表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/30

第23話

「逃げ、ろ...。」

涙で滲む視界の中、貴方はリリスの前に立ち塞がるのが映る。


貴方の体は、ボロボロだ。そして、その心までもが、今堕ちていこうとしている。


嫌だと言うリリスの言葉は、貴方には届かない。だから、


「絶対に取り戻すから...。」

リリスの頬に涙が伝う。そう言って、リリスは、逃げた。


貴方の後ろには、リリス一人じゃ倒せない『大天使』がいる。必ずみんなで助けに来るから。






『緋色の旅団』との交渉が失敗に終わったわらわ達は、その日は宿に泊まることにしていた。

存在しない扱いのわらわ達にとって、野宿をする分には問題は無いのだが、今、この地方では、一般人がわらわ達を認識出来る異常な状態なので、念には念をということらしい。


勿論、宿に泊まるならそれ相応のお金を払わないといけないが、普段お金を使う機会が無い為、わらわ達は無一文だ。

お金の調達には、志穂さんの瞬間移動でお金を手に入れ、それを元にわらわの『物質創造』で、お金を作り出す。お金を見ることが無かったので、イメージを沸かせる為には仕方の無いことである。


そのお金を使い、宿を借りたわらわ達は、一般の旅人達に混ざって何食わぬ顔をして、夜を過ごしていた。

基本的に認識された今となっては、人間との違いは能力の有る無しぐらいなので、何もしなければ『異能者』だとバレることはない。


ガルムがいくら大声で騒ごうとも、志穂さんが酔い潰れようともただの客人に過ぎない。


それぞれがそれぞれにグループを作り、飲み食いし、話に花を咲かせる。


そんな中、弥勒様の姿が見当たらない。

わらわはそれとなく話から抜け、弥勒様を探すことにします。

いろいろと探し、屋根の上を見てみるとそこに弥勒様はいました。


屋根の上に座り、夜空に浮かぶ月を見上げている弥勒様。

その彼の隣には、体操座りをして、同じ様に月を見上げている少女がいた。


ローラだ。

その後ろ姿は縮こまっており、先程からチラリと弥勒様を見ては、直ぐに顔を月に向けるのを繰り返している。


わらわはそんな二人を隠れて見て見ることにした。


「悪かったな。ローラ。昼間は構ってやれなくて。」


「い、いえ。み、弥勒様が、わ、私なんかのこと、気、気にしないで、い、いいです。」

おどおどしながら言うローラ。耳が赤くなっている。


「わ、私は、け、穢れてますから。」

「そんなことはない!!」

ローラの言葉を弥勒様は遮る様に言った。

その声には怒りが含まれているような気がした。


弥勒様の手がローラに伸びる。

肩を抱き寄せ、ローラの頭にポンと右手を置く。


「ローラは穢れてなんか無い。こうして、頭を撫でてやれる。抱き寄せれる。何も心配しなくていい。例え、皆がお前の側に入れないとしても、俺が側に居てやる。」

弥勒様とローラが更に密着する。


「ほ、本当に?」

「あぁ、本当だ。」

ローラの身体から力が抜けて行き、安心した様に弥勒様の肩に頭を預けていた。


「な、なら、し、信じます。だから、い、居なくなったり、し、しないで。」

ローラの声はどこか弱々しく聞こえた。

わらわは、その声を最後に屋根から立ち去った。





わらわは昔のことを思い出していた。弥勒様と出会ったときのこと。

当時、わらわは未熟だった。今では『七柱』の一人に数えられるが、そのころは自分の能力の半分も理解出来て居ない雑魚だった。


『守護者』一人をやっとの思いで倒せるぐらい。

だから、その頃のわらわは常に臆病で、誰かの影に隠れていた。

そんな影から陰へ移っている時に出会ったのが弥勒様だった。


「強くなれ。」

弥勒様は手を差し伸べ、そう言った。


「強くなって、俺を守れ。」

弥勒様の言葉はすんなりわらわの頭に入ってきた。

だから、わらわはその手に自分の手を重ねた。


「それでいい。」

弥勒様はわらわを認めて下さった。










「じゃあ、そろそろ戻ろうか。」

俺は隣にいるローラに言った。ローラは物足りなそうだが、黙って俺の言う通りに立ち上がった。


「...て。」

ふと、誰かの声がした。


「た...け...。」

ガサガサと茂みが揺れる。


そこから現れたのは、

「リリス...?」

服は所々破け、汗と泥で汚れている。顔には疲労の色が見え、呼吸も荒い。


「...助けて、弥勒...。」

リリスの身体から力が抜けた様に、地面に崩れ落ちる。

俺は慌てて、家根から飛び降り、駆け寄った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ