一部・十章番外、寂しい少女と英雄(まる視点)
番外編、まるの視点。
「……。」
われものが行った後、俺はアイツの後をずっと眺めてる小さい背中に声をかける。
「行こう」
「……。」
しかし、反応がない。
どうしたものかと考えるが、俺はあまり物を考えるのが得意ではなく、そうゆうのはわれものに任せていた。
小学校から一緒だが、アイツは昔から少々ずれてて、中学の時クラスメイトと仲良くなろうと自分の好きな物をプレゼントしようとした。
良い方々だとは思うが、「お友達券」は中学生には失笑ものだ。
受け取った相手は翌日、昇降口の掲示板にそれを張り付け笑い者にしていた。
クラスどころか学年にしれわたり、バカにされたと思ったわれものは、受け取った奴の頭を教室にあった野球部の金属バットでフルスイングした。
そいつは入院。
聞いた話だと、学校に親を呼ばれ話し合いをしていた時も、相手側の両親に怒られた際、その場にあったガラスの花瓶を手に飛びかかり、止めようとした自分の母親を「邪魔だ」と殴り倒し、相手の親が戦慄していたらしい。
理由は
「友人として対等になれそうな相手を選んだのに、拒絶するからもう必要ない奴だと思った。」
との事。
常に恐ろしいほど自己中心なんだあのアホ。
相手の子はお友達券なんて無くてもとっくに友人と思っていたらしい。
……ちゃんと話聞かないから。
俺は特に何かあった訳ではないけど、気がつくとアイツに寄って行ってた。
なぜか俺にはいつも人が集まってくる。
われものに言わせると、
「ハーレムラノベ主人公」らしい。
だが、フィクションと違い、人が集まれば面倒事も増える。
特に色恋沙汰は困った。
われものは
「好かれるのが鬱陶しいなら、俺の横にいれば?」と言った。
自分はあの一軒以来嫌われてるっぽいから、警戒して近寄られなくなる、と。
良くも悪くもアイツは我が強く、言い換えればぶれない。
そして自分のしたことを受け入れ、正面から受け止める。
クラス全員から怖がられ、疎まれても文句を言わなかった。
まぁ、当たり前なんだけど。
ちゃんと責任能力があり、葛藤する。
ただのサイコ野郎ではない。
当時の俺はそれに衝撃を受け、気楽に騒げる他の奴等とは別に、われものと深く関わっていくようになった。
そんなアイツが連れていたこの小さな女の子は、不安げに身体を震わせ、何かを言おうと口を開閉させている。
「……アイツの名前はわれものだぞ?」
「!……。」
驚きの表情。
けどすぐに、「なにその名前、本当?」みたいな顔になる。
「……気になるのなら行ったらいい。」
「!」
俺がそう言うと、アイツにロリとストレートに呼ばれてたその子はすぐに走り出した、足元を凍りつかせながら。
驚いたけど、普段から変な事ばかりしてるあのアホが連れていた子だしな。
子供を一人で行かせるのは抵抗があったが、こんな風になった世界でまた再開出来るとは限らない。
われものには言ってないが、俺の親は化け物の手にかかった。
はぐれっぱなしになるくらいなら、一緒に居たい人の側に居られるのが一番良いに決まってる。
走り出したチビっ子の背中を見送りながら、俺は役所の拠点に増援を呼びに行く。
あのアホは俺の心友でもある。
バカだし嫌いな所もあるが、居なくなればやっぱり寂しい。
連れがいるとも言っていたし、あの蜘蛛女と闘うんだろう。
しっかり準備して、かっこよく割り込んでおいしい所を貰おうじゃねえか!
続く続く~。