ひび》を思い出しながら
…
「そのあと私と彼は、いろんな話しをしているうちに、すっかり意気投合して親交を深めたんだ…。
だが当時の私は貿易商人の付き人をしていたので…
取引が終われば商人達と一緒にその地を去らねばならなかった…」
。
テーブルの向かい側の席に座るポチに、そんなことを話すと
…
「でも手紙のやりとりは
今もしてるんでしょ。」
ぼく知ってるよ…と話すポチにマテは
、
「そうだな…」
…と、うなづいたあと
…
「彼と別れる時に住所が書かれた小さな紙をもらってな…
あの時は、世界中を旅していたから、どうしようと思ったが…この村に定住した事で、彼と手紙のやりとりが出来るようになったんだ…」
。
そう言って、それを聞いたポチが、
「そうかあ…
いいなあ…ぼくもいつかジパングに行ってみたいなあ…」
。
まだ見ぬ東洋の国の事を想像していると…
突然テーブルの向かいの方に座っていたマテが
…
「行ってみたいか?」
…と突然ポチに聞いてきたので
…
「うん。行く行く!」
…とポチが元気良く返事をすると…マテは、
「そうか…」
…と席から立ち上がってから家の隅の方まで行って…
藁の下に隠していたジパング行きの船に乗るために必要な二枚の券と…
一緒に置いてあった数枚の写真を右手に取って、持って来ると…
それらをテーブルの上に置いてから席に座ったので…
テーブルに置かれたその数枚の写真をポチが、
「わあー…」
…と両手を使って一枚一枚眺めると…
どの写真にもマテと先ほど話に出てきたジパング人が写っていた…。
そして向かいの席で写真を眺めるポチを見ながらマテが
…
「何もかもが懐しい思い出だ…」
。
つぶやくと…突然!外の方から
、
「ギャアアアー!」
…という悲鳴が聞こえてきたので…ポチが、
「父さん…」
心配そうに声をかけると…マテは、
「大丈夫だ…」
なだめるようにポチに声をかけてから…スッと、席から立ち上がってから…
先ほどの航海するための券や数枚の写真が置いてあった場所の方まで行くと
…
そこにかけてある先端にとがった黒曜石がついた木製の槍を右手に持ってから…ポチに
、
「お前は、ここにいろ」
…と声をかけて、家の外に出るのだった
。
《つづく…》