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Another World ─もう一つの世界─  作者: なつくさ
Chapter2.学院生活、始まる
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Prologue2.入学

 駿たちは、学院の講堂にいた。今日は入学式だ。昨日は、判別試験が占拠されたりと、散々な一日だったが、なんとか、この日を迎えることができた。

 少なくとも、帰る手段が無い今は、目の前のことに全力を尽くすしかない。前向きに考えれば、唐突に異世界に飛ばされ、色んなことを感じ、学校に通う。というのは、ちょっとした留学みたいなものかもしれない。

 もっとも、超能力の技術がもとの世界で役に立つか。と聞かれれば疑問だが。

 それはさておき、入学式だが、どうも校長が遅刻しているらしく、中々始まらない。


「………遅刻する校長ってどうなのかしら。なんというか、不安になるわ」

「まあ、確かにそうだけどさ。でも、さすがにそんなに変な人じゃないんじゃないか?」

「それはどうかね。案外変人かもしれないぜ?」


 右隣に千夏、左隣にトムが座っている。ちなみに、制服はYシャツにネクタイ、深緑のズボンだ。女子用は、ズボンがスカートになり、ネクタイがリボンになったものだ。

 この学校では、制服の色が、緑なら超能力学科、紺が、専業学科、赤が管理者学科。そして、黒が通常学科だ。そして、リボン及びネクタイの色も違っている。超能力学科と専業学科は赤だが、他の二つは紺色だ。

 ようやく、校長が壇上に上がる。見るからに校長と分かる、初老の男性だ。


「あ、遅れて申し訳ありません。そして、これから、バルクス国立学院、入学式を始めます」

「生徒一同、起立 礼」

「まずは、校長先生の挨拶です。校長先生お願いします」

「はい。校長のガブリエル・ポランスキーです。皆さんは、大変な判別試験を越え、本校に入学した、言わばコルント希望の星です………」


 駿がまともに聞いていたのはそこまでだ。そこからは意識が朦朧とし始め、気づけば、話が終わっていた。


「次に、国王陛下からのお言葉です。生徒一同、起立。礼」

「国王の、ギルバート・アルベール・コルントだ。聞いた話では、お主らは『鴉の眼』に判別試験を占拠されたとか。だが、案ずるな!勉学せよ!お主らの力を引き出すもの!見つけるもの!それがここにはある!栄光を手にするのだ!明るい未来を掴め!それが、お主らの使命だ!」


 そう、テロリストに判別試験は占拠された。駿は、一番弱い相手をエマや千夏と協力して相手にするのが精一杯だった。要は力が足りていないのだ。毎日の筋トレの量を少し増やして、ランニングの距離も増やすべきかもしれない。

 少しして、校長の話が終わった。駿ら新入生はそれぞれの教室へ向かった。

 駿の席は教室の廊下から二番目の列の前から二番目の席だ。右にはトムが、前にイシュ後ろにはエマ、左に千夏、右後ろがマーク、そして、左後ろにはいつか話したラズリが座っていた。


「駿さん、千夏さん。お久し振りです。覚えていますか?ラズリです」

「ええ。覚えているわ。これから、同じクラ………」

「HEY、ナイスバディなビューティフルレディ!お……僕がトム・メラルドでございまする!今度お食事でもいかがかな?」


 千夏の話を遮り、トムがおかしなテンションでラズリを口説こうとする。しかし、キャラ崩壊もいいところだ。というか、トムはこんなにも軟派な男だったのか。駿はトムを横目で見ながら思った。

 そう言えば、千夏やイシュにはこんな反応を示さなかった。余裕がなかったからか、それとも、タイプじゃなかったのだろうか。


「ちょっと、トム!いきなり、邪魔しないでよ!」

「なんだい、嫉妬か?モテる男は辛いねぇ」

「羨ましいな。お前モテるのか」

「はぁ!?なに勘違いしてんの?って、駿もそんな羨ましそうにしてないで、なんとか言いなさいよ」

「えっ、うーん。要は、千夏はトムがモテないって言いたいのか?会って一日しか経ってない友達にそんなこと言うなんて、ひどいぞ?」


 千夏は、幻滅した。とでも言うかのようにため息をついた。そんなに変なことを言っただろうか。駿は首をかしげた。


「あ、ラズリ。さっき言おうとしてたのは『同じクラスだから、よろしくね』ってことよ」

「あの、トムさんのことは………」

「気にしないことにしたわ。多分気にするだけ時間の無駄よ」

「ひどいぜ、キューティガールズ!」


 駿もトムのおかしなテンションに呆れてきてため息をつく。そのとき、後ろから肩を叩かれる。駿が振り返ると、エマの指が駿の頬に当たった。


「えへへ、引っ掛かったね」

「いや、つい。いつもなら引っ掛かんないんだけどなぁ」

「これ、入学式が始まるちょっと前に、イシュが教えてくれたんだぁ。ね?」

「お前か!」

「あはは、こんなイタズラに引っ掛かるなんて、駿くんは単純だなぁ」

「駿さん、イタズラ被害者の会でも作りますか?」

「マーク、お前もやられてたのか」


 思わぬ仲間を見つけた。駿とマークは同時にため息をつく。近くの席の皆が何となく打ち解けたところで、教室の扉が開き、どこか見覚えのある先生が入ってきた。

 燃えるような赤毛を三つ編みにしている。髪型こそは変わっているが間違いなく、ミーティアだ。


「みなさん。席についてください」

「………こんにちは。そして、入学おめでとうございます。私はあなた方の担任となりました、ミーティア・ゲルナスです。出来るだけ、ファーストネームで呼んでいただけると幸いです」


 ミーティアは穏やかな笑みを浮かべ、そう言った。

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