だいじゅういちわ「……はぁ。いい加減にしてほしいぜ」
あの日から一週間が経過した。世の中は何事もなく平和なまま時間を刻んでいる。
夜の哨戒と昼の授業の相性は最悪で、眠気が消えない今日この頃だ。そう言えば、美海の奴も眠そうにしてたが何故なんだろうな。
とりあえず、今のところは例のプルーフは見つかっていないということだ。早く出てきてほしいもんだがな。勉強が滞ってたまらん。
「ソ~ラちゃん♪」
「ん?どうした?」
「んへへ~、呼んだだけ~♪」
「おいおい、哨戒中だぞ。しっかりしてくれ」
こうして、夜二人で見回るようになって以来こいつは何故か俺に懐いてくる。良く分からんが、悪い気はしない。だが、任務中なんだからしっかりしてほしい。
「ソラさん。ミラがご迷惑をおかけしてるようですいません」
「もう、チェチェンひどいよ~」
「事実でしょうに、少しは自覚なさいな。ソラさんが困っているではないですか~」
「なのですよ~」
「でも、やめな~い♪」
分っているとは思うが、今現在俺は困りに困っているわけだ。まあ、言っても聞かないから既に諦めている。出てきたときに動いてくれれば、俺は文句は言わない。
「ふぅ、今日も空振りかな……」
溜息をつく。俺は一週間も続くこの生活リズムに馴染めないため、体が悲鳴を上げ始めている。
正直なところ、こんなことは勘弁願いたいのだ。魔法少女なんてもの、俺には合わない。だが、解放されるためには時間を必要とするらしいからどうしようもないな。
「ミリア。やっぱり、何も感じないか?」
「残念ながら、感じないのですよ」
「……はぁ。いい加減にしてほしいぜ」
そんな軽い思いをしていた。この後に待ちうける災厄を知らないで……。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
極上の香りがした。これは、今まで感じたことがない極上の香りだった。
何年もの間、『彼女ら』に追われながら喰らい続けているがこの芳純で熟成したような匂いを放つ者はいなかった。
喰いたい。だが、ここまでの強烈な臭いを発している以上は、かなりの強さを持っているはずだ。様子を見てやるに越したことはない。
何、時間はある。この匂いを放つ『彼女』を喰らうのを楽しみに、腹を空かせて最高の一撃にて葬り喰らおう。
ああ、楽しみだ。我慢ができるかわからないほどに……。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
嫌な気配を感じた。いや気配というよりは悪寒。なんというか、あの「くしゃみが出たら噂されてる」と同レベルの感覚だ。
ミラの方を見る。彼女は何も感じていないようだし、この感覚は俺だけが感じているようだ。
「おい、ミリア。何か感じたか?」
「いえ、何も感じないのですよ。というか、どうしたのですか、いきなり?」
「いや、悪寒を感じたんでな」
「気のせいだと思うのですよ」
「だといいんだが」
今日はここまでにしよう。
俺は、嫌な感覚が消えぬまま今日の解散を告げた。悪寒の正体を知らぬまま……。