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Another World ─もう一つの世界─  作者: なつくさ
Chapter.1 もうひとつの世界へ
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Episode 4.休息

今回から、後書きにちょっとした設定(キャラクターのプロフィール等)を書いていこうと思います

「うっ………」


 駿はゆっくりと瞼を開く。仰向けに寝ているらしい。温かく、柔らかい布団に包まれていた。

 朧気だった、視界が段々と澄んでいく。そして、自分がベッドで寝ていたことに気づく。起き上がって、辺りを見る。どうやら、家の中らしい。ベッドのとなりの机に千夏が突っ伏して居眠りをしていた。

 駿は先程までの事を思い出す。確か、ミーティアに道を案内して貰っていて、市場で迷子になった千夏を捜したら、千夏がチンピラに捕まっていて、助けようとしたら、逆にやられて、そこからは、あまりよく覚えていない。ただ、『何かよくわからないモノ』が、体を駆け抜けたのは覚えている。

 ただ、それが何であったか。それはわからない。ただ、もしかしたら超能力を発動したのかもしれない。でも、どんな能力(チカラ)なのか、それはわからない。

 そういえば、あんなにひどくやられたのに、からだの痛みが殆んど無い。ということは、再生能力でも使えるようになったのだろうか。


「ふぁぁぁ………」


 千夏がむくりと起き上がり、背伸びをする。大きなあくびだ。そして、あくびのせいで潤った瞳でこちらを見る。


「………おはよう」

「おはよう。じゃないわよ!心配したのよ!」

「その割にはずいぶんと気持ち良さそうに寝てたじゃないか」

「うたた寝しちゃっただけでしょ!全く……」


 千夏は、ふて腐れたように目を背ける。でも、無事でよかった。駿はそう思った。見れば目立った外傷もない………。

 いや、そんなはずはない。千夏だって、チンピラから暴力を受けたはずだ。アザの1つや2つあってもおかしくない。まさか、千夏も再生系の超能力を発動したのだろうか。

 そう考えていると、ノックがあってから、扉が開く。


「失礼します。………駿君、目が覚めたんですね」

「あの、ミーティアさん。ここは、どこですか?」

「ここは、私の実家です。気絶していたあなたを運んできました。………千夏さんからは説明されませんでしたか?」

「あの………、なんかすいません」


 千夏が呟くように謝る。そう言えば、あのとき、チンピラの目の前に置いた貴重品はどうなったのだろう。体な無事なので、少し贅沢な悩みであるような気はするが、やはり、気になってしまう。


「下らないことですが、貴重品って、どうなったんですか?チンピラに取られたまま………」

「いえ、彼らは逮捕され、あなたが盗まれたものも、ちゃんと返ってきましたよ。あとで渡しますね」

「ありがとうございます」

「そう言えば、駿君。超能力が目覚めたらしいですね」


 ミーティアは、ため息混じりに言った。やはり、あのとき、体に巡った感覚は能力の目覚めだったのか。


「千夏さんの話を聞く限りだと、雷属性で、尚且つ強化系の能力だと思います。こればかりは、調べてみないとわかりませんので、憶測です」

「ちょっと待ってください。回復系じゃないんですか?」

「いえ、恐らく違うでしょう」

「だったら、なぜ俺たちのアザは治っているんですか?」


 ミーティアは一旦千夏の方を見てから、口を開いた。


「それは、私のもう一つの能力『応急処置(ヒーリング)』によるものです。実は、多くの能力者は能力を二つ以上持っています。一般的に能力は後に目覚めた能力ほど、制御しづらい傾向にありますので、大抵はまともに扱えるのは二つ目までなんです」

「へえ、つまり、能力ってその気になればいくらでも増やせるんですか?」

「まあ、恐らくは。ただ、解放するにつれて段々と目覚めづらくなるので、多くても三つか四つくらいでしょう」


 逆に言えば、三つか四つくらいなら扱えるということだろう。だったら、能力をあと三つ開発してもいいかもしれない。ただ、条件はわからないので、どうしようもない。


「そうでした。ティータイムにしませんか?ちょうどクッキーが焼けましたので」

「そうなんですか?是非」


 三人は廊下へ出る。どうやら、さっきまでいた部屋は二階だったようだ。階段を降りて、開けたリビングルームに案内される。壁は白塗りで、いくつかの賞状や盾(賞品としてもらうもの)、それからメダルもあった。

 文字を読むと、『最優秀鍛冶屋』と刻まれていた。ミーティアは教師をしながら鍛冶屋もやっているのだろうか。なんと忙しい人だ。


「ミーティアさんは、鍛冶屋もしているんですか?」

「いえ、パ………。こほん、父が鍛冶屋を営んでいます」

「すごい数の賞ですね。そんなにすごい人なんですか?」

「ええ、まあ。この国では三本の指に入る位には……、何度か最優秀に選ばれましたし………」


 そうこうしていると、奥の方から赤毛の男が姿を現す。体格が良く、見た目からした強そうだが、年齢の方は50程度だろうか。


「おう。お前たちが噂の………。俺はアラン・ゲルナス。この町で鍛冶屋をやっている。そして、ミーティアの父親だ」


 駿は驚く。二人の共通点なんて燃えるように赤い髪の毛ぐらいしかない。それに、体格だって、アランはかなりゴツいが、ミーティアは背は少し高いものの、別に体格が良いわけではない。


「驚いてんな?まあ、よく言われるよ。まあ、これからしばらくよろしくな。おっと、お前たちの名前を聞いてなかったな」

「あ、自分、祇方駿と言います。よろしくお願いします」

「まあまあ、そう硬くなんな。ともあれ、よろしくな。駿」


 駿は差し出された手を握る。ゴツゴツとした手だ。それに、腕の筋肉もかなりのものだ。やはり、自然と筋力がついたのだろうか。


「で、そっちのお嬢ちゃんは?」

「南谷千夏です。よろしくお願いします。アランさん」

「ああ。よろしくな。千夏」


 アランは千夏とも握手を交わす。この間、ミーティアは蚊帳の外で、暇そうにしていた。

 アランは千夏の手を放すと、暇そうにしているミーティアに声をかける。


「ミーティア。そろそろティータイムだろ?折角、娘が久し振りに家に戻ってきたんだ。お前が淹れた珈琲が飲みたい」

「わかりました。あと、駿君と千夏さんは何がいいですか?」

「じゃあ、俺は紅茶で。砂糖とミルクは無しでお願いします」

「私も紅茶で。あと、ミルクは少し多目でお願いします」


 ミーティアは「わかりました」と、返事をしてキッチンへ向かった。その間に、アランは手を洗いにか、どこかへ向かった。そう言えば、手を洗っていない。やはり、衛生的にも手は洗わなくてはならない。

 恐らくは、アランについていけば、洗面器にたどり着ける。そう思い、駿はアランについていく。千夏も同じように思ったのか、ついてくる。


「手洗いか。そう言えば、この家の案内はされたのか?」

「私はミーティアさんにしてもらいましたけど、駿はまだです」

「そうか。駿、よく聞け、洗面器とトイレと風呂、そして脱衣所は近いところにある。この意味がわかるな?」

「はい。気を付けろってことでしょう?」

「その通りだ。いいか、女って生き物ほど怒らせたら面倒な奴はいねえ。お嬢ちゃんのことはよく知らないが、覗きなんて考えるんじゃねえ。痛い目見るぞ」

「はい。気を付けます」


 良く聞けの辺りから、アランは小声で話す。恐らくは、千夏には聞こえていないのだろう。駿も同じように小声で話したので、少し怪しまれたかもしれない。

 覗きはやめろ。なんて言われると覗きたくなるが、報復が怖いので気を付けることにする。触らぬ神に祟り無しだ。


「密談はすみました?」

「おう」


 洗面器に辿り着く。確かに、トイレが近い。さらに、脱衣所と洗面器を隔てるのは一枚のカーテンだけだ。なるほど、確かに注意が必要だ。

 覗きをするなら計画的に………。ではなく、トイレに行くときに勘違いされないように行動しなければならない。

 手洗いを済ませ、リビングへ戻る。ちょうど支度が終わったようで、テーブルの上には、四つのマグカップと真ん中にクッキーが乗った皿が置いてあった。


「ちょうど準備ができましたよ。冷めない内にどうぞ」


 それぞれ自分の飲み物がある席へ座る。それぞれマグカップの色は違っていて、駿のものは青色だった。おそらく、これからこのコップを使うことになるので、覚えておく。


「「「いただきます」」」


 駿はクッキーを一つ手に取る。まだ温かい。そのクッキーを口の中へと運ぶ。サクサクとしていて、ほのかに香るバターの香りがまた美味しい。

 紅茶も一口飲む。こちらも、美味しい。爽やかな香りが鼻を抜ける。香りからすると、恐らくアールグレイだろう。前に短い間だが、喫茶店でアルバイトしていた駿には何となくわかった。


「美味しいですね。クッキーも紅茶も」

「ありがとうございます」


 千夏は黙々とクッキーを頬張っている。相当気に入ったようだ。駿はその様子を尻目に見ながら、また一つクッキーを口にする。そして、噛み砕くと、舌の上で、クッキーの中に入っていた何かが弾けた。

 口の中にすさまじい辛さが広がる。辛さの感じからして、唐辛子の類いだ。駿は紅茶を一気に半分くらい飲み干す。


「あ、駿君が引いてしまいましたか。実を言うと、一枚だけ、唐辛子ソースを包んでおいたんです。混ざらないようにするのが大変でしたよ」

「何でそんなものを…………」

「いえ、ちょっとした遊び心です」

「何で今日一日だけで二回も激辛料理を食べるはめになったんだよ………」


 駿の様子を見てか、他の三人が笑う。こっちからすると、全く笑い事ではない。昼の激辛パスタよりは遥かにマシだが、結構きつい。

 そうこうしているうちに、ティータイムは終わり、アランが立ち上がる。


「そうだ。ちょっと鍛冶場を見てみないか?」

「ぜひ、お願いします」


 駿は思いがけない提案に驚く。だが、なかなか見られないであろう所だ。断る理由もないし、見ておくべきだろう。


「あ、私も見ていいですか?」

「もちろんだ。よし、ついてこい!」


 そして、二人はアランに案内されて、鍛冶場までやって来た。外よりも暑いが、耐えられないほどでもない。

 駿はその中を見渡す。全体的にもとは白かったであろう煉瓦が黒ずんでいる。そして、机には大小様々な武器が並んでいた。

 そのなかで気になるものを見つける。それは、どう見ても元の世界の日本刀だった。


「あの、触ってみていいですか?」


 駿はその刀を指して、ダメ元で訊ねる。やっぱり、その刀が、一つだけ異質なそれが、気になってしょうがない。


「ああ、気を付けろよ。うっかり指を切りましたー。なんて、笑えないからな」


 注意はされたものの、許可はしてくれた。駿は実際にその刀を手に持つ。そして、窓から溢れる日差しにかざす。銀色の刀身が光を反射して美しく見えた。


「ああ、でもそれって、失敗作だぞ。ちょっと昔の文献を読んでそれに書いてある『刀』とか言うのを再現したんだが、ちょっと使いづらくてなぁ」


 駿はその柄を強く握る。夢のようだ。模擬刀ではなく、本物の刀に触れることができるなんて。博物館で見ることしかできなかった、ロマンの塊が今、駿の手の中にあった。

 突如、また例の『何かが良くわからないモノが身体を駆け抜ける感覚』を感じた。思わず、瞼を閉じる。そして、もう一度開き、駿はぎょっとする。

 さっきまで確かに銀色だったはずの刀は、何故か青く光を放っていた。

《プロフィール》

【名前】 祇方駿(ぎかた しゅん)

【性別】 男性

【身長】 172㎝

【体重】 65㎏

【年齢】 15歳

【好きなもの】 サンドウィッチ、人助け

【嫌いなもの】 トマト、卑怯なこと

【性格】 基本的に温厚、困ってる人を見ると助けたくなる

【特技】 空手

【備考】 主人公、正義感は強い方で、体力にもそれなりに自信がある。ちなみに、勉強はまるでダメ

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