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第27話

アイシャ達が激闘を繰り広げる中、『緋色の旅団』本拠地、正面では弥勒らも戦闘を繰り広げていた。


「トスカナちゃん!」

「はい!!。」

ローラを送り届けた志穂さんも弥勒達に合流して、トスカナと共闘している。


トスカナは宙に浮かぶ聖書を使い、目の前の敵を殲滅しようと、あらゆる角度から爆撃を引き起こす。更に、志穂さんが爆撃により飛び散った石などを瞬間移動させ、再び攻撃の一手にする。


あらゆる轟音が聴覚を、爆炎と砂埃が視覚を奪う中、そいつは倒れることはなかった。


「カカッ、おいおい、こんなものかよ。噂の『七柱』は。俺と変わった方がいいんじゃね?」

ヘラヘラと笑いながら、そいつは砂埃から現れた。


ボクシンググローブを付けた手をだらしなく下にぶら下げた、アフリカ系の黒人男性、ボブである。ニヤついた口元から、黄ばんだ歯が見え隠れしている。


ボブは上半身裸で、細身ながらもしっかりとした筋肉を持ち合わせている。

あれだけの攻撃の嵐の中、その身体には傷一つ無かった。


(結界系の能力か?それとも、瞬時に回復ですかね。どちらにしろ確かめる必要がありそうですね。)

そんなボブを見て、志穂は瞬時に考える。チャールズほどの解析能力は無いにしろ、幾つかの仮説を立てられるのは今までの経験の賜物だ。


ならば、と志穂はボブから見えないように背中に手をまわした。その手には長さ約10㎝の針が3本握られている。


(まずは確実に当てる!!)

瞬間移動を行い3本の針を飛ばす。ボブの正面、真下、そしてボブの死角の後ろから針が襲い掛かる。

対してボブは、ありえない動きをしているように見えた。反応が早すぎるのだ。まるでそこから来ることが分かっているかのようなどこか余裕のある動きだった。

上体をふらつかせる。それだけの動作で針はまっすぐに、空を切ることとなる。


「なっ!?」

避けられるはずのない攻撃に目の前の光景との矛盾が、動揺を誘う。


(結界でも、回復でもない?予知能力...でも爆発の後の二次被害までは予測はできない。)

志穂の考えがある一つの可能性を導く。『時間』を操作しているのでは、と。


「志穂さん、その考えは危ないよ。」

思考の波に囚われていた彼女にトスカナは忠告する。修道服に身を包んだトスカナからは落ち着いた雰囲気しか感じられない。


「もし、そんなことができるなら私たちはとっくに消されてる。それに、私達には彼が動いているのが見えています。」

トスカナは至極当然のように言う。


「それに、」

トスカナはそう言って詠唱を行う。

「彼の能力はおおよそ理解しました。」


詠唱を終えたトスカナの背中より後ろの空間が熱を持ったようにぐにゃりと曲がる。

彼女の、トスカナの周りの温度が急激に上昇したのだ。まるでトスカナの周囲をドーナツ状に囲むようにだ。

その状態でトスカナは一歩、大地に足を踏み出す。熱が地面を焦がし、空気を沸騰させる。


「さぁ、祈りなさい。」

透き通るような声で彼女が言葉を紡げば、それに呼応するかのように空間が更に捻じれる。

そして、その捻じれがボブの射程圏内へと入ったとき、異変が起こった。

「ッ!!!!!!!」

じゅわっと音を立ててボブの右腕が湯気を上げ始めたのだ。とっさに手を引っ込めたボブは体ごと後ろへ飛び去る。ボブの表情には先ほどまでの余裕の笑みは無く、寧ろ何が起きたのかと未知の存在に対する警戒と焦りで埋め尽くされている。その右腕はいまだに湯気が立っており、皮膚は真っ赤に焼けただれ。水ぶくれが大量にできている。


「...何をしやがった?」

「何...ですか。単純なことです。目では見えない、かといって攻撃のモーションすらないそんな攻撃を貴方にぶつけただけのことですよ。おそらく、貴方の能力は『常人の何十倍も優れている反射神経』なのでしょう。時間操作の能力は、私たちに動きが見えている時点で可能性から外れる。先ほどの爆撃の副産物である無造作な動きをする飛び散った破片を避けるなど、それは予知能力の範囲から逸脱している、ということはおおよそ絞られるでしょう。この男の能力は私たちに見える動きだが、その動きは到底私達みたいな人間が出来るものではなく、かといって予知能力ではないとすれば攻撃が行われてから自分に着弾するまでの間に何らかのアクション、能力を使う以外ないということです。」

トスカナは持論を述べていく。それを聞く男の顔は酷く歪んでいた。


「そこで私の能力『絶対信仰(神はここにいる)』が役に立つというわけですよ。この能力は酷く曖昧なもので、発動者の信仰心に左右される能力です。その信仰心の強さによって発動者の願いを叶える過程を決めるものです。あぁ、勿論、宗教上違反になる人体錬成、命の再生などは不可能ですよ。だってそうでしょう。無から有を作り出すことは神様の所業であるわけで、死んだのに蘇えるということは、それはすでに人としての次元を超えている。つまりは神になるということです。私の進行している宗教は一神教なものでしてそれはタブーなんですよ。話は戻しますが、私の願ったことは不可避な攻撃です。そして、その結果がこれなのでしょう。」

トスカナはニコリと笑う。その笑みは全ての罪を許す聖母マリアのようにも見えるが、悪魔の甘い囁きのようにも見える。


「話は終わりです。私のことは良いとしても『七柱』全体を侮辱したことは許しません。死して、その罪を悔い改めなさい。」

再び不可視の熱がボブの体を包み込む。その灼熱から逃れようと脱出を試みるが、

(何!?)

外に出るどころか、徐々にトスカナのいる中心に吸い寄せられていく。それに従ってその熱は温度を増していく。

「諦めなさい。」

志穂が外部から動きの鈍っているボブを瞬間移動させながら中心へとじわじわ誘っているのだ。


やがて中心へと辿り着いたとき、

「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!!!」

男の断末魔の叫びと焦げ臭い匂いが辺りに広がった

いかがでしたか?

感想、アドバイスお待ちしています。

それとお知らせですが、ハーメルンという別サイト様にて、『主人と柑橘とあせび』というオリジナル小説を書くことにしました。

http://syosetu.org/?mode=ss&nid=58


ぜひこちらのほうも目を通していただけたら幸いです。よろしくお願いします。

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