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咲くや恋花  作者: 桜 詩
senior high school
21/50

朝れん

すっかり秋の気配のそんな早朝。

母に頼まれて洗濯を干していた彩未は、ベランダからから見える公園で翔太がサッカーを練習しているのが見えた。


「あー...」

この日は日曜日、時刻は7時前。

こんな時間にはまだ子供たちはいず、翔太一人だった。

時おり犬の散歩をしている人がいるくらいである。

彩未は手早く洗濯を終わらせるとマンションを出て、公園へ走っていった。


「おはよー!」

「おー」


ポンポンとボールを器用に操ると、リフティングを何回かする。


「パース」


リフティングして高く上がってから落ちてきたボールをトラップしてかるくステップを踏むように彩未にパスを出してくる。

緩めに手加減してあるから、彩未にもとれる。本気のボールならきっと無理だと思われた。


彩未もそしてパスを返す。少しくらいなら兄の颯としていたので出来るつもりだ。


「いつも、朝一人でやってるの?」

「まぁね」


「そっかぁ...」

「勝つか、負けるか...、チームはどちからだけど。個人としては活躍出来るか出来ないか。努力するしか俺はないから」

頑張ればみんな出れる彩未たちと違って、サッカーは11人。

試合に出られる人数は決まっている。


「厳しいね」

「...まだ、このままじゃ終わらせたくないから」

「ん?」


「まだまだこれからでしょ?翔太も翔太のサッカーも!」

そう言うと翔太は嬉しそうに笑った。


「さすが彩未は...前向きだね」

「そぅお?私って前向きかな?」


「少なくとも後ろ向きじゃないよね」


「なんか...褒められてはない?」

「褒めてる褒めてる!」

クスクスと翔太は笑いながらパスを出してくる。


「彩未は今日は練習は?」

「あるよ、練習っていうかイベントに参加するの」

「ミニスカで?」

あ、気にしてるのかな?なんて彩未は思った。


「そう。ミニスカで」

クスクスと彩未も笑った。

「ちゃんと中は短パン履いてるよ」

当たり前だけど、スタートの下はショートパンツを履いている。

「知ってるけど」

「知ってるって、スカートの中見た?」


「み、見たっていうか、聞いたっていうか...!」


「ふふっ」


男の子たちが吹奏楽部の事を『パンチラ隊』と影ながら言ってるのは知ってる。きっと翔太の周りでもそんな風に言われてるのだろう。

当然ながら、動けば見ている人にはスカートはヒラヒラして中が見えてしまうものだ。


「ミニスカのコスチューム着てる競技なんてたくさんあるんだから」

テニス、バドミントン、フィギュアスケート、チアリーディング...等々。


「それも、わかってるけど彩未が見られるのは、気になる」


「翔太~カワイイ」

思わず言ってしまいその顔を見て、しまったかなと思う。

「カワイイ言うなって」

翔太はボールを止めると、近くのベンチに置いたスマホを見た。


「そろそろ終わり」

「帰る?」

「帰るよ」


「...ねぇ怒った?」

「...怒ってない...けど、カワイイは嫌だ」


ボールを抱えて歩きだした翔太に続いて彩未も歩く。

「ゴメンね、もう言わないよ」

「うん」

翔太は、くるりと振り向くと

「カワイイ言われないように、する」


(や、だからそういうのがカワイイんだけどな)


「うん」


一緒にマンションへと向かうと、

「彩未は今日のイベントってなに?」


「コスモスまつりで、パレードだよ」

「そっか。がんばれ」

「翔太もね」


何時から練習をしていたのか、近くに寄ればうっすらと額に汗が見える。

部活と勉強と、それに朝練までするのは大変だと思う。

それだけ、サッカーに真剣に取り組んでいるのだと思うと応援したくなる。


「私も、いっぱい応援してる。頑張って」


「ありがと」

ニコッと笑うと、目が細まってまた可愛く見える。

可愛いものは可愛く見えるんだから仕方ない。


「ただいまぁ」

「おかえりぃって、何してたの」

「ちょいと散歩にな」


「ほらほら、急いで準備しなさいね」

「はぁーい」


朝食を食べて、それから集合場所へ向かうのだ。

朝から会えたお陰で、無理矢理テンションをあげなくても大丈夫そうだった!


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