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咲くや恋花  作者: 桜 詩
senior high school Ⅱ
25/50

鬼のれんしゅう

2年生になると、新入組も進学組もすっかり区別は無くなってきていて新しいクラスは、関係なく分けられていた。

彩未は春花と和奏とは別のクラスになってしまった。


そのうち、仲の良い友達もクラスに出来るかもしれないが...。

それは、新学年の彩未の不安な事で...今はまだクラスより吹奏楽部の方がいい。

ただクラスには吹奏楽が同じである、晴臣(はるおみ)中司(なかつかさ) 柚月(ゆづき)がいるので心強くもある。

柚月は前年のドラムメジャーのあづき先輩の妹にあたり、彼女にそっくりである。


そして、部活の方では一年生も本格的な練習に入りだし、去年の彩未たちのように、必死で食らいつこうとしながらも、なかなか出来なくて涙を流す子が続出していた。


基本3年生が指導しているので彩未たち2年生は、サポート役だ。

「あみ先輩ここの、ところ教えて下さい」


涙の跡もバッチリなアルトサックスの上田(うえだ) 実夏(みなつ)にそう言われ、慰めたいのをグッとこらえて

「うん。やってみて?」


(あぁ、こうして私も鬼の仲間入り...)


「まって、そこもうちょっとこうだよ。みなつがしてるのはこう。わかる?」

ステップを実演して見せる。


「本番、そんな顔してちゃ台無しだよ?」


「はいっ!!」

ぐすんと鼻水をすする実夏を見ながら、ここで甘やかす事は為にならないと分かっているから、彩未自身も堪えなければならなかった。


何故ならば、あっという間に夏はやって来てしまうから。日にちは限られていて、そして更に厳しい練習が待ち受けているということを知っているからだ。


1年だけ先輩なだけの彩未だけれど今なら去年の先輩たちの気持ちがよく分かる。


惶成のマーチングの一番の特徴は、ラストに演奏する曲sing sing singのその激しいダンスにある。そうでなくては他のチームより少人数であることをカバー出来ないからだ。

そして演奏の質を落とさずに尚且つ基本をしっかりやり遂げるには、厳しさがなくては、これくらいでいいかという緩さが少しでもあれば全国で金賞には届かないのだ。


「うん。今のでいいよ」

「はいっ!ありがとうございました!」


ぐしゅんと泣いている実夏の頭を撫でて

「泣くんじゃないよ~頑張ってるの、わかってるからね」

「あみしぇんぱぁーい、がんばります」


泣きながらも練習を続ける実夏を見ながら、別のパートを見ればどこも似たり寄ったり。

春花と和奏も熱心に指導している。


結子先輩がサックス隊を集めて、揃えることになり、彩未は実夏を連れてそこに並んだ。結子先輩の視線が、痛いほど見ている。


「足の高さ、揃ってないよ!」

「はい!」


そして...。2年生たちと言えど、楽勝な訳ではない。

基本のフォーメーションは変わらないが、曲も、そして動きも去年と同じではない。


それを早く覚えてものにしなければならない。


それに来年は自分達が3年生になるのだから、ぼんやり見ているだけでなく、来年それを受け継ぐべくしっかりと見ていなければならないのだ。

2年生には2年生なりの責任がある。毎年卒業と入学の繰り返される高校生の部活動ならではの緊迫感がそこには秘められている。


5分の休憩になり、グランドを見れば翔太はミニゲームをしていて、この時はキーパーをしていた。

高校生にもなると、シュートのスピードも速くて勢いが凄い。それをちょうどしっかりととるところをバッチリと見て


「すごっ!」


と思わず声をあげてしまった。

「ん?あみってもしかしてサッカー部に好きな人でもいるの~?」

にやにやと一花先輩に言われて、思わずかぁっと熱くなったのがわかってしまう。


「やぁだ。図星?」

クスクスと笑われて

「校則がなかったら、告白とか出来ちゃうのにね」


隠れて付き合ってるのは、絶対に秘密だ。自分の態度からばれないようにしなくては...。


しかし、サッカーをしてる翔太は...本当に格好いい...!


携帯も禁止だから、こっそりと帰る約束も出来ないのが本当に辛い。ごちそうを前に指を加えて、おあずけを食らっているみたいなものだ。


ピッピッ!

とホイッスルがなれば、休憩終わりの合図だ。

奈雪先輩の前にきっちりと整列をする。これも早く整列をしなければ、延々とやり直しになってしまう。今日のメニューをこなさなければ次には進めず、その分後々追い詰められていくという...。


「じゃあsingの練習からするよ」


延々と、続くかのように繰り返される練習にただただ、くったりと疲労する。


ねちっこい練習に終わりを告げて、彩未たちはようやく帰路につくのだ。先に終わっていたのはサッカー部の方で、翔太はすでに帰った後だった。


春花と和奏と喋るものの、やはり疲労はある。ただ、1年生の頃よりは筋肉痛等にはならなくなっている。

「じゃあねー」


春花と和奏と別れたそのホームで、翔太は彩未を待っていたらしく、目があった瞬間に笑顔を見せてきた。

「すれ違ったらどうしようかと思ってた。ちゃんと会えてよかった」

その顔を見ただけで、彩未の疲労は一気に明後日の方へ飛んで行く。

「翔太ぁー疲れたぁ」

けれどここは、甘えたいところ。


「うん。最初から、凄いよな」

「まぁー、仕方ないよね...」


ポンポンと頭を撫でられて、なんとなく癒されたのは相手がやはり翔太だからだと思った。

マンションまでの少しの時間が一緒にいられる幸せな一時となった。

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