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咲くや恋花  作者: 桜 詩
senior high school
16/50

カレじゃないと

待ち合わせたのは、大きな街のとても目立つ場所だった。


彩未の服装は、少しフリルの飾りのついたガーリーなホワイトのブラウスとゆるっとしたダメージ加工の入ったデニムパンツ。それに白のレースソックスとサンダルにした。

それと、リュックを背負ったスタイルだ。


待ち合わせの時間より少し前に登場した瑛斗は、ぴったりとした黒の半袖Tシャツと黒のチノパンという格好だった。


(んー、なんかカッコよく見えない...)

私服を着た彼をみれば全く好みでない事に彩未は気がついた。それに、彩未も近くに和奏と春花が控えていたけれど、彼の後ろにも友人らしき若い男が二人ほど遠巻きに居たからだ。その人たちはもちろん知らないが、合宿所で見かけた。


(...なんか、無理。...それに、こういう時、翔太なら何を着るのかな)


「ごめんね待った?」

にこにこと、瑛斗は近づいてきたが、

「いえ、あの...。私先輩の事はよく知らなくて、やっぱりお付き合いとかは考えられなくって」


「...あー、少しも考えられない?」

「すみません」

彩未は頭を下げた。

「...そっか、もしかすると好きなヤツでもいた?」

そう言われて、ここはそうだと言った方がスムーズな気がした。

それに、瑛斗とふとさっき比べてしまった、その人がまた浮かぶ。

思い浮かべたのは...なぜ?


「はい。そうです、だからごめんさない。きちんとこの前に伝えるべきでした」

「あー、うん。わかった連絡してくれてありがと」


意外とあっさりとそう、返事をしてくれた。これまで話したことは無かったからそこまでの想いを向けられていたのではないのだろう。その事にホッとしてしまう。


「こちらこそ、ありがとうございました」

彩未はそれだけを言うと、ぺこっと頭を下げて和奏が控えている方に歩いていった。


「和奏、春花いこ」


彩未は後ろを振り返らずに舞花と和奏と、共に立ち去った。


「どうしたの?」

春花が心配そうに聞いてきた。

「...なんか、友達連れてきてた。遠巻きに、してたけどそうだと思う。何もかもムリだから断った」

「ええー?」

「なんかいろいろとイヤだった」


「それは...もう、ないね」

和奏が、眉をしかめた。

「うん」


離れたところまで歩いた彩未たちは、ケーキショップへ入った。


「何食べよ」

「やっぱりパフェだ!」

「あ、それいいね。このジャンボのいく?」

「やってみる?」


クスクスと笑いあったところで彩未は声を上げた。


「翔太だ!」


店の窓越しに、人通りの中に歩いてる翔太を見つけたのだ。くしゅっとしたナチュラルなオフホワイトのシャツとインナーにはネイビーのシャツ。それにダメージ加工のジーパン。それに彩未とお揃いのリュック。またまたお揃いの色合いな格好だった。


「え、どこ?」

「そとそと、歩いてる。誘ってきていい? 」

「うん、いいよ」


彩未は店から出て、歩いている翔太の背後から近づいて膝かっくんをした。


「わっ!」


驚く翔太の腕を掴んで

「ビックリした?」

「彩未ちゃん?ほんとービックリした」


耳からイヤホンを外した翔太は彩未を見下ろした。


「あれ?翔太背が伸びた?」

「あ、うん」


ひさしぶりにくっついたせいか、ずいぶん骨組みがしっかりとしてそれに、顔の位置も高くなっていた。

「ね、ジャンボパフェ食べるの。手伝って」

「なんだそれは」


「いいから、春花と和奏も一緒なの」

「いいけど、邪魔じゃない?」


「全然」


手を繋いで店に一緒に戻ると、


「こんにちは、お邪魔します」

ニコッと爽やかに笑った。


「二人ともまたお揃いみたいなコーデしてる」


「そういえばまた被ってる」

くすっと翔太は彩未を見て自分を見て笑った。


「靴買ったの?」

「うん。今成長期みたいでさ、なにもかもにょきにょき。ついでに靴がヤバイ」

「翔太のお父さん、背が高いもんね」

「うん」

くいっと足を浮かせて見せてきた、買ったばかりのスニーカーは、人気のあるブランドの物で、白に青のラインが入っていた。

「あ、これのネイビーのもってる」


「あ、そうなんだ。やっぱり履きやすいよね?」


注文したのは店で一番大きいジョッキに入ってるパフェで、圧倒的なそのパフェをお皿に取り分けて食べる。


「「「おいしー」」」

「うんま」

甘いものも美味しく食べる。


「これ、4人でもけっこうしんどいね」

春花が言った、なんとか完食したが思った以上の量だった。


「後はどっか寄る?」

「本屋でも行こうかと思ってた」


「じゃあ私たちもいこうか?」

「いいね、大きい本屋いっぱいあるもん」


店を出て歩き出すと、

「あ、先輩だ」

翔太が遠くにいる先輩を見つけたようだ。

「え、」

とっさに彩未は翔太を盾にして隠れる。

そっと見るとやはり瑛斗と、その友達だ。

「どうかした?」

「さっき、彩未その、光永先輩の事ふってきたの」

「和奏ぁ」


「振った?」

「付き合わないかっていわれて、断った」

春花が後を続けた。

瑛斗が翔太を、睨んでる気がして何となくまずい気がするのだ。


「長瀬」

案の定離れた所から呼ばれた。

「ちょっと、行ってくる。心配いらない」

「大丈夫?」


走りよっていくと、翔太はきっちりと頭を下げて後輩としての挨拶をしているようだ。

何を話してるのかはわからないけれど、喧嘩にはならなさそうだ。


「大丈夫かな...」


少しして、翔太が再びお辞儀をして瑛斗たちが手を軽く振って立ち去っていった。


「な、なんて?どうなった?」


「ん、と。彩未ちゃん怒らないで聞いて」

「うーん。わかった」


「まずは、まぁ...付き合ってるのかって聞かれたから、そうだって言ってしまった」

「え?」

「で、1年前からだって言ったから。ついでに去年の写メを見せて納得して、もらった」


「いじめられない?」

「なんで?平気だよ。校則の事はみんな知ってるから、言わなかったのも仕方がないって。ま、今日もまたペアっぽいし」


「はー...」

「怒られたらどうしようかと、おもった。翔太後輩だから」

「そのくらい平気だよ。まぁ、しごかれると思うけど」


ニコッと微笑んで見せた。

しごかれるというが、何となくそれは大変なんじゃなかろうか?運動部は上下関係がやはり厳しい。


「やるね!翔太くん!おねいさんは見直した」

和奏がパチパチと手を叩いた。


「ありがと、助かった」


気を取り直して、本屋に向かう。

翔太が、サッカー雑誌を眺めているので、彩未たちはガールズ雑誌の棚に向かった。


「ね、ホントに付き合っちゃえば?」

「ええー?」

「だってさ、翔太くんとはすごく自然だし」

和奏が言うと


「それに、あんな人通りの中に翔太くんを発見できるなんてさ彩未はやっぱり好きなんだなって思うぞ」

春花がうんうんと自分で納得しながら言った。


「そ、そうかな」

指摘されると、確かに思い当たるような、そんな気がしないでもない。

「向こうは中学生だよ?」

「来年は高校だし、あの子落ち着いてるし。彩未の方が下っぽい」

「今日これから一緒に帰ってさ、言っちゃったら?」

「ええ~、そんなの出来ないよ」


と、そんな事を言っていると春花と和奏は彩未を置いて、翔太と二人にしてしまったのだ...。

(ほんとに...。そう?これは‘’こい‘’という気持ち?)

指摘されて、頭がその事でいっぱいになってしまった。



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