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第19話

イギリス。

イングランド、ウェールズ、北アイルランド、スコットランドから構成される立憲君主制国家であり、英連邦王国の一国。


紀元前5世紀頃は、ケルト人たちがグレートブリテン島に住んでおり、彼らの代表的な魔術『ケルト魔術』が広まっていた。ヤドリギを用いたこの魔術は、攻撃、索敵、浄化とあらゆる面において使われていた。


ここでいう『魔術』と『異能』とでは意味が異なってくる。

『魔術』とは、人間でありながら使えるものであり、現在では扱えるものは本の一握りである。

『異能』とは、人間でなくなったものが使える力であり、その存在は表舞台には上がらない。


そんな二つの力は似ているようで、違い、それらは密接に関わりあっていた。


例えば、ウェールズでは、王は子供に対し、ウェールズの支配者たる「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号を与える。

これは名で土地を縛り、支配する一種の魔術である。


そしてだ。最も魔術と異能が関わっていた出来事がある。

『魔女狩り』。15世紀から始まったこれは、魔術、異能どちらにも多大な影響を与えた。

始まりは単純なことだった。魔術に対する恐怖だ。


一般人は魔術を恐れ、排除しようとした。何も知らなかった彼らにとって、とても受け入れられるものでは無かった。勿論、魔術師達も対抗したが、数の暴力の前では為すすべなく、引くことしかできなかった。


ここまでは、魔術だ。だが、これには異能も関わっている。

一般人の中には、ごく稀に異能者が見える者がいる。現代ではそう言った人達は速やかに政府が保護するが、当時は政府自体が無かった為、保護などはない。


その為、そんな人達は異能者を魔術師と間違った認識をした。その間違いは、やがて大勢に広がる。

つまり、異能者を認識する者が増えた。そこに存在していると思う者が増え、やがて、一般人に見えるようになってしまった。


要はそこにいると脳が思ったのだ。

例えば、物を探すとき、すぐに分かるような場所にあったのに気付かないことは無いだろうか?これは脳が認識してない為に起こる現象だ。


だが、妄想、幻覚などは、脳がそこにあると錯覚し、認識してしまう為に見えてしまう現象だ。これと同じことが、大人数が認識してしまった為、見えるのが普通になってしまった。


魔術師と同じように異能者を排除しようとされた。だが、それは世界の秩序を守る存在によって阻まれた。


『守護者』だ。

彼らの役割は、本来、この世界に起こり得ない物を排除し、バランスを保つことである。


そして、彼らが今回、排除しようとしたのは、人間たちの方だった。









「さあ、悠斗さん。特訓を始めましょう~。」

アイシャは淡い微笑を浮かべて言う。


「貴方も分かっていると思いますが、『堕天使』達は強い。それに時間もない。なので、やることは単純です。」

アイシャはパチンと指を鳴らすと、ドアが開いた。


「失礼します。」

風香が中に入って来た。体の周りに、無数の餅のようなものを従わせて。あれは、日本で見たことがある。確か力の源になる、他人の生命エネルギーだった気がする。


「取り敢えず、それを食べてください~。」

にこやかな笑顔でアイシャは、それを告げる。確かに風香が以前食べたが、抵抗がある。


「貴方は今、力がない状態です。現に幾つかの不具合があったはずです。例えば~、この間の折れた奴とか。貴方の血液は話によると、鋼以上の硬度を誇っている筈。」

アイシャは、食え~とばかりに、あれを口元に寄せて来る。


「それに悠斗さんは気付いて無いみたいだけど、貴方の力の許容量は途轍もなくあるの。そして、それらを使う大技も出せる筈。だけど、中身が無いの。力を入れる器もあって、力を出す蛇口もある。でも、中には力が入ってないのよ。だから、力を貯める為に食べなさい~。」

無理矢理、口をこじ開けられ押し込まれる。

喉をするりと通り、胃に入った。


瞬間、体中に力が漲ってきた。

「凄え...!!」

思わず呟いていた。


「でしょ。そう言うわけだから疲れたら風香さんに貰ってください~。それでは、特訓をやりましょうか。単純です。今から私が貴方を殴りますから、只管、避けてください。」

そう言って、ドンと床を殴るとボカンと大きな穴が開いた。


「拳の周りには圧縮した空気を纏わせてますから、当たれば痛いじゃ済まないですからね~。」

いやいやいや、無理じゃね。死んじゃう。

風香助け...、って何でそんなに目輝かせてるの?


期待してます?しなくていいから、助け...ぎゃー、来たぁ!!








「ここにいたのですか?」

イギリス本部、屋根の上。トスカナは探していた人物に声をかけた。


「久しぶりかな。」

赤髪にゴスロリ着物の少女は、闇夜に浮かぶ月を眺め、言った。


二人の間に暫し、沈黙が走る。

「あの、ね。」

口を開いたのは楓の方だった。


「『堕天使』が来るんだって。皆、揃うんだって。」

楓は相変わらず月を見たままだ。


「弥勒様も...。」

「来ないよ。」

ボソリと呟いたトスカナの声をかき消すように、楓は言った。


「来るわけない。だって、わらわが殺したから。あの時に。」

その声は微かに震えていた。


いかがでしたか?

感想、アドバイスをお待ちしています。

次回もお楽しみに。

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