一部・十章、ヒーローの代役
続き続き~。
「われものー!!」
うん?
「おーい!ここだここー!!」
声はするも姿は見えず。
この声はまるだな。
世界が壊れ、はぐれたら二度と会えないと考えるのが普通。
俺の心友は悪運強い。
商店街後から離れ、ロリとの意思疏通をするためと、みな姐の手掛かりを探すべく、とりあえず落ち着ける場所を探そうと駅前まで戻った所。
…えみ様と一戦やらかした時よりも荒れてる?
ロリはまるの声が聞こえた瞬間から俺の腕にくっついてる。怖かったのかな?
かわい冷てぇ。
「上だー!」
上か。
ゴッ‼
なんか顔にぶつかった。
倒れる俺。
多分、上の歩道橋からまるが何か固いものを投げた。
「悪い悪い!受け止めると思ったんだが、急過ぎたな!」
ほんとだよ。
「よう、無事だったか。」
「お前こそ、一人でやられてるかと心配だったが、なんともなさそうでよかったぜ!」
たった今お前に怪我させられたけど。
「一人か?」
「あぁ、今はな。」
今は、か。
無事に仕事場の人達と合流出来たか。
「そのチビッ子はなんだ?」
仰向けで倒れる俺の頭をさっきから撫でてくれるロリについて聞かれる。
このロリはやられた感を出すと優しくしてくれるのかな?
負け犬効果と言うやつか。
ロリについて。
「俺の子…」
「うそつけ!」
「うむ、よくぞ見抜いた。」
「誰なんだ?」
「母お…」
「ねぇよ!」
「妹」
「一人っ子だろ!」
う~ん、納得してくれない。
「友達」
「友達ぃ?お前に?」
失礼な。俺にだって(脳内に)友達くらいいるわい。
+ - + - + - + - + - + - +
「なるほどな、誘拐したのか」
「おうよ」
「マジか!?」
自分で聞いて驚く心友。
違うけど。
「おまわりさーん!!」
いないだろ、もう。
くいくい、と手が引っ張られる。冷たい。
「……。」
不安げにこちらを見上げるロリ。
ぺしぺし、と軽く頭を叩く。
不思議そうな顔をするロリ。
大丈夫だ、という気持ちを込めたけど伝わったかな?
「立ち話をしてるのはあぶないから、場所を変えようぜ?」
と、まる。
「いい場所あるの?」
「近くの役所に避難民と警官や自衛官があつまってるから」
ほほう。警官いたのか。
「それにさっき、でかい蜘蛛女みたいなのが通っていったしな」
……なぬ?
「よし、行こうか」
「待った、蜘蛛女とは?」
「おう、前に駅前で見かけたやつだ」
なんと、手懸かりが駅前で見つかった。
…まあ考えてみれば現場なんだから当然なんだけど。
無駄に走り回ったからわかんなくなっちゃった訳で自滅な訳で。
蜘蛛は徘徊型と待ち伏せ型っているらしいけど、えみ様は徘徊のほうなのかな?
まぁいいや。
「その蜘蛛はどっちに行った?」
「多分、界隈高校のほうだな」
みな姐の学校か。
「ありがとよ」
「おい、どうする気だ?」
「連れが捕まっちゃってね」
「……。」
「まだ諦めるには時間的に早いんだ、まる、悪いがロリを頼むわ」
「いや、ロリって」
「一人の方が身軽だからな」
「わかった、追い付くまで死ぬなよ?」
「おう!行ってくるわ!」
追い付くまで、か。
さすがヒーロー気質、ロリを預けて後から来るつもりかな?
だとしたら、かっこよく助けたとしてもアイツに持っていかれそうだな。
まぁいいや、助けられるのなら。
しかし、あいつが来るまでのヒーロー代役か。
付き合いは長いが、学生時代から裏表なく人と打ち解けるのが早いやつだから、みな姐を助けたらお役御免かな?
俺はまあ、適当にぶらぶらとどこかに消える。
化け物になってるとはいえ、みな姐の友人を殺すかもしれない。
すぐ近くに仇なんていたら、みな姐は色々な意味で気が休まらないだろう。
ロリも人じゃないけど、まるなら上手く護ってくれると期待。
もともとぼっちで、誰とも、親とすらろくに話さなくなっていた。
刺し違えてもみな姐は助けるし、俺が死んだらまるは泣きそうだけど、強いやつだからちゃんと立ち直るだろう。
すぐにバテて走るのをやめ、歩いてたら乗り捨てられた原付を見つけた。
カギはついてるし、燃料も入ってる。
動くかな……。
……。
………………。
…………………………ブォン!
良し、エンジン生きてた!
さて、
「ヒーローごっこは、大人になっても楽しいもんだ!!」
強がりを言い放って自分を奮い立たせ、みな姐とえみ様がいるであろう界隈高校を目指す。
そしてここでロリから目を離した自分を後で反省する事になる。
続く続く~。