一部・十四章、ロリを探して
続き続き~
ロリがいない。
大分前から気づいてはいたが、てっきりまるが前の拠点に置いてきたのかと思っていた。
みな母さんの手伝いで炊き出しをしている時に、食事をもらいにきたまるにロリがどうしているか聞いた。
「なぁ、あの子どうしてる?」
「あの子?」
「ロリだよ、ロリ」
「その呼び方はどうかと思うが、お前と一緒だろ?」
「え?」
「え?」
とやり取りをして、俺を追いかけて別行動になった事を聞いた。
それから一週間、俺もまるも姿を見ておらず、お互いにロリがどうしてるか把握してるだろう、と勝手に思いこんでいた。
話す時間が無かったと言えば言い訳になるが、理由にはならないので同じことである。
まるはえみ様やみな姐同様、忙しくあちこちから声がかかる。
昔から自然と人が集まってくる奴だ。
俺は俺でなんやかんや頼まれ事が多く、自力で化物から逃げ切れない人から欲しい物や探し物を頼まれて取ってきたりしていた。
……笑えない。
ちゃんと確認しなかった自分のミスだ。
社会人になって一番最初にならう報告、連絡、相談を怠った。
涙ながらに謝罪したい気分だが、語るよりも行動だ。
夕飯の炊き出しを放り出したのは申し訳ないが、俺は自分のテントからバッグパックと、学校の掃除ロッカーから柄の長い箒を拝借して造り直した槍を持って飛び出してきた。
あの娘は初対面の俺を怖がり、こちらが低姿勢を見せて尚警戒を解くのを戸惑ってるように見えた。
見えただけで、勘違いならいいけど。
商店街後で男に襲われた時は震えていたし、まると歩道橋で再会した際も、あいつの大声を怖がっていた。
加えて金物屋であの男が言っていた、「そいつは人間じゃない」。
あの娘は多分、別の世界から来たんだろう。
状況を理解出来ておらず、回りが敵に見えているはずだ。
自分を守るためになにかしら力を使ったら、誰かを傷つけ怒りをかった。
おそらく相手は大人。
小さな子供が、異能の力を持つとはいえ大人に本気で怒鳴られる、しかも一人で、全くしらない場所で。
怖いだろう。
俺の事も知らないはずだが、初対面で地面に横になった事で、攻撃はしませんよ~という意志が伝わった、と解釈すれば意味も噛み合う。
少し強引な考えだけど今はそれで納得。
様々な二次元知識からそうまとめる。
それよりも探し出さないと。
「待ちなさい。」
ん?
「あれ、みな姐?」
「どこいくの?」
「買い物だよ」
「どこに?」
「あ~え~……」
「……(溜め息)」
「……ばれてる?」
「まるさんから聞いたからね」
あちゃー。
「すぐ帰るよ」
「どこまでいくつもり?」
「見つかるまでどこまでも」
「ついこの前、空回りで無駄骨折ったのは誰だっけ?」
「…同じ鉄は踏まないよ」
「今踏もうとしてるじゃない」
…ぐぅの音もでない。
「少し待ってなさい」
「え?」
「一緒にいくから」
「なにゆえ?」
「その方がはやいでしょ?」
断る理由ー理由ーう~ん……。
「……あんた、全部一人の責任だと思ってるみたいだけど、小さい娘が居なくなったのはまわりの大人全員に責任があるから、一人で解決しようとしないで、思わないで」
正論で言い返せない。
「面倒だから、意地も張らないで」
メンタルも見抜かれてる!
「……それに、私だってあんたが心配だし」
びゅおう!!
「うおっ!」
風がっ!!
「ぐわあああっ!」
目に砂がっ!!
「……。」
「うぬおおおぉぉぉ!」
ばたばたと地面に転がり砂ぼこりを巻き上げながら転がる俺。
巻き上げた砂ぼこりが顔にかかりさらに目に入る。
「……。」
多分みな姐がなんとも言えない顔で見てる、直感だけど。
「はぁ、ほら」
溜め息をつきながら手を伸ばしてくれるみな姐。
もうみな様って呼ぼうかな?
「ありがとう、みな様」
呼んでみた。
「やめてその呼び方」
怒られた。
「よししゅっぱーつ!!」
勢いに任せて出発。
「まったくあんたは……」
やれやれと頭をふるみな姐。
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「モデル・スパイダーは現在、もとの人格を保ちながら人間と共存しています。」
「何か変化は?」
「脱皮を繰り返し、大きさが一般的な人間の少女程度になっています。」
「身体機能はどうだ?」
「膂力が強く、乗用車くらいの重さならば持ち上げていました。」
「ほかには?」
「背中や指先から出す糸は強靭で、鋼鉄のワイヤーのようですが、粘り気や柔らかさを優先した物もあり、使い分ける事が可能のようです。」
「ただの大きな蜘蛛、と言った所か」
「いかがしますか?」
「引き続き監視を続けろ」
「了解」
「それ以上の変化が見られないようなら、始末しておけ。」
「……。」
「返事はどうした?」
「……承知しました。」
「他のサンプルはどうしている?」
「通信が切断され、状況は解りません。」
「なら、折をみて確認に行き、問題があるようなら潰しておけ。」
「了解、通信終了します。」
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「ん?」
「どうしたの?」
「ん~?」
誰かに見られてるような……。
「みな姐」
「なに?」
「ストーカーがいる」
「あんたの事?」
「惜しい。」
「否定しないのね……」
しない。
昔から人にバカにされて育ってきたからか、自己防衛本能かなんか知らないが直感が鋭いのが自慢だ。
おかげでこんな世界になってから生き延びているし、逃げ足も(色んな意味で)早い。
「心当たりはある?」
聞いてみる。
「あんたくらいしか……」
「いや、俺目の前にいるし。」
「私、誰かにコクられたりしたことないし」
「つまり人から避けられてる、と?」
からかってみる。
「……。」
黙ってしまった。
「落ち込まないで泣かないで強く生きてみな姐!」
抱きつこうとする。
「泣いてないから!」
ガゴンッ!
アッパーいただきました。
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「そう、金髪で背はこれくらい」
と言って、鳩尾のあたりで手を水平に横向きで出す。
「で、フリフリのゴスロリ」
「……だからロリって呼んでるの?」
「いや~声が小さすぎて聞き取れなくてさ、名前がわかんなくて」
「名前くらいはわかるでしょ?」
「それがどれだけ近づいても聞きとれなんだ」
「あ~そう。」
なにか察した顔のみな姐。
多分名前わからないからって小さい女の子をロリって呼ぶ俺の頭を残念に思ってるんだろう。
「知り合いか何か?」
「いや、道でばったり会っただけ」
「……なんで一緒にいるの?」
「寂しそうだったから」
ウソではない。
疑いの目で見てくれるかなと期待したけど、
「ふ~ん?」
……なんだか感心したご様子。
「誘拐じゃないよ?」
「わかってる」
「人さらいじゃないよ?」
「わかったって」
「拐かしたんじゃないよ?」
「はいはいわかったわかった」
適当にあしらいながらも、なんだか面白がるような顔で俺を見て含み笑いをするみな姐。
「それより、ロリ探さないと!」
「そうだけど、せめてその呼び方変えない?」
「幼女探さないと!」
「他のやつ!」
「ニンフィット探さないと!」
「それが何かはわからないけど違う!」
「ペド……」
「却下!!」
「ご主人様探さないと!」
「……ロリでいい。」
眉間をおさえて溜め息を吐きながらみな姐はそういった。
ロリを勝ち取ったぜ☆
続く続く~