だいじゅうろくわ「私を喰べて」
……夢を見ている気分だ。
自分から化け物へ身を差し出す夢。
絶対にやるはずのない行動であり、気持ちが悪い夢。だけど、どこか心地よく感じる。
化け物に触れられるたびに削れていく何か。どんどん薄くなっていく感覚。
俺はここで死ぬのだろうか?
夢を現実に感じながら、俺はまた眠りに落ちていく。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
気持ちいい。
私は彼にゆっくりと喰べられながらそんな事を思っていた。
この廃工場についてすぐに私は、
『私を喰べて』
と懇願した。
最高の快楽に身をゆだね、死んでいくことこそが至上の喜び。彼に喰べてもらうことは最高の快楽。
ああ、なんて喜ばしいことなのだろう。
彼はひと思いには喰べずにゆっくりと食べてくれることも私に更なる快感を与え、私はさらに心を弾ませる。
ああ。早く私の全てを喰べてほしい。心の底からそう思う。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
「SS級プルーフの討伐記録は一度しかありません。ですから、参考にはなりません」
「分ってる。ミリアは私にどうしてほしいの?」
「空を……ソラを救ってほしいのです」
「決まってるよ。私は、最初からそれ以外のことは考えてないよ。それに私から空を奪うことは誰にだってさせない」
私は宣言する。
これまでも、これからも、空は私のものだ。
さすがに自分でもどうかと思うけど、それでも私は空をだれにも渡したくない。
さあ、あの糞犬を殺しに行こう。
心が黒く染まっていくのを感じながら、私は進んで行った。