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一部・十五章、こぶん。

続き続き~




ロリが居なくなって一週間。

まるも俺もお互いが把握してると思い込み、心配すらしていなかった。


バカな男二人は周りの人達に頭を下げ協力をお願いして、日の出を待って探す事にした。


俺はみな姐と一緒に界歪(かいわい)高校から夕日が沈む頃合いを見て、これから夜行性の怪物たちがうろつく時間帯にわざわざ学校から抜け出した。

危険な時間のほうが安全な場所を目指すから行動を絞りやすいのかも、と考えた。


「みな姐、ママさんと妹ちゃんと一緒に居なくていいの?」

「事情は話したし、逆にあんたの力になってやれって言われた」

「せきはラブラブてんきょーぐはっ!!」

嬉しさの余り拳で戦うモビルスーツの真似をしようとしたら腹パン(裏拳)で止められた。

「なんの作品か知らないけど大声出すの止めて」

悶える俺にそんな事を言うみな姐。

うん、この容赦ないツッコミがみな姐だよね。


「そんな事より、なんでこんな時間に行こうとおもったの?」

痛みで悶える俺をそんな事呼ばわりするみな姐が好きです。

「夜に会ったから、夜に活動するのかなってね」

「夜に会った?」

「すっげぇかっこよかったんだよ!!」

「おおぅ!?」

急に目を輝かせロリと会った時の説明を情感たっぷりに始めた俺に若干引いてるみな姐。

長いので割愛。



+ - + - + - + - + - + - +


……なんかいる。


界歪(かいわい)高校から一時間ほど離れた、えみ様と出会った駅前広場からさらに北へ進んだ先にある大型ショッピングモール後。

世界がおかしくなってから真っ先に必要な物を買い求め人が殺到し、一日で殆ど何も(消火器や鉄の防火シャッターすら)無い、ただの廃虚同然となった建物。


みな姐と話し合い、駅前を一時拠点にし、そこから東西南北に捜索の手を伸ばして最初にとやってきた所だ。


もう一度言おう、……なんかいる。


形が明確でない。

ボワンボワンと音をたてて空中を漂ってる。

身体は暗い。

黒いじゃなく暗い。

丸い、けどボコッといくつか唐突がある。

金平糖みたい。

うっすらと中心に人と同じ形の心臓が透けて見える。

ただ、医者でもない俺の記憶だけど、多分左右逆になってる。

回り込んでみたけど、どの位置からも同じように見えて、裏側や横が見れない。


「われもの」

「うん?」

「ちょっとあれ調べてきて」

と、みな姐。

まぁ、気になってたし良いけど。

多分こっちに気づいてるけど、襲ってくる様子はないし。

とりあえず足下に転がってるこのショッピングモールのマスコットキャラ人形(割りとデカイ)を投てき。



「わーーん!(犬がモデルのマスコットなので)」

両手持ちでフリースロー。

暗いのに当たった。





ジュワアアアァァァァ





おぉう……そうきましたか。

人形溶けた。

溶けながら、飲み込まれてる?

まぁ、吸収されてってるってことで。


あ、なんかぐよんぐよんと盛大に形が流動して変わってる。

おっきくなったりちっさくなったり。

ザーッてテレビのノイズみたいな音をさせながら、心臓っぽい部分から何か黒いのが染み出てる。

水に墨汁垂らした時みたい。


「なんなのあれ?」

言いながら小走りでみな姐が俺の横に来た。

「なんだろうね?ゴマに見えるけど」

ヘソのゴマ。

食べるほうではない。

あんなの食べたくない。

とりあえずゴマと呼ぼう。

不安なのか、みな姐が俺の服の端を持つ。

かわいい。







チーン♪







…………ん?

電子レンジみたいな音がした。

なんか懐かしい音だな。

世界が壊れて一ヶ月程度しかたってないけど、電気は止まり、水は泥棒して確保、火は燃える物を適当に集めてライターで。

ライフラインはとっくに死んだ。

自家発電やモーターがあれば別だけど、大体避難場所では照明や医療器具なんかに使われる。

界歪高校はソーラー発電はない。

みな姐の家にはソーラーあった。

地味にクオリティー高い。


「……なんだ?」

ゴマが赤くなった。

そして表面?がぷく~とお餅みたいに膨れて、


「「あ、ヤバい」」


二人同時に言って、ダーッと出口に走り始めた。

次の瞬間。





ドザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!




音に驚いて思わず振り返る。

さっき投げたマスコットキャラ人形が、数えきれないほどゴマから溢れでてる!


やべぇ!!

「早く、逃げよう!!」

みな姐が俺の手を掴む。

「おう!」

しっかりと握り返す。

あ、なんか青春。


とか考えてたのが悪いのか、あっさり人形の波に呑まれた。

いや逃げ切れんわ無理やわ。


「みな姐!」

人形の波の中、はぐれないようにとみな姐を力任せに気合いで引き寄せて、しっかりと抱き締める。

「われもの!?」

「離さない!!」

離すもんかっ!!


どっちが上か下か、右か左かわからなくなるくらい回転した後、




ガシャン!バキッ!パリィン!




とガラスの割れる様な音がした。

けど、ものすごい勢いでシェイクされてる俺達は、その音がなにか考える余裕はなかった。

「うわわわわわっ!!」

「……っ!!!?」



+ - + - + - + - + - + - +



「はっ!」

グッドナイト、世界。

デジャヴ。以下略。


え~っとどうなった?

ゴマから人形の波が溢れて来たから逃げる途中に呆気なく巻き込まれみな姐に熱い包容をかましたんだっけ?


……!

「みな姐!」

すぐに起き上がり、周りを見回す。

「うるさい」

腕の中から声がした。

「……大丈夫だから、離して」

「良かった!」

ぎゅっと抱き締めて、みな姐の頭を撫でる。

「は、離してって」

離す。あ、赤面してる。

思わずにやける。

「平気?ケガは?」

聞いてみる。

「大丈夫よ。あんたは?」

立ち上がりながら、心配してくれるみな姐。

「平気、身体は。」

「はいはい、頭は手後れだもんね」

そう言って、後ろを向くみな姐。

良く解ってらっしゃる。

頭おかしいついでに、もう一度抱きしめてみた。

……が、腕を広げた所にみな姐が踏み込み、腹に肘を突っ込んで来た。


「ぐぶっ!」

「変態」

と、いつものやりとりをしていると。




「大丈夫ですかい?親っさん」


「……。」

「……。」

…………ん?

低く通るバリトンボイスが聞こえた。

二人で一瞬固まる。

今は見る限りは外にいる。人形に押し流されて来たんだろう。

そして、さっきの何かが割れる様な音は出入口が壊れたんだな、と見てわかった。


「…今の、あんた?」

「いや、違うよ」

みな姐が声の正体は俺か?と問う。

俺はストレスを感じにくく、声が濁っていない。

少年の様とはいかないがなかなか男にしては高めの声だと思う。

みな姐はキリッとした外見に反し、わりと透明感のある穏やかな低めの声で、聞くとみな姐だなとすぐにわかる。

……俺だけかも知れないが。

冴えない嫁を育てる作品の、腹黒黒髪ロングな先輩の声に似てなくもない。


「じゃあ、どこから?」

謎の声の主を探し二人でキョロキョロしている。

当然、廃虚なショッピングモールの外には俺達しかいないし、後は足下に大量に転がる人形と、上に人がいなくなって巣にしてるのか烏がいるくらい。


「こっちでさぁ」

下から声が聞こえた。

目線を下にそろって持っていく。

多分烏も一緒に見てる。


「驚かしてしまい、申し訳ありやせん」

……人形が話しかけてきた。

声が男前。

二・五頭身の、灰色で犬をデフォルメした人形が二本足で立ち、こちらを見上げている。


「……。」

みな姐絶句。

烏も絶句。元から喋らんけど。


「おめぇら、親っさんの前でだらしねぇ姿晒してんじゃねえ!」

人形がそう大声で言うと、周りに散らばっていた他の人形もむくっむくっと次々に立ち上がりだした。



「「「「「「「「失礼しやした、親っさん!!!!!」」」」」」」」



言って、一斉に頭を下げてくる。

……え~っと。

「なんで、俺?が親っさんなの?」

「先程、あっしらをあれに放りこんで産み落としてくれやしたでしょう」

……出産だったのかあの波は。

「こんなにたくさん?」

「その理由は自分等にもわかりやせん」

前も後ろも人形だらけ。ちょっと数えきれない。

「なんで喋れるの?」

「先に心臓が入っていたでしょう。恐らく呑まれた御仁が居られたんでさぁ」

それはわかるのか。


「お前ら!!親っさんに挨拶だ!!」

リーダー?の人形がそう大声で指示を出す。


「この世に生を授けて下さったあんたに、あっしら一同誠意と礼儀を通し、苦難困難も共に乗り越え、終生お仕えいたしやす!」


「「「「「「「「「「お仕えいたしやす!!!!!」」」」」」」」」」





………………ダ。


ダンディー(関心)。









































続く続く~

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