だいにわ「何故そんなことせにゃならん」
俺は突如として現れた妖精らしき小さな生き物にとりあえずお茶を出した。何故そんなことしたかって?こいつは俺がこうなってしまっている、つまり小さな女の子になってしまっている理由を説明できそうだったからだ。
理由も分からずこのまま放置されても困るし、戻れないとなるともっと困る。
「で、お前さんの正体をもう一度教えてくれ」
「僕ですか?僕はミリア=クラインです~。一応、女の子ですよ?」
「そんな情報はいらんわ」
「すいません。いつも間違えられるんで。
所属はメルファント公国直属魔法少女機関です」
「それはどういったもんなんだ?」
「簡単に言いますと様々な世界から魔法少女になれる素質をもった人物を選びだしていろんな世界の共通の敵であるプルーフと呼ばれるモンスター(?)を倒してもらうことを前提に活動を行っていますですよ。後は、プルーフを操って犯罪を犯す人たちの粛清も行っているですよ~」
「それになぜ俺が手を貸さなきゃならん」
「ええっと、素質を持ってたから自動的に選ばれてしまったんですよ~。僕に罪はないですよ?」
「理由になっていないぞ」
「ですね。簡単に言うと選ばれてしまった人には強制で魔法少女になってもらっているんですよ~。じゃないと最悪、世界が崩壊してしまうんですよ~」
「案外ヤバい話だな、おい。つか、自分たちでどうにかしたらどうなんだ?」
「出来ればこうして魔法少女になってなんて言わないのです。で、ですね。そらちゃんには魔法少女として戦ってほしいんですよ~」
俺はその言葉を聞いて顔に大量に青筋を浮かべた。
「あぁん(怒!!」
「ぴぃ!」
なんか可愛い声で鳴いたな、おい。
「何故俺がそんなことせにゃならんのだ。ただでさえこんな子供しかも女にされたのにだ」
「ふぇ?どういうことですか?」
「俺は男だっつってんだよ。さっき突然こんな女の子の姿にされて困ってるっつってんだ。明日も学校があるし、戻らんと困るんだわ」
「まさかそんなことになってるんですか!?こ、これはすごいのです。男の人に適性が出たの自体がとても珍しいことなのです」
「つか、戻し方わかってんじゃねぇのか?」
「分りませんですよ?個人によって戻り方が違うのです」
「なんだよそれ……」
「たとえば、願っただけで戻れる人もいますし、複雑な手順を踏んでようやく戻れる人もいますですよ~。でも一番多いのは、食べ物の味系ですね。
ああ、後言い忘れていたのですが、基本的に魔法少女に選べれるのは女性ですよ?で、小さくなるで済むはずなのですが、あなたの場合は男性なので、女性化も混ざってしまっているのですよ~」
「なるほどな。まあ、いい。今日中に戻れれば気にはしないからな。後、魔法少女はやらんぞ?」
「え?それは困るんですよ~。主にそらちゃんが」
「ちゃん付けでいうんじゃねぇよ。で、どういうことだ、それは?」
「選ばれてしまった人が魔法少女をやらざるを得ない理由ですけど、魔法少女にする際に使われるものに起因しているのですよ」
「なんだ?」
「死んだ少女の魂ですよ。特に未練の強い子のものは最高ですね」
絶句した。じゃあ、なんだ。俺には死んでしまった少女の魂が入ってると?
「魂っていうのは基本的にものすごいエネルギーを持っているのですよ~。消費しないと戻れなくなりますですよ」
「つまり、魔法少女とやらをやらなければ俺は元に戻れなくなると?」
「ハイです。ちなみに最悪、入れた魂のもともとの持ち主と同化して精神まで幼くなります。
あ、消費しすぎても危ないんですけどね。最悪、死ぬか廃人になりますですよ~。
適度な戦闘と適度な休息で魂のエネルギーバランスを取らないといけないのですよ~」
なんてこった。つまり、俺は魔法少女とやらをやらなければ元の姿のままでゃ居られないうえに戦闘しすぎれば死ぬんですか?何この脅迫?
「明らかな脅迫だな~、おい」
「仕方ないのですよ~。当初はそのような事実はわかってなかったのです。後でわかったことなのです。でも、システムを構築し終わっちゃってこれ以上はどうしようもないので現状維持のままやってるんですよ~」
「っつうことは、俺は一生魔法少女とやらをやらなければいけないのか?」
「違うのです。ある程度魔法少女として活躍すると、魂と対話できるのです。そこで、折り合いをつけられれば魔法少女として活動しなくてもよくなるのですよ~。
でも、そこまでいける人も多くはないのです。死んだりしてる人も少なくは無いのです」
「そうか……。まあ、いい。取りあえずは魔法少女をやらんと死んじまうってわけだな?」
「はいなのです。後、その姿なのですが、たぶん入った魂の少女の姿だと思われるのですよ~」
「そうなのか……。そいや、男の状態でも魔法少女になれんのか?」
「無理なのです。女性でも小さくならないと変身できないのですよ~。そこらへんのシステムはまったくもってわかってないのですよ~」
「それはいいんだが、変身するって言ったな。そういった道具とかあるのか?」
「はいです。これがそうなのです」
渡されたのはやたらとファンシーなぬいぐるみだった。
「…………」
「……ちょっとは反応して欲しいのです。冗談ですよ?」
「一瞬、お前をどのように始末してやろうか考えたぜ」
「ぴぃ……、お願いですからそんなことしないでください」
「まあ、いい。なら、さっさと寄こせ」
「ハイなのです」
渡されたのはペンダントだった。先端には宝石のようなものとそれを囲む装飾が付いていてとてもきれいだ。装飾は翼のようなものが形をしていてそれに囲まれた黄色い宝石が映えていた。
「名前はヴォルフラム。最高級品ですよ」
「なんで最高級品なんかを持ってきたんだよ?」
「え?だって、そらちゃんに入ってる魂がとても強い力を持っているからですよ~。最高級品じゃないと持たないんですよ~」
「ちゃん言うな。そうなのか。全く数奇な運命を感じざるを得ねぇ」
「全くです。男性で魔法少女に適性のある人は基本的に強くなる人が多いのです。ですけど、此処まで強い魂を宿すことはありえないはずなんですけどね~」
「そうなのか?」
「ハイです。そもそも、魔法少女は女性しか適性が出ないはずなのです。ですが、たまにその適正をもった男性もいるのです。ですけど、もともと受け入れる器の大きさが違うので強い力をもった魂は入れないはずなのです。まあ、男性がなる場合は別の理由で強くなるんですけどね」
「どういった理由だ?」
「女性より男性は創造力が豊かなのです。特にファンタジーなどについての知識はすごいのです。ですから、魔法の扱いがうまくなるのです。だから、弱い魂でも強くなるんですよ。下手すると、最高クラスの魂を入れられた女性を最低クラスの魂を入れられた男性が超すこともあり得ない話ではないのです」
「そうなのか……」
ということは俺はどれだけ強い存在になるのだろうな。
「変身の呪文ですけど、設定しなきゃならないのですよ。どうするですか?」
「どんな言葉でもいいのか?」
「少し違うのです。そらちゃんの力は雷の力になるはずなのです。なので、雷の力を表す言葉と自らを表す言葉を入れて完成するのですよ~」
「そうか。とりあえず、そっちは考えないで戻るための手順を見つけようか」
俺の発言にミリアは抗議を入れた
「何でですか!今すぐ考えるものじゃ無いのですか!?」
「だってさ、戻る方法を見つけておかないと明日の朝に幼馴染が来て最悪、魔法少女にされてしまったのがばれかねん」
「そ、それはそうなのです。わかりましたです。まずは過去のデータから考えてみるのです。まずは食べ物の味ですね」
こうして俺らは戻る方法となる方法を探しにキッチンまで行くのであった。ちなみに俺の今の格好はYシャツ一枚だけだ。男の夢の一つである裸Yシャツを自分で実践するはめになるとは思いもしなかったぜ。