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黄昏の眷属  作者: 倉井部ハルカ
30/39

第30話 銀の羽

 最大加速で一気に雲の上にまで突き抜けた。


 飛空式術、銀揚羽(ぎんのあげは)は、放出する錬気の量が多い。


 真っ直ぐに目的地に向かえば、錬気の痕跡を辿ってすぐに追跡されてしまう。


(まあこれも気休め程度だけれど、時間稼ぎに程度にはなるでしょう)


 高度を十分にとったところで力を最小限に絞り、滑空に切り替える。


 両手に抱えた二人の様子を伺うと、致命傷を負ったケイはもちろん、急加速に耐えきれなかったのか朔也まで意識を失いぐったりとしている。


「ふん、まったくだらしないわね。こんな程度の実力で、あの眷属に立ち向かうだなんて、無謀もいいとこだわ。それにしても……」


 あの瞬間に殺されていても不思議はない。いや、そうなって当然の状況だったのに。


(なによ、あれ。あの眷属の腹から何か出て、こいつの中に入っていった。あの眷属のこいつへの執着も、普通じゃ無いし)


 肉体を眷属に奪われかけ、人外の身体となった少年、いやいまは少女。


(こいつ、ただの変転者じゃ無い。なにか、あるわね……)


 恐らく忍とアビスウォーカーはそれを知っている。


(だから、こいつを討滅しないで守るだなんて言いだしたんだ……。まあ……、どういうことなのか、まともに聞いたって教えてくれないんでしょうけど)


 犬神の総領になって一条家を出て行ったのだって突然だったし、その理由を何度尋ねてもまともに答えてくれない。


(だから、晶姉さまだって怒ってるのよ! ほんとアビスウォーカーの言いぐさじゃ無いけど、愚兄なんだからっ!!)


 いまは陰気なナイフ使いの兄となっている義兄に、憤りを募らせる。


「って、いまはそんな場合じゃ無いわ。あいつを迎え撃つ場所、探さなくちゃ!」


 あの眷属の様子からして、朔也の中に取り込まれたものを奪い返すために、すぐにでも追撃してくるだろう。

 

 アビスウォーカーが手傷を負わせたとはいえ、致命傷にはほど遠い。


(あれほどの錬気があるなら、すぐに回復するでしょうし)


 相当な激戦になる。一般人を巻き込むわけにはいかない。


「一条の屋敷なら眷属と戦うには最適なんだけど、でもあんなの呼び寄せたら、忍兄さまの仕事手伝ってるの晶姉さまにバレちゃう。どうしよう」


 厳しい彼女にタップリと叱られ、その後の体術稽古で散々に叩きのめされることを考えると躊躇ってしまうが、超常の戦いを行える場所が他に思いつかない。


「仕方無いわね」


 風に乗って空を滑る蝶の銀羽根を翻し、鬼を使役し人外の存在を討滅する一族、鬼繰一条宗家の屋敷へ進路を定めた。しかし、


「待って。違う、そっちじゃない……」


「アビスウォーカー!?」


 瀕死の寡黙娘が息も絶え絶えな声を絞り出して、龍姫に訴えかけてきた。

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