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第13話

クリス。


私が彼女と出会ったのは、100年前のことでありました。

あの日は、ひどく暑い日だったと思います。その頃の私ははっきり言って、荒れに荒れていました。


私達みたいな『異能者』だって元は人間であります。

そして、私たちが『異能』を手に入れるのには、様々な条件がありますが全てに共通するのは『復讐心』です。

恨み、怒り、妬み、殺意、悲しみ、疎外感それらの負の感情が高ければ高いほど、優秀な力を持つと言われています。


そして、私はそんな負の感情をある女性に買われて、『異能』を手に入れた。しかし、私の復讐心は異能を手に入れてあっさりと達成されてしまった。何の手応えも感じぬままに。

手に入れて間もない頃、私はこのやり場のない復讐心をふつふつと煮え滾らせていた。

出会う『守護者』達を片っ端から、薙ぎ倒し私の名は瞬く間に本部にまで知られることになった。


そんな荒れに荒れていたころ、本部からある命令が下りました。

『はい、この子の警護よろしく♪』

そう言って、渡されたのが彼女、クリス様でした。


彼女の印象は、おどおどしていて小動物を思わせるほど弱弱しかったのが、荒れていた私にとっては苛立たせる原因以外の何物でもなかったのであります。


そんな彼女は全くと言っていいほど、戦闘能力を持ち合わせておらず、足手まとい以外の何物でもないと感じていたのです。


そんな中の警護中、私たちはヨーロッパからロシアへ渡るためにウラル山脈を越えていた時のことです。

集団で移動する『守護者』達と対峙することになったのです。幸いなことに『堕天使』の姿は見当たらず、いらいらしていた私はいつものように己の力を過信して、襲い来る敵を倒していたのであります。


その時、私の攻撃から逃れていた一人の『守護者』の大剣が私の頭上から振り下ろされるところが目に入ったのです。

完全に隙だらけであった私は、死を覚悟したのです。


そんな私と守護者の間に割り込む影がありました。クリス様です。

彼女は自分の身を投げ出して、私を救おうとしてくれたのです。


その行為に私の頭は急激に冷めていき、冷静さを取り戻すことができたのです。

そして、この方だけは守らなければと。


戦いの後に彼女は言ってくださいました。

『わ、私は、その、あの、戦いとか、あの...苦手ですけど、その、少しは頼ってください...。その、ミスティさんが...何かに苦しんでるのは...なんとなく、えぇと、分かりますから。』


しどろもどろになりながらも必死に話す彼女を見ていると、荒んでいた自分が馬鹿らしくなった。

やり場のない復讐心は、いつの間にかクリス様を守りたいという気持ちになったのであります。






医療用ベットで寝ていたミスティさんが起きたのは、3日後のことだった。

彼女が目を覚ました時には、ずっとそばで看病していたクリスは涙をこぼして、彼女の手を握っていた。

それから、彼女が動けるようになったのは2日後だが、まだ、激しい動きをするには体の負担が大きすぎるということで、しばらくは安静ということになった。


もう、イギリスへの移動の準備は完了しており、彼女が回復する4日後に出発することになったのだが、そこで思いもよらない事態が俺たちを待っていたのだった。


「だ、『堕天使』が攻めてきたぞ!!それも2人も!!」

監視の任務に就いていた、一人の男が、南西の空を見ていった。

そこには、ルードディスワーカー以外に『堕天使』が二人やってきていた。


男女のペアの『堕天使』だ。

しかし、『守護者』は率いてはいなかった。


ここ一週間、ずっと外で俺たちが出てくるのを待っていたルードディスワーカーは二人の存在に気が付くと、口元をニヤリと動かした。


二人がルードディスワーカーのそばに着地する。


背の低く幼い女の印象は不気味という言葉がぴったりと当てはまるほどに全身を黒で染め上げたゴシックロリータを身にまとっている。胸元と両方の手首にあしらわれた鮮やかな赤のリボン帯が彼女の魅力をより彩る。


黒のストッキングとスカートの間からわずかに色白の肌を覗かせており、濃い目の黒のブーツが膝下まで隠している。


肩にかかるぐらいの黒のショートヘアーだが、横側だけ長めに延ばされており、右側を薄いピンクのヘアピンで止めている。顔立ちは幼さの中にも、どこか妖艶さを潜ませており、その眼は猫を連想させる。


対して、男の方は黒のスーツで身を固め、片手をポケットに突っ込み、もう片手でタバコを持ち、吹かしている。キッチリと着こなしており、真面目な印象を与える。


少々、横に跳ねた銀のくせ毛の青年は、2本目のタバコに手をかけようとしていた。


そんな二人が並べばまるで、どこかのお嬢様と従者を思い浮かべるだろう。


二人は、ルードディスワーカーと二三言葉を交わすと、徐に支部があるこちらへ歩き出した。

そんな二人をルードディスワーカーは、相変わらずの余裕のあるへらへらとした笑みで見送っている。


先を歩く女が結界が張ってある境目に来た時、俺は信じられない物を見てしまった。


女はそこに結界など張られていないかの様に、普通に歩いて、結界の内側に入って来たのだ。しかし、目視出来るほどに、結界は張られたままで、破壊された様子も無い。同様に男の方も結界の内側に入って来た。


「まずいですわね...。」

「ルシファさん、『最高愛組(ベストカップル)』が...!!」

アリスは苦虫を噛んだ様な表情をし、風香は震えながら指を指している。


「ああ、分かってるよ。」

ルシファさんは一言、そう言うと、支部にいる全員に回線を繋ぐ。


「...全員、撤退するよ。アメリカ支部は現時点を持って放棄する。あの二人が来たってことは、ここはお終いだから。屋上に行って、そこに脱出ようのジェット機があるから。絶対に生きてここを脱出すること!出発は10分後。それ以上でも、以下でもない。では、健闘を祈る。」

回線を切った彼女は、自分の無力さを呪うように、壁に拳を叩きつけた。

いかがでしたか?

感想、アドバイスお待ちしてます。

次回もお楽しみに。

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