だいにじゅういちわ「さぁ、この犬を倒すために私は捨て犬になろうか」
※タイトルのミスを修正
タイトルが「11」になっていました。
正確には「21」です。
何故だ!何故だ!!何故だ!!!!
我は幾度もやつらを喰って来たのだ。こやつら程度に圧倒されるはずがないのだ。
『ぐあああああああああ!』
この体が斬られた記憶はない。なのにもかかわらず、目の前の餌は何の問題もないかのようにこの我の体を切り裂き、この我に傷をつけていく。
あり得ない。だんだんと恐怖というものを体が覚えていくかのようだ。もちろん我にそんな感情はあるわけもない。
だがその我が、喰って得た知識とはいえ、その感情と言えるものを感じている。
「ちっ!かってぇんだよ!」「はぁぁぁ!!」
小娘二人に押されている状況。この我が負けるわけなどない。そうだ。負けるわけがないのだ!
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
マジで固い。これがSS級か。
あの子からもらった知識ではわかってはいても、やっぱり体感したこととの差異には驚いてしまう。
「美海。あれの弱点とか「知ってるわけ無いでしょ!!」……ですよね~」
そうだよな。そんなの分かってりゃ、俺が起きるまでに倒しているか。
「せめてあれを発動する時間を取れりゃいいんだけどな……」
最初にプルーフと戦った時の記憶もあの子からもらっている。あの時のあれを今使えば、十分にあいつを倒せる威力を得られるはずだ。
だけど、あいつの攻撃をかわしつつ詠唱できるほど簡単な魔法じゃない。それだけ威力のある魔法を発動するのは難しい。……あの時は俺じゃなくてあの子が主導権を持ってたんだから当然か。
「……時間」
「ん?」
「どれくらい時間を稼げばいいの?」
美海の言葉に少し驚く。だけど、考えてみれば美海は一人で十分間は戦っていたはずだ。
「5分……。いや、3分頼む」
前回は簡単な発動だけだから、詠唱だけで済んだんだろう。だけど、今からやるのは本気の魔法であり、最強クラスの儀式魔法。おおよそ、魔法少女が使うようなものじゃない。だけど、きっとこれしかあいつにとどめを刺すことはできないはずだ。
「分かった。ちょっと辛いけど頑張る」
俺は、その言葉を聞いてすぐに詠唱を始めた。
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ソラが何をしようとしているかはわからない。だけど、それはきっとあいつを倒すための何かであるのは間違いない。
なら、私がやることは一つだ。ソラのためにできることをする。それだけだ。
「どりゃぁぁ!」
糞犬の横っ腹をぶっ叩く。
『ぐぬぅ!』
負けじとこっちへ突っ込んでくる糞犬。正直、汚染がちょっときつい。狂化が切れかかっているからだ。だから、いつあいつに意識を乗っ取られるか気が気じゃない。
でも、ソラは私に3分稼いでといった。なら、私がやることはそれだけだ。
汚染だろうが何だろうが関係ない。ソラの魔法が完成するまで時間を稼ぐだけだ。
さぁ、この犬を倒すために私は捨て犬になろうか。