第5話【学校までの道〜】Bパート
太陽が照らす歩道の上を
白いジャージを
着たまま歩く、
コボルトのポチが、
―――――――――――
白いワンピースのような
ものを来て
銀髪の頭の左側を
青いリボンで
結んだ少女
シルフィと一緒に
歩いていた・・・。
―――――――――――
ポチは・・・
40センチ四方の
木箱を両手に
抱えて、
先を歩く、シルフィに
―――――――――――
ポチ
「なあ、髪を
両側で
結んだものを
ツインテールって、
言うんだよな・・・。」
ポチが、そう言うので、
シルフィが、
「そうだけど…それが
どうかしたの?」
その事を
尋ねると、
ポチが
「いや・・・
シルフィみたいに
片側だけ
髪を結ぶのは、
なんて
言うんだろうな・・・と
思って…」
そう言うので、
シルフィは、
木箱を両手に持って、
歩きながら・・・
顔をあげて
「う〜ん。
なんて言うのかなあ?
ワンテール??」
…と、言うと
そこにポチが、
「テールは、
尻尾っていう
意味だろ。」
そう言ってくるので、
歩きながらシルフィが、
「そのようね・・・。」
…という返事をすると、
ポチが
「じゃあ、シルフィは、
左側をテールに
してるから・・・
ここは、男らしく
左しっぽと名づけよう」
勝手に、
そんな提案をするので…
―――――――――――
両手に木箱を抱えて歩く
シルフィは、
一度、立ち止まって、
「おい・・・」
・・・無表情な顔で、
―――――――――――
うしろで歩いている
ポチの方を見るのだった
―――――――――――
―――――――――――
道路の
歩道側で
180センチくらいある
白いジャージを着た
コボルトである
ポチの前を・・・
青く光る銀髪の
頭の左側を青いリボンで
結んで
テールの形にした
90センチくらいの少女が
木で出来た箱の下を両手で支えながら
青い靴で歩いていた
―――――――――――
しかし、もう、これで
何回目
だろうか・・・
ポチが、
その少女シルフィに、
―――――――――――
ポチ
「なあ、持とうか…」
…と、
声をかけたのは・・・
―――――――――――
半分近くある、
その木箱を
挟むようにして
抱えていた時とは、違い
今は、箱の下を両手で
支えているので、だいぶ
無理があるのだ…。
―――――――――――
ポチ
「第一、
その持ち方だと
前が見えないだろう。」
ポチが何度そう言っても
―――――――――――
シルフィ
「大丈夫よ・・・。
気配で、
人や自転車が来た時は、
分かるから・・・
まわりに迷惑は、
かけないわ。」
…シルフィがそう言って
聞かないので
もう、ポチは、頭の中で
(でも、もう、だいぶ、
息があがっているぞ…)
今、見ている
シルフィの姿が
幻とはいえ
ポチから見れば、
大きな箱を持って
歩いてる小さな
女の子なので
思わずポチは、
「目的地ってあと、
どれくらいなんだ?」
・・・と聞かずには、
いられなかった。
すると、シルフィから…
「もう、そろそろ、
見えても良いはずよ。
ヘルメス学院ヒノモト校が…」
…と、告げられて、
さらに先に進むと…
やがて…ポチの目に
白黒ながら
ヘルメス学院が
見え始めた・・・→
―――ヘルメス学院――
そこは・・・
とても広い場所だった…
学院の門から入った
ポチが
「遊園地より
広いんじゃないか?」
…と言ってしまうほどに
そんなポチの言葉に…
木箱を持ちながらも、
先を歩く…シルフィは、
―――――――――――
「当たり前よ。
ここには、
生徒に対しての
年齢制限がないから・・・
子供の生徒だけじゃなく
大人の生徒もたくさんいる…
それに、あなたみたいな
ヒューマン《人間の事》
じゃない人も少数ながら
いるみたいよ。」
―――――――――――
そう話すので
それを聞いたポチが
「そうなのか?」
・・・と、
言いながらも頭の中で…
―――――――――――
ポチ
(オレみたいに悪魔に
呪いをかけられた
人間が、他にも
いるって事か?
いや・・・もともと、
そういう人間もいたって
うわさもあるしな…)
そんな事を
考えているうちに・・・
いつの間にか
立ち止まっていたらしく
―――――――――――
箱を持って
先を歩いていた
シルフィが顔を
ポチの方に
向けようとしながら
―――――――――――
「こらこら、そこ!
立ち止まってないで
さっさと行く!」
そう言うと、
それを見ていたポチから
―――――――――――
ポチ
「おい…足元…」
そう言われても
気付いた時には
すでに遅く…
木箱の下を両手で
支えながら
歩いていたシルフィは、
地面に埋まっていた石に…
右足に履いていた
方の青い靴のつま先が、
ぶつかって、
「きゃあっ。」
スッテーン!と前の方に
転んでしまった
そのせいで、中に
妖精型
のホムンクルスが
入っていた
40センチくらいの木箱は
さらに前の方に
投げ出され・・・
―――――――――――
シルフィは、
前の方に
両腕を
伸ばした・・・
漫画みたいな
見事な
痩けかたで
うつ伏せて
倒れてしまった
―――――――――――
ポチは
「大丈夫か!」
・・と、うつ伏せに倒れたシルフィに
駆け寄ろうとするが…
その途中で
―――――――――――
シルフィ
「来ないで!」
―――――――――――
…顔を上げたシルフィに
言われて、ポチが
立ち止まると・・・
―――――――――――
シルフィ
「一人で、立てるから」
・・・そう言われたので
ポチは、シルフィが
立ち上がるあいだに…
―――――――――――
ポチ
「分かった・・・。」
…投げ出されたせいで、
中から飛び出した妖精を
蓋の取れた
木箱の中に入れたあと
外れていた
蓋を、
また木箱の上に
被せてから…
また、その木箱を両手で
持つと・・・
衝撃を
与えた時に…
目を覚ました妖精が暴れた事で、
箱の中からドンドン!と
軽い衝撃と音がするので
ポチは、
「これは…
急いだ方が、
良いな・・・。
オレが持っていくから、
シルフィが、先行して
道案内
をしてくれ・・・。」
立ち上がった、
シルフィに向かって、
そう言うと・・
シルフィは、ポチに、
顔を見られないように…
さっさとポチの前を
歩きながら・・・
―――――――――――
シルフィ
「ゴメン・・・
そうしてくれる?」
―――――――――――
…普段{ふだん}と違って、消えいりそうな声で
そう答えるので・・・
―――――――――――
気になったポチは、
歩く速度を上げて…
―――――――――――
「どうした?」
木箱を両手に
抱えたまま、
チラッと、
シルフィの横顔を
見てみると・・・
―――――――――――
ポチ
「泣いてんのか?お前」
―――――――――――
涙を紫色の両目に、
溜めたシルフィの
横顔が見えたので、
そう言うと・・・
シルフィは、左腕で
両目をゴシゴシ
擦りながら…
―――――――――――
シルフィ
「泣いてなんかないわ。
これは・・・そう・・
汗よ!」
―――――――――――
そう言って、
トテトテ…と
逃げるように…
歩く速度をあげて、
またポチの前を歩くので
―――――――――――
ポチは、そのまま、
シルフィのうしろを
箱を持って、歩きながら
―――――――――――
ポチ
「なんで?そこまで
意地に
なるんだ?」
・・・と、
聞いてみると、
―――――――――――
シルフィ
「だってさ・・・
こんな荷物一つ運べないような
女が、風の精霊の
元になったって、
知ったら、みんな
ガッカリするじゃない?
だから・・・
精霊信仰とか、してる人達に
申し訳なくて」
―――――――――――
そのあと、
両肩を少しだけ
震わせながら
―――――――――――
シルフィ
「ああ!もぉー!
なんで、こう
不器用
なんだろ!
あたしは・・・」
―――――――――――
そう叫んで
一人で葛藤
していたので・・・
―――――――――――
歩きながら、その背中を
見ていたポチは、
「まあ、どんな人間だって、理想通りには、なかなかいかないものさ・・・。
だからさ・・・
急がないで、
着実に
一歩ずつさ・・・
理想に向かって
歩んで
いこうな・・・」
―――――――――――
すると、シルフィは、
また、両方の肩を
震わせながらも・・・
今度は、プッ…ククッと
笑って・・・
―――――――――――
シルフィ
「ぷはははは・・・
あんたも良く笑わないで、そんな恥ずかしい
セリフがいえるわね!」
―――――――――――
シルフィが、
うつ向きながら、笑っているのが、
背中から見えるので
ムッとしたポチは、
両手に木箱を
もちながらも
「し…仕方ないだろ!
言ってるオレも、
死ぬほど恥ずかしかった
んだよ!」
―――――――――――
シルフィの後方を
歩きながら、
恥ずかしそうに
そう言うと・・・
シルフィが
「あなたも、良くあたしに構うわよね…。
何で?」
その理由を聞いてくるので…
先を歩くシルフィの
背中を見ながらポチは、
―――――――――――
「あ・・いや・・・何だ、その・・・つまりだ。
シルフィのその考え方が
嫌いじゃないからさ…」
照れくさそうに、
そう話すと、
それを聞いたシルフィが
「素直に好きって言え」
前を歩きながらボソッと
そう呟いたの
だが…
ポチには、良く聞こえず
ポチが
「へっ?
何か言ったか?」
そう聞いても、
シルフィは、一度
「な!ななんでもないわ!そ…空耳
そう空耳よ。きっと!」
そう言って・・・
―――――――――――
それを聞いたポチも
「そうなのか?」
そう答えて、
その話は、
一度、終わったのだが…
少しすると・・・
歩きながらも、
そおっ…と、ポチのいる
後ろを見た
シルフィが
「ねぇ…聞こえた?」
また、そう言ってきたので…
ポチが、
少し揺れる
木箱を両手で
抱えながら…
「なぁ、ホントに
なんか言わなかったか?」―――――――――――
そう聞いては、
みたものの、シルフィは
「え…えっと…あの〜
その〜そう!風の音。
きっと!風の音よ!!」
プイッと前を向いて
歩きながら・・・
そう答えるので、
ポチは、
「そ…そうか!」
気のせいか・・・と、
シルフィと話を
していた時に
遅くなった
歩行速度を、また、
速めるのだった
→・→・→・→・→・→
それから、
目的の場所に向かって、
少し歩いていると・・・
ポチの前を歩いていた
シルフィが
「はぁ〜…良かったぁ。
今日は、生徒達に
会わずにすんだわ…。」
―――――――――――
急に、
そんな事を言ったので、
ポチは、
「生徒達と何か
あったのか?」…と、
聞いてみると、
シルフィは、
「何かあったって訳
じゃないけど・・・」
―――――――――――
そう言うと、そのあとで
両肩を震わせながら
―――――――――――
「だって、あの子達、
あたしの事を・・・
勝手に
ミャアちゃんとか、
タマちゃんとか
名付けたりして
猫扱い
するのよ・・・。
挙げ句の
はてに、
あたしの喉を
指先でコロコロ
撫でたりして…
ホント、失礼しちゃうわ。」
―――――――――――
そう話すので、
ポチは、
バゥッ…と、
吹きだしてしまい
―――――――――――
シルフィ
「笑うなよ。もぉー!」
―――――――――――
一瞬
うしろの方を見て
そのあと、フン!…と、
前へ視線を
戻して、
歩く速度を速める
シルフィに・・・
―――――――――――
ポチ
「ゴメンゴメン・・・」
…と、
謝りながらも
頭の中では・・・
(ちっちゃいし・・・
ホント猫っぽいから、
つい…からかいたく
なるんだろうな・・・)
…と、
そんな事を考えながら、
シルフィのあとを
追うのだった→
そして、それから、
さらに少し歩いて…
―――――――――――
――心霊科学研究所――
目的地に
辿りついた
ポチは
「ここか・・・」
両手に木箱を抱えながら
―――――――――――
その外見が、
少し黒っぽい鉄の色をした…
半球形の大きな建物を
見上げていた・・・。
――――――――――――入口の側には、
白いワンピースを着た
シルフィが立っている…
―――――――――――
そして、ポチが、研究所の入口である
その白いドアの前に立つと…
シルフィが、
「箱は、もう揺れ
なくなった?」
そう聞いてきたので
―――――――――――
ポチ
「ああ・・・少し前から
おとなしくなった…」
…と、
ポチが言うと…
シルフィは、
クルリと、
ポチに背中を向けて、
「ほ…ほほほほんと、
いろいろ助けてくれて、
その…なんだろ・・・」
両肩を
震わせながら、
何かを話そうとしてるのでポチが、
「いや・・・
何を言おうとしてるのか
分かったから・・・」
無理をするな…と、
言おうとした時
―――――――――――
シルフィ
「つまり!
感謝してるって
言う事よ!!」
ひらき直った
ように・・・
シルフィが話すので、
両手に木箱を抱えながら
ポチが
「いや・・・
オレも、シルフィや、
フワリに
世話になってるから
あたり前の事をしただけ
だって…」
こっちこそ、いつも
ありがとうな・・・と、
シルフィのうしろ姿を
見ながら話すと、
―――――――――――
その前でシルフィは、
恥ずかしそうに頬を薄い紅色に染めながら・・・
「素直に返すなよ。
対応に
こまるじゃないか…」
そう言うと、フッ…と、
フワリの姿に変わり
―――――――――――
フワリは、桜色がうすく
かかった白い髪を
フワッと、揺らし
ながら…
振り向いてポチを
見上げると・・・
「シルフィちゃん・・・
ポチに感謝
されて・・・
とっても、恥ずかしかったみたい・・・
それでね。ポチ・・・」
次の瞬間
ポチは、
思わず息を飲んだ
―――――――――――
フワリ
「まっ、ありがとね・・
だって…」
なぜなら・・・そう言う
フワリの姿に、
優しく
微笑む
シルフィの
面影が
重なったから
だった・・・。
6話へ続く・・・
――――次回予告―――
――心霊科学研究所――
その入口である
ドアの前で、
木箱を持って立っていた
白いジャージを
着たポチは
―――――――――――
その側で、
ポチを見上げる
白いワンピースの
ようなものを着た
フワリに
―――――――――――
ポチ
「なあ、シルフィって…
たまに、背中を向けて
話すけど・・・
どうしてなんだ?」
その事について聞くと…
―――――――――――
頭のうしろの方に、
蝶結びに
した
青く大きなリボンを
つけたフワリが、
「シルフィちゃんって…
照れると、そっぽを向く
クセがあるの。」
…と、
そう話すので、ポチが、
「そうなのか?」
…と、
もう一度、聞くと、
フワリは、
「うん。そうだよ。」
・・・そう答えたので、
―――――――――――
ポチ
「ここで、フワリに
変わったのも…
恥ずかしかった事が
理由なのか?」
…と、
聞いてみると、フワリは
自分の顎に
左手の人差し指の指先を
そえて・・・
「う〜んと・・・
違うみたい…ここに
苦手な人がいる
みたいなの・・・。」
そう言うので、
ポチは、
「苦手な人・・・」
そう…つぶやきながら、
頭の中で
(すべての答えは、
このドアの中か・・・)
このドアの向こうにいる
シルフィが苦手な人物と
いうものに思いを
めぐらせるのだった…。
―――――――――――
はたして、シルフィが
苦手な人物とは・・・
次回、第6話
【サイレントキル】
お楽しみに・・・