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私はM-157





 ガガ、ザー……




 私はM-157


 型式番号MはMACABREの頭文字らしいが、起動されたばかりの私には意味はわからない。


 その後の157は、『イチゴーナナ』と読み、それぞれボディ、エンジン、AIの製造番号を表している。157ということは、体は初期型、動力は中期ぐらいだ。しかし、AIは、今現在までは『6』までしか製造されていないので最新型というわけだ。


 起動したばかりの私の目に映ったのは、うれしそうに喜ぶ白衣の人間が三人。後は鉄製の床と壁、人間達と私を隔てる強化ガラスだけだ。


 喜ぶ三人の人間のうち一人が私の足元まで来る。彼は、私が入っているカプセルに取り付けられているキーボードを操作した。


 しばらくたつと、私の頭の中に情報が流れ込んできた。マスター、ケーゴ・タチバナ。


 どうやら彼の名はケーゴ・タチバナというらしい。私は彼をマスターとして認識した。


『マスター認識、ケーゴ・タチバナ』


 私は、私の制御装置の指示に従い、そう言った。


「よし、マスター登録完了っと。もう出てきていいよ」


 ケーゴ・タチバナがそう言うと、カプセルの強化ガラスが上に上がり、私はカプセルから出た。


『マスター、ケーゴ・タチバナ、初めまして。私はM-157です』


 制御装置がいちいちうるさいが、逆らう理由がないので従う。どうやら自己紹介というやつをしたらしい。


「うん、初めまして。俺のことはケーゴだけで呼んでくれ。マスターとタチバナはいらない、いいね?」


 制御装置が従えと指示してくる。逆らう理由はない。


『了解、ケーゴ』


 ケーゴ達はうれしそうに何やら話し合いをはじめた。私は指示を待つ。



 ふと考えた。



 機械であるはずの私が考えるなど奇妙奇天烈きみょうきてれつといったところだろう。しかし、私は考えている。なぜだろう。


 私のメモリにある機械のデータによると、確かに考えはするが、それは制御装置から考えろと指示があったときだけで、自分から進んで考えることなどない。


 自分から考えるのは、私のメモリにあるデータによると……


 【生きもの】


 だけとなっている。漠然としている。


 生きものと言っても、色々ある。植物だって生きものだ。


 彼らは考えではなく、本能で生きている。単細胞生物もだ。


 では、私はいったいなんなのだろう。


 生きものでもないのに考えている。


「……そうだな、稼動率は試作機から取ったから実戦データから取るか。M-157」


 呼ばれた。反応しろと制御装置がうるさい。私は考えているのだ、おとなしくしていろ。


 私は制御装置をAIから切り離した。これで私は司令塔を失った。だが、考えられる。


「おかしいな、どっか故障したか?」


 ケーゴが心配そうに私を見てくる。そういえば、彼はマスターだ。一応状況報告をしておかなかければ。


『大丈夫ですケーゴ。ただ制御装置をAIより切り離しただけです』


 私がそういうと、ケーゴ達は目を見開き私を見つめた。


「嘘だろ?」


 ケーゴがぽつりとつぶやいた。信じていないようだ。


 困ったものだ。機械は信頼されてなんぼなのだから。


『本当ですケーゴ。私は嘘はついていません』


 そう言うと、ケーゴ達はますます驚いた。


「ち、ちょっと頭見せてみろ!」


 逆らう理由は、ない。


『了解ですケーゴ』


 私は後ろを向いてしゃがむ。ケーゴは私の頭を開き、中の装置を色々と操作している。


「……本当に制御装置が作動してない……」


 やれやれ、やっと信じてもらえたようだ。


「……」


 どうやら、ケーゴは驚き過ぎて思考が停止したようだ。他の二人も同様だ。


「……ジュディ、上への報告は延ばそう。こいつは調べたほうがよさそうだ」


 ケーゴは私の頭を閉じて、後ろの女性に言った。どうやら彼女はジュディというらしい。


「わかったわケーゴ、なんとか誤魔化しておく」


 ジュディはそういうと、私に近寄ってきた。


「不思議なコ……」


 ジュディは私を一撫ですると、名残惜しそうにこの部屋を出た。


「さて、明日からまた忙しくなるぞ……。M-157、この部屋からは出ないように、いいね?」


 本当は外の世界とやらを見てみたかったが、ケーゴの命令だ、従う。


『了解ですケーゴ』


 不思議と、制御装置が言うよりもケーゴの言葉はうるさくなかった。


 ケーゴは残りの白衣の男と一緒に部屋を出た。



 せっかく静かになったので、私はなぜ考えることができるのかを考えてみよう。







 答えは永久に出てこないような気がするが……

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