だいさんわ「出撃なのですよ~」
戻る方法を見つけるためにキッチンまで降りてきた俺らは、どうすればいいのか困っていた。食べ物の味で変身するかどうかを調べるといっても味なんていくらでもあるんだぜ?ミリアが知っているだけでも種類は1000なんて余裕で超えているそうだから戻れる味となる味を調べるなんてそれまた大変だろ……。
とりあえずはフルーツ味の飴といろんな味のガムを用意した。我が家には大量の飴があるのでフルーツ系統の味は飴だけで大体網羅できる。珈琲味なんかもあるから基本的には大丈夫だろう。この飴は事あるごとに美海が持って来ては忘れて置いて行ったものを俺がちゃんと保存してあるものだ。持っていくように言っても忘れるので俺がちょくちょく食べて消費しているのだが減る気がしないな。10袋はあるし……。
ガムに関しては俺が大量に貯蔵している。集中したい時に噛んだりするからたくさん買いだめしている。
これで普通の味は網羅できただろうと思う。だけど、味で戻れなかったらと思うとやばい。めんどくさい手段とやらは本当にめんどくさいものらしいし。……今度聞いてみるか……。
「じゃあ、まずは……」
まず手始めにと飴の袋を手に取った瞬間、ミリアのいる方から何かが騒ぎだした。
「異常事態発生。異常事態発生。プルーフの出現が予測されました。出撃してください。繰り返します。異常事態発生。異常事態発生。プルーフの出現が予測されました。出撃してください」
……。何か?初任務ってか?
時間をくれよ時間を……。
「では、行くのです」
「無理だ。変身できない」
「そんなもんは外に出てから考えるのです。では、行くのです。出撃なのですよ~」
ミリアはそういうと俺の服の袖を持ち引っ張っていく。なんだよこいつ。見た目ちっちゃいくせにものすごく力あるぞ?
外に出るとまず感じたのは肌寒さだった。考えても見ろよ。見た目小学生の低学年の女の子がYシャツ一枚なんだぜ?いくら、まだ春の初めだからってこんな格好をしていれば寒いのは当たり前だ。
だが、そんなことは関係なしとばかりに俺を引っ張っていくミリア。
しばらくすると、家の近くの公園にたどり着いた。
「ここが出現予定の場所か?」
「ハイです。では、出てくる前に変身しちゃいましょうです」
「つうことは、今ここで恥ずかしくも唱えなければならない変身の呪文を考え出して唱えろと?」
「そうなのです。出現まで時間があんまりないのでできれば早めにお願いしますですよ~」
「ああ、そうかい」
俺は、そう言って考えを巡らせ始めた。
ミリアはなんて言ってた?雷の力を表す言葉と自らを表す言葉を入れろだったかな。
正直俺は別に厨ニ病の患者ではないのでその手の物にはさほど詳しいわけじゃない。もちろん、ライトノベルとやらは軽く読ませてもらったことはあるけども、俺は漫画の方が好きだった。まあ、そんなわけで考えろと言われても思い浮かばんのが現状だ。
俺の知識の少ない脳みそから情報を絞り出す。
雷か……。日本で言うとなんだ?建御雷神かな。外国の神話ならトール?ミョルニルか。でも、そこらへんの言葉から紡ぎだすのは難しいな。
ふむどうしたもんか。考えれば考えるほどどつぼにはまっていく気がするな。マジでどうしたもんか。
「まだなのですか!?そろそろ、出現予定時刻なのです!」
やばいな……。思い浮かぶ気がしない。
もっと簡単に考えよう。
そうだな、無理に難しく言葉を並べる必要はないな。
「じゃあ、行くぜ!」
「決まったですか?じゃあ、渡したヴォルフラムを掲げて唱えてほしいのです」
「おうよ。
『我に宿るは空を駆ける雷光なり。我その全てを持って、敵を討つ者とならん。今、この手に魔法を宿せ』」
「チェンジ・マジカルガールです!」
「チェンジ・マジカルガール!」
そして辺り一面は白い光に包まれた。