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第21話

「ようこそ、いらっしゃいました。弥勒殿。」

「あ、どうも。俺ってそんなに有名でした?」

わらわ達を出迎えたのは、拘束服に身を包んだ少女だった。見た目は中学生ぐらいで、細やかながら胸の膨らみが見える。

アリスより彩度の濃い金髪に、真紅の瞳を持つ彼女はまるで西洋人形のよう。


ただ、彼女の服の至る所にあるポケットからは、ハンマーやノコギリ、ナイフ、クナイなどの物騒な拷問道具の数々を覗かせていた。

そして、極め付けには背中に背負っているチェーンソーだ。


「当たり前です。弥勒殿の活躍は度々、耳にします。一度、手合わせしてもらいたいぐらい。」

ブーンとチェーンソーのスイッチが入る。刹那、少女の刃は弥勒様の頭を刈り取った。


ように見えた。


弥勒様はわらわ達の背後におり、彼の肩に、志穂さんは手を当てていた。

瞬間移動。テレポート。それが、志穂さんの能力だ。


そして、弥勒様を守るように、両脇にはわらわとトスカナ。正面にはアイシャが立ち、そのアイシャを守るように、チャールズさんとガルムの二人が壁を作っていた。


明は面白い余興が始まったとばかりに猫のような笑みを浮かべ、西九条さんは表情を変えずに彼女の隣に立っている。

クリスは慌てるばかりだ。


さらに、先ほどまで少女がいた場所には穴ボコボコのクレーターが出来ており、それを引き起こしたルシファとアリスは第2射を放とうとしていた。


飛んで避けていた少女が着地すると同時、少女は殺気を感じていた。ローラだ。


ローラが地を蹴り、少女との距離を縮めようとしていた。だが、それに臆すること無く、少女はニヤリと笑みを浮かべた。ローラは無手で突っ込んでいた。少女がカウンターを狙っていることは容易に分かった。


「ローラ、ストップだ。」

その声にローラは急停止した。ピタリと止まったローラに、少女は警戒を一層強める。


そして、声の主である弥勒様はわらわ達に「大丈夫。」と安心させて前に出る。

ローラの隣にまで行くと、その頭に手を載せる。


「俺の為に怒ってくれたのは嬉しいが、落ち着け。わざわざローラが出る必要はない。」

弥勒様はニコリと笑い、ローラを落ち着かせる。確かにあのままだと危なかった。確実に死んでしまう。あの少女が。


わらわ達の目的は話し合いであって、殺し合いではない。


「済まなかったな。彼女達が攻撃してしまって。だが、君も少しお痛が過ぎるんじゃないか?」

弥勒様が、真っ直ぐに少女の目を見て言う。弥勒様は睨みつけることは無く、ただ少女を見つめる。


「俺は無益な争いはしたくないんでね、大人しく案内してもらえるかな?『緋色の旅団』のお嬢ちゃん。」

弥勒様は、少女に言う。


「それとも、」

一瞬で弥勒様は少女の背後に回り込むと、首に小刀を当てた。


「ここで寝ちゃうかい?」

クッと少女の顔が歪む。


「...分かりました。私も悪かったです。ごめんなさい。」

はぁ、と少女は息を吐き、謝罪の言葉を言った。


「うん、よろしい。じゃあ、旅団長の所に案内お願いするよ。それと楓...。」

弥勒様は満足そうに言葉を弾ませるが、振り返った弥勒様は困った表情を浮かべてわらわに告げた。


「足が動きそうにない。肩、貸してくれ。」









『力の代償』、それが弥勒様の能力です。

力を得る代わりに、代償を払う。等価交換。

さっきみたいに、足が速くなる代わりに、足がしばらく動かなくなる。


代償さえ払えば、どんな奇跡さえも起こせる能力。ただし、大きな力を望めばそれだけリスクが跳ね上がる。


故に弥勒様は一度、その能力で死にかけ、今でも体を蝕み続けられています。

だから、わらわ達は弥勒様にその能力を使って欲しくは無かった。これ以上、弥勒様が苦しまないようにわらわ達は側にいたはずなのに。







「...済まなかったな。弟子が迷惑をかけてしまって。」

開口一番、彼女はそう言った。


フードを被り、顔には皺がある。目の下には分厚いクマがあるその老婆は、背中が丸まった猫背の状態で、杖をついている。

老いぼれたその体とは裏腹に、目にはギラギラとした野望が宿っている。


「別に気にしてないさ。それよりもあんた、あえてそこのお嬢ちゃんを野放しにしただろ?とぼけるなよ。あんたの部下があの場で見張っていたのは気づいてるからさ。」

弥勒様がさっきの少女を見て、続いて老婆を見る。老婆は、嬉しそうに口元を緩めた。


「そうか、ばれていたか。それで、どうじゃった?弟子のルチアは、なかなかやるじゃろう?」


「あぁ、あと少し頑張れば『七柱』に入れるかもしれないな。」

弥勒様は、老婆とルチアからの視線を受け答える。


「そうじゃろ。この私の後釜にはルチアを置こうと思っておる。後、数十年で、私も抜かれるじゃろうからのぉ。まあ、弥勒殿はこんな話を聞きにきたのではなかったな。では、本題へ。」

カカッと、老婆は、『緋色の旅団』のリーダー、オリョウは、笑った。その瞳にはやっぱりギラギラとした野望が燃え盛っていた。


かつて、『原初の戦い』にアイシャ様と共に参加していた古参メンバーの一人、オリョウ様。

わらわはその後に『異能者』になったので、話でしか聞いたことはないが、その戦いは凄まじい物で、『守護者』と『異能者』両陣営は多大な被害を受けたらしい。


そんな中でも、その戦いで武功を挙げたのがオリョウ様。その姿に惹かれた者達が集まって出来た組織が『緋色の旅団』。


「では、交渉を始めさせていただきます。」

わらわ達の交渉相手だ。


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