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咲くや恋花  作者: 桜 詩
senior high school Ⅱ
24/50

恋はエネルギー

ついに...。


昨日翔太と彩未は、いちばん深く結ばれた。

その事は夢のようで、夢じゃない。


「彩未、大丈夫?」

おはようの前に翔太はそう聞いてきた。

「へいき。心配してくれたの?」

「うん、してた...」


「ほんとは、ちょっと違和感あるけどね」

へらっと笑うと

「...かばん、持つ」


教科書の入った方の鞄を翔太が彩未の手から取り両手で1つずつ持った。

「じゃあ電車に乗るまでよろしくね」


「ん」

翔太の両手が塞がってしまったから、マンションから駅までは翔太の前をスキップしながら歩いた。


「元気だね」

小さいけれど、翔太の声が彩未にも届いた。

「ほんとだね~」


ホッとした響きがある声に、彩未はにこにことした。

体は大きくなっても、やっぱり翔太はカワイイ。


落ち込んでいた翔太だけど、今朝は少し浮上しているように思える。彩未が少しでもそれに貢献出来ていたら嬉しい。


「大声で叫びたい気分。『だいすきー』って」

そう小声で言うと

「本気?」

「本気、本気!」

「俺は...彩未だけに言いたい」


「そ、そお?」

(だ、めー。しんぞう、わしづかみにされた...。)


「じゃあ今言える?」

そう言えば、一歩近づいて耳に唇を寄せると

「好きだよ、今すぐ抱き締めたいくらいに」


ひゃっ!

「...それ...反則」


その、セリフとそして、耳元での囁き。朝から赤面させられた彩未はそう呟いた。


(いつの間に、こんなに男っぽい声になったのかな..!?)


荷物をどっさり持ってるのに、翔太の歩みは全く影響がない。

前を歩く翔太のほんのりピンクの耳たぶが見えて、彩未は追い抜かした。


「先に行っちゃうね!」


「あ、ズル」


電車に乗り、乗り換えの駅までは一緒に行きそこからは彩未は春花たちと一緒に登校する。


翔太も彩未の知らない男子生徒と歩いているのが見える。

同じように大きなスポーツバックを持っているからきっと同じサッカー部なのだろう。


この日から、彩未も翔太も部活動がはじまる。

外でウォーミングアップをしながら、サッカー部を見れば、すでに翔太は練習着に着替えて練習に参加している。


サッカー部は経験者ばかりなのか、基礎練習もみんな慣れたようなものだ。そんな中でも翔太がすぐに見つかるのは、やはりそれが彩未のカレだからか。


頑張ってる翔太を見れば、彩未もまたがんばれる。

恋ってやっぱりすごいエネルギー源なのだ!


そして、頑張って翔太に褒めてもらいたい...。(よこしま)かも知れないけれどそれがやはり、力の源になるという事も事実なのだ。


そして、ジャージのまま座奏の練習をするために教室へ向かい、ネックストラップを着けてアルトサックス持った。


「彩未、なんか機嫌いい?」

春花に言われるが

「えー?いつも通りだよ?」

そんな事を言いながらも、自然と顔がゆるんで笑顔なのは確かだった。


「そーか、そーか、そんなに練習がたのしみだったかあみは」

結子先輩が覗きこむようにして、会話に入ってきた。

「あ、ゆいこ先輩」

「良かったねぇ。新年度の初練習」

ふふっと微笑まれる。


「聞こえたよ~そんなに楽しみだったか!」

瑶香先輩も言うと、

「じゃあ今日は見学もたくさん来てくれてるから、はじめにあみにアルトのソロでも弾いてもらおっかな」


「えっ!」

「ウソ。この楽譜を回して」

「はぁ~先輩...相変わらずSです」


「ふふふ、楽しみでしょ?」

「ええ、それはもぉお。とっても楽しみにしてますよ。今年はどんなしごき...いえ、ご指導があるのかと...心臓がもう飛び出そうです」


そんなやり取りにクスクスと笑いが起こる。

そうして、川口先生が登場すると、先輩たちもピシッと引き締まり本気モードに切り替わる。


吹奏楽部には今年もたくさんの一年生が見学に来ていた。

そしてこの日入部を決めていった一年生もたくさんいたのだ。きっと去年の彩未のように、入る事をしっかりと決めて見学していたのだと思われた。


時間は限られているから、分単位で決められた練習スケジュールをひたすらしっかりとこなしていくしかないのだ。


今年もまた全国に向けてのシーズンが始まる。



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