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第4話 殺すなら せめて 君が 気持ち良くなってから

挿絵(By みてみん)



私は雌猫に近づく。


雌猫は、怯えたように後ずさる。


「ハッ!

安心しろ。

私は貴様とまぐわらん。」


私は嘲った。


「雌猫なんぞとまぐわって、

子でもなそうもんなら面倒だ。」


私は、怯える雌猫の顎をつまみ上げて、

その瞳を覗き込んだ。


猫族(フェリス)の種なんぞ、残したくもない。」


その瞬間に、女は私の手に猛然と噛みついた。

女の牙が私の手に食い込み、血が流れ出す。


「ハッ!

こんな状況でも、憎悪と食欲は旺盛か…」


私は女を張り飛ばして、片手で首を押さえつけた…


が、どこかから声がする。


「…リヒトさんに…手を上げるな…」


女は一瞬の隙をついて、私の手から逃れる。


「逃げて…早く…」


女は髪を掻きむしりながら、激しく首を横に振り、

また私に襲い掛かって来る。


無論、私は易々と片手で押さえ込む。

が、力を込めようとすると、不思議と力が抜けていく。


「逃げて…!」


1000年に一度の神通力を持つ、現大王(シリウス)は、

異常なまでにこの女に執着している。


「猫族に惚れるなんぞ、異常趣味だ。

神鼠の恥さらしめ!!」


「うるさい!!!!!」


急に女が叫ぶ。


見ると、黒曜石のようだった瞳が、

正気を取り戻し、

私を真っ向から睨みつけている。


「誰だか知らないけど、

このクソ馬鹿ゴミ野郎!!!!!!!


シリウスは恥さらしなんかじゃない!!!!!

シリウスは…」


女の目から涙が溢れ出す。


「最高にかっこいいんだから!!!


世界一かっこいいんだから!!!!!」


そう言うなり、私に押さえつけられながら、

着ている服を肩から脱ぎ始めた。


さすがの私も、女の動きを凝視する。


「何が、猫族(フェリス)の種を残さない、よ。

馬鹿じゃないの!!!!!」


「さっきから聞いていれば、この私を愚弄して…」


私は、女の両手を押さえつけて、覆いかぶさった。


「貴様の命など、すぐに奪える。

貴様が、この男と…猫族の殲滅に役立つ道具だから、生かしているだけだ。

今すぐ殺してやってもいい。」


「頭の悪いゴミね。

だから、脱ごうとしてるんでしょ!!!!!」


「は?

気が狂ったか…」


「何でもいいわよ、黙ってて!!!」


女は私に言い放つ。


「えっと…シリウス…さっき、君、その…

そういうことを、

しようとしてたでしょ…?」


強気な言葉から一転、

顔を紅潮させて、目を伏せる。


「お互い、殺し合っちゃうなら、死ぬ前に…

いいよ…そういうこと…」


女の顔は耳まで赤く、目を伏せているのに、

瞳が熱で潤んでいるのが分かる。


女は、露わになった滑らかな肩から、さらに服を引き下げようとする。


「わ、私…すごく…貧相だから…

がっ…がっかりするかも…」


「ハッ…誰が猫族(フェリス)などと…」


「がっかりしても…『綺麗です』とか、

言ってくれると…助かるかも…」


女は、私の存在を忘れたように、

熱っぽい瞳で私の顔を見つめた。


「これ以上自分で脱ぐの恥ずかしいから…

シリウスが、

脱がせてくれたら…助かるかも…」


「ウァァァァァ!!!!!!!」


私は、訳の分からない激痛で倒れ込む。


女は、倒れ込んだ私に乗りかかる。


ポタポタと女の涙が顔にかかる。


「君が先に逝くのは、ナシ…」


…リヒトさん!!!

 …リヒトさん!!!!


「シリウス…さっきの続き、しないの?


私とは、もう、したくない?」


「ウァァァァァ――――ッ!!!!!!!」


僕は激しく首を横に振る。


「私が君を殺しても、

君が私を殺しても、

お互い殺し合っても、

もう、なんでもいいよ…


でも…」


リヒトさんは、涙に濡れた頬を僕の頬に擦り付けて、

耳元で囁いた。


「せめて、君が、気持ち良くなってから、

殺してね…?」


***********


僕は、大きく身震いをして、声を絞り出した。


「リ…ヒ…トさん…」


「シリウス…?」


リヒトさんは、ゆっくりと身を起こし、

信じることを恐れるように、

おずおずと僕を見る。


僕も、ゆっくりと上体を起こす。


「ええ…今は、間違いなく僕です。」


「『今は』…か…」


と言いながらも、今度は僕を真っすぐ見る。


「本当だ…髪も目も、戻ってる…」


と言った瞬間、顔を歪め、僕の首に飛びついた。

僕は、リヒトさんと一緒に仰向けに倒れる。



獣化したリヒトさん

変化した僕…


そういうことをしようとした僕と

死ぬ前にしてもいいと言うリヒトさん…


上半身裸の僕と、

肩まで脱いでいるリヒトさん…


僕たちは、もう何も言えず、

黙って二人で、寝台に茫然と横たわっていた。



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