一部・六章、室外機にひっかければ一発よ!
続き続き。
真辺えみ、みな姐と同じ界歪高校で普通に学生をやっていた元人間、今はアラクネ様。
「あのね~、みなを追いかけて学校出た所で~」
見た目はアラクネの名に恥じない迫力があるけど、間延びしたしゃべり方がそれを台無しにしている。
「逃げてる時にネコちゃんが襲われてる所に出くわして~」
あと服きて欲しい、さっきから鼻血が止まらない。
「で、襲ってるほうが大きなクモだったんだけど~」
まあ、鼻血はさっきみな姐の乳に突っ込んだ時から出てるんだけど。
じゅるって音もそれが理由である。
「私のほうが美味しそうだったみたいで~、食べられたと思ったら、こんなことに~」
大丈夫かこれ?鼻の骨折れてないかな?後みな姐の乳大丈夫か?
「ごめん、待って。」
「うぃ?」
ザクッ
「ちゃんと聞いてたの?」
真辺さんのクモの部分をほぼゼロ距離で観察してたら、みな姐から目潰しいただきました。
「ぬおおおおっ!!」
「ひゃあああっ!!」
痛みと興奮で思わず叫び声を上げたら真辺さんもなぜか雄叫び(悲鳴?)をあげる。
「みな、ひどいっ!われものさんいたがってるじゃない~」
「いや、話聞いてないアホが悪い。」
みな姐冷たい。好き。
「大丈夫ですか~?」
心配しながら俺の目の辺りを擦ってくれる真辺さん。
…目の辺りって普通人が擦ったりしないような。
そしてさするためにかがんだ(?)お陰で乳が目の前にきて両方の鼻の穴から血がではじめた。
自覚あるから言うけど、だらしない顔はしてない。
脳裏に焼き付けるためちゃくちゃ真剣な顔を保っている。
「…。」
後ろからなんだか冷たい視線を感じるが怖くて、じゃないきずいてないよ。
「あまりひどくはなっていませんね~」
乳…じゃない真辺さんがそう言ってさするのをやめる。
アラクネの手はとげとげしていて俺の顔はむしろ傷だらけだけど気にしない、いいものみれたから。
「わあっ!われもの大丈夫!?」
気にしないと決めたらみな姐に驚かれた。
「ちょっとじっとしてて」
そう言うとバックパックから消毒がわりのお酒と布を取り出す(火炎ビンとしても使える)。
じっとしている(ワ○ゥ)。
「…。」
じっとしている(エシ○ェシ)。
「…。」
じっとしている(カー○)。
「じっとしなさい。」
「はい。」
怒られた。
布に酒(多分日本酒)を染み込ませて優しく俺の顔をポンポンしてくれるみな姐。
キリッとした顔で見ている俺。
なぜか?
「みな姐」
「なに?」
「かわいいね」
「…(やや赤面)」
「照れたの?」
みな姐の顔がどアップなのです。
「はい、終わり。」
顔に強めにバンドエイドを押し付けられた。
そのままそっぽを向いてしまうみな姐。
いいツンデレ、いただきました。
「二人とも、仲いいんだね~」
横で見ていた真辺さんがそんなことをいってくる。
なんか午前中にもみな母に同じことを言われたような。
ちなみに今は十四時くらい。
「付き合ってるの~?」
「yes!!」
「違うっ!!」
あらら、残念。
みな姐はまだ俺を嫁として認めてないのね、がんばらないと!
「二人とも、これからどうするの~?」
「真辺さんは?」
「えみで良いよ~」
「えみ様はこれから何処へ?」
「あはは、様だって~」
楽しそうに笑うえみ様。
笑うと普通の女の子と変わらないな。
けどデカイ。
とてもアラクネをフレンドリーには呼べない、ご主人様になって欲しい。
ちなみな立話しててもしょうがないと言う事で今は移動中。えみ様のクモの背中?部分に乗せてもらっている、みな姐だけ。
俺は肩車してもらってる、わーい。
ついでにさっき言ってた卵とやらを探しながら移動している。
えみ様は人間の部分から察するにみな姐より少し背が低いくらいだろう。
が、クモの部分が大きく二メートル五十は越えてるかな?
室外機に引っかけて倒す暴君みたいだなとかいったら失礼かね?
「タイラ○トみたいだよね。」
「た○らんと~?」
…知らないか。
俺はちょいオタだけど、この子はノーマルアラクネみたい。
ノーマルアラクネ?なにそれ。
いや、俺が言ったんだ落ち着け俺。
と、なにか考え込んでいたみな姐が口を開く。
「ねぇ、えみ。」
「な~に~」
「私、1回今のあんたに追いかけまわされたことがあるんだけど」
なんと?
「え~私は記憶にないよ~」
肩車している俺の足を持って落っこちないようにしながら首をかしげる。
俺は体に力を入れてないから、だら~んと変な体勢になる。
ポイッと捨てられる(手を離される)俺。
地面に顔からグシャッ♪と突っ込む。
全然平気だぜ?(鼻血どばどば)
「えみ、ちゃんと話して。」
「なにを~」
会話をしながらえみ様から降りて俺の顔をまたふいてくれるみな姐。
また顔が近くに。
そこでみな姐の口が小さく動く。
け・し・か・け・て・み・る。かな?
作戦があるみたい。
「あんた、今なにをしてるの?」
「みな~?なに言ってるの~?」
「自分の背中に、自分の名前が書いてある傘なんて刺さないよね」
言って、えみ様の背中に刺さりっぱなしだった傘を指差す。
「あんた誰?ホントにえみ?」
言って、震える手で俺の手を握るみな姐。
みな姐、今聞くんだね?俺もきずいてたけど。
背中に、俺は肩に乗せて貰うとき、刺さっている傘を見ると名前が書かれていた。
そこで言わなくてもアイコンタクトでみな姐からの了解を受け取った。
てっきり俺はこのまま騙されたふりをしながらアラクネの本拠地に潜入して、生きてるかはわからないけどえみ様を救出するのかな~と思ってたけど。
「……私はえみよ~」
そう答えた。
「えみを魅了し記憶を奪った、本物の記憶を持つにせものよっ!!」
そう言って高笑いをしながら、アラクネが爪を立てて切り込んできた!!
続く続く。