だいにじゅうわ「果たすべき約束があるからな!」
遅くなって申し訳ありません。
20話です。
やるべきことは単純だ。目の前にいる糞犬をぶち殺せばいいだけだ。
だが、近づくわけにはいかない。もう、同じような目には合わないと断言できるが、あの精神を汚染してくる何かは判断を鈍らせる効果は十二分にあるはずだ。
美海がどういう手段でそれを防いでいるかはわからないが、やりようはないわけじゃない。
「守れ、スパークフィールド」
自分の周りとミラの周りに電気の膜を張る。バリアと言ってもいいかもしれないが、あくまでも相手が近づけないようにするものであり、性能もそこまでよくはない。まあ、やれることをやるだけだ。
「ミラ、あいつをどうにかできる魔法は使えるか?」
「あったら使ってる!」
「怒るなよ」【注:ソラはミラが狂化してることを知りません】
どちらにせよ、あいつを倒さない限りは何も進まない。
「なら俺が何とかする。だから、一緒にあいつを倒そうぜ、美海!」
「……うん!」
よし、始めようか。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
ソラは、私に薄い電気の膜を張ったみたいだ。だけど、そんなものであの糞犬をどうにかできるなんて思えない。
「とりま、あいつに仕掛けるんで援護頼むわ」
ソラはそう言うと私を置いて突っ込んでいく。対策もなしにあいつの近くに行くのは危険だ!
「ソラ!そいつは!」
「知ってる!でも、もう大丈夫だ」
そういうとソラは詠唱を完成させて、杖を変形させていた。あれは……剣?
「そいや!」
という声とともに振り回されたそれは、ものすごい勢いで伸びて糞犬にぶち当たる。
『ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
おお、すごい悲鳴。興奮しちゃう。いやいや、興奮しちゃダメでしょ、私!
でも、変な感覚がする。ソラの魔法はこの前までと全く違う。
前までは、何というか普通の魔法少女だったのに、いきなりベテランになったみたいな……。
考えていても仕方ない。ソラを一人で戦わせる理由はないしね。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「切り裂きて吹き飛ばせ、サンダースラッシュ・エクステンド!」
『ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
生まれ変わった魔法。彼女と出会うことで進化した魔法。正直ここまで強くなってるとは思わなかった。
明らかに違いが見て取れる。威力そのものが全く違うし、性能も桁が違う。むしろ、今まで使っていた魔法が子供の遊びだったんじゃと思ってしまうくらいに違う。
あいつにダメージを当て得られてることからもわかる。さっきもらった記憶の中に美海の魔法があいつにほとんどダメージを与えられていないことも分かっているから、違いがよくわかる。
「すげぇ……。いやいや、感心してちゃいけない。やることやって、あいつを殺しにいかないと……」
意識を入れ替える。彼女は俺のことを待っているはずなんだ。いつまでも待たせるわけにはいかないしな。
「悪いが、さっさと終わらせてもらうぜ。果たすべき約束があるからな!」
なかなか進まない……。