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【最強能力】未来を削れる俺は、世界を救わないことにした ―星が減るたび、未来が消える―  作者: 天城ユウ


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第23話 戦争が消えた日

 七大国が同時に軍縮を発表したのは、討論から十日後だった。


 理由は単純明快。


 「遠均の思想に呼応する」


 皮肉だ。


 市場は一瞬、歓声に包まれた。


 戦争が減る。

 兵が帰る。

 平和が来る。


 だが。


 三日後。


 最初の暴動が起きた。


 軍需工房が閉鎖された。


 鍛冶師が職を失った。


 武具商が破産した。


 兵が解雇された。


 戦争は止まった。


 だが金も止まった。


 遠均に、失業者が流れ込む。


 百。


 千。


 万。


 エリシアが報告書を握る。


 「収容しきれません」


 ハルトが言う。


 「元兵が増えている」


 俺は空を見る。


 星は減っていない。


 だが。


 星の動きが鈍い。


 《剪定者》


 声。


 《循環が停滞している》


 「軍縮のせいか」


 《淘汰が止まった》


 俺は舌打ちする。


 カリオスの狙い。


 戦争は淘汰。


 淘汰が止まれば。


 世界は溜まる。


 圧力が。


 ガルドが現れたのはその頃だった。


 体格のいい男。


 軍服の名残。


 目が荒れている。


 「レイだな」


 低い声。


 敵意はない。


 怒りがある。


 「仕事をくれ」


 単刀直入。


 「兵はもういらん」


 「知ってる」


 ガルドは拳を握る。


 「戦争があったから俺は食えた」


 ざわめき。


 「戦争があったから家族を養えた」


 誰も否定できない。


 遠回りは、誰かの生活を壊す。


 ガルドが言う。


 「お前は削らない」


 「削らない」


 「じゃあどうやって回す」


 核心。


 俺は答えない。


 答えがまだない。


 遠均の倉庫が襲われたのはその夜。


 食料略奪。


 暴徒は元兵。


 ガルドは止めに入る。


 だが止まらない。


 怒りは簡単に増幅する。


 削れない。


 恐怖と同じ。


 星は減らない。


 だが動かない。


 収束する。


 未来が二択になる。


 暴動か。


 内戦か。


 ユリアンが走る。


 「星の配置が中央に寄っています!」


 収束。


 幹への圧力。


 戦争がない。


 淘汰がない。


 だが。


 圧力は消えない。


 溜まる。


 俺は空を睨む。


 削れば楽だ。


 暴徒の武器を消せば終わる。


 だが。


 削っても。


 失業は消えない。


 怒りは消えない。


 《剪定者》


 声。


 《ここは剪定では解決せぬ》


 「わかってる」


 分散も違う。


 これは構造。


 俺はガルドを見る。


 暴徒を押さえ込んでいる。


 だが目は揺れている。


 俺は言う。


 「兵を使う」


 エリシアが振り向く。


 「戦争ですか」


 「違う」


 「なら」


 俺は言う。


 「工事だ」


 遠均拡張。


 準遠均の建設。


 輸送路整備。


 倉庫拡張。


 農地開拓。


 兵を雇う。


 給金は低い。


 だが回る。


 ガルドが言う。


 「それで世界は回るか」


 「回さないと死ぬ」


 正直だ。


 ガルドは笑う。


 「戦争より面倒だな」


 「だから嫌なんだ」


 小さな笑いが広がる。


 暴徒の動きが止まる。


 武器が下がる。


 星がわずかに動く。


 収束が緩む。


 《……選択肢増加》


 世界意志が低く呟く。


 だが。


 問題は終わらない。


 七大国の軍縮は止まらない。


 経済はさらに冷える。


 そして。


 ユリアンが青ざめる。


 「幹の振動が強くなっています」


 削っていない。


 分散もしていない。


 なのに。


 幹が揺れる。


 遠く。


 丘の上。


 カリオスが立っている。


 満足でもない。


 勝利でもない。


 観測。


 戦争が消えた日。


 世界は静かになった。


 そして。


 静かすぎた。


 静寂は。


 均衡ではない。


 嵐の前だ。


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