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烏天狗の祠  作者: 片岡麦
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‐序章‐

 

 ・・・。あれ?僕は、あたりを見回した。

 いったい僕がいるこの場所は、なんなのだろうか。周りには、木々が鬱蒼と生い茂り、まるで僕を包み込むようにそこにあった。どうやら、この場所は、森のようだった。

 しかし、僕の幼い記憶では、自分の住んでいる地域には、そのような場所は存在していないはずだ。森や山は地図上でも存在しない。どのようにして、こんな場所に来てしまったのか。僕には皆目見当がつかない。

 どうしよう・・・。ここが何処か分からない。自分がいる場所がわからないせいで、自分がどのようにして動けばいいのか思い浮かばなかった。

 焦る気持ちだけが募り、どんどんと自分の体中から、汗が滝のように流れでて、体が冷えていき震え始めているのを感じた。

 とりあえず、家に帰りたい。それに、帰らないといけない。お母さんからのお使いで、スーパーで買い物をしていた帰りなので、自分の片手にはスーパーのレジ袋がぶら下がっている。早くおうちに帰らないと、お母さんに怒られるし、食材が腐ってしまう。どうやって家に帰ろうか?帰りたくても、道が分からない。

 僕の心は、更に焦りに見舞われ、焦燥感がひどくつのった。周りにそびえている木々たちは、僕の気持ちに呼応するように、どんどんとその暗さに深みを増していった。僕の心には、新たなものが宿り始めていた。恐怖心だ。

 僕は、何処かに出口へと繋がる道はないだろうかと、辺りをキョロキョロと見回した。すると、遠くの奥のほうではあるが、一筋の光がチラリと光っているのが見えた。あの光の場所は、安全な場所なのだろうか。安心感と同時に焦燥感が体の中を駆け巡ったが、僕は少ない脳みそで必死に考えて、あの光の先に出口があるかもしれないと思うようにした。もしあれが、本当に出口だったら・・・。僕は、やっと見つけることが出来た、希望という光に向かってかけだした。その光が、本当に希望の光でありますようにと願いながら。一歩一歩、足をもつれさせながら走るのだった。

 僕は、光に向かって走りに走った。すると光が少しずつ強くなっていくことに気付いた。出口が近いのかもしれない。僕の少しの期待感は、絶対的な確信へと変わっていった。先は、強くなっていく光は、その大きさも増し、まばゆい光が僕に降り注いだ。

 やった!!!出口に出れる!僕は喜びで打ち震えた。出口・・・。もうすぐで出口だ・・・。光が強くなっていくのに対して、木々も減っていく。そして、前方の木々は、草むらへと変化していった。どうやら完全に出口に到着したようだ。僕は、思い切り足を踏み込んで、草むらを高らかに飛び越えた。

 「なんだこれ・・・。」

 僕の期待をよそに、それらの先にあった物は、出口などではなく・・・。古い木で出来た小さな家だった。木は、薄汚れており、観音開きの扉の先には、小さなお地蔵様がヒョッコリと顔を見せていた。

 「祠だ・・・。」

これは、お母さんに聞いたことがある代物だ。ここには神様が住んでいると聞いたことがあった。どうしてこんなところに、祠があるのだろうか。僕がそんな事を考えていると、ふと後ろの方で誰かの声が聞こえた。その声は、まったく聞き覚えのない声ではあったが、ひどく懐かしさを感じさせる声だった。

 体中は振り返ってはいけないという警告を鳴り響かせていたが、僕は耐え切れずに、思いきって後ろを振り返った。そこにいたものを見て、僕は絶句した。そこには、大きな烏が立っていた。その大きさは、普通の人間をはるかに凌駕する大きさをしていた。2Mくらいあるかもしれない。そして、その烏は、山伏の井出立ちをしていた。

 僕はいぶかしげに、烏の上から下までなめまわすように見ていると、烏は穏やかに諭す様に言った。烏の嘴で話していたので、その声にはかなりの違和感を感じた。

「坊や、御帰りなさい。ここにいてはいけないよ。さあ、送ってあげるから御帰りなさい。この祠はね・・・。」

 烏の言葉には、何か不思議な睡眠作用でもあるのだろうか。僕は急な睡魔に襲われた。

 この奇妙ないでたちをした烏は、なぜ、こんな事を言うのだろう?この祠には、何があるんだろう?僕は、最後の力を振り絞って烏に尋ねた。

 「じゃあ、教えて。あの祠は何?」

 「あの祠は・・・。」

烏は、何かを言いかけて途中で、口をつぐむと、困った風に苦笑いした。そして、何も言わずに、手を祠にかざすと、扉がギギィと軋む音を立てて閉まった。カチリと音を立てて、扉が閉まると、再び烏は祠に手をかざした。すると、再びギギィと軋む音を立てて、扉が開いた。

 僕が、その祠の中を覗き込むと、そこにあったのは、お地蔵様では無かった。その中にあったのは、なんだかとても良い物だった。

 そう感じた途端に、僕はいつの間にか、自宅の自分の部屋のベッドの上で寝転がっていた。


『烏天狗の祠【上】』著・菊池英子 集衛社文庫より 一部抜粋

 途中までの作品ですが、途中まで読んでくださりありがとうございます。この作品は、実際は完結まで書き終わっているので、違うサイトから内容を移した物になります。

 ですが、前サイトのバージョンでは、内容が薄いうえに、文章もお粗末な物となりますので、かなりの変化があると思います。

 この作品は、一作目ながら、えらく途中からの始まりのような作品になっており、正直「なんじゃこれ」と思われることが多いような物になっています。

 ただ、この作品からでないと、ただでさえ長い物が、とてつもない分量になるので、途中の時系列からも進行になります。ご了承ください。

 それでは、第一部完結まで、ごゆるりとお楽しみください。

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